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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第8話 (牧場主) -2

「あのオバさん、無茶な運転しやがる」

本郷正音の車を追従するケンジが言った。

車はコンビニ跡地からさらに山側に向かっており、

国道を猛スピードで駆けていく。

「そこまで遠くには行ってないはず…」

太郎が呟く。

国道から少し脇道にそれた所で突然、前方車のブレーキランプが灯った。

「先輩!ブレーキ!」

「お、おう!」

慌ててケンジも車を停車させた。

本郷正音が車から降りてきた。

「見つけたんですか…!?首無しライダーは?」

太郎が本郷正音に駆け寄る。

本郷正音は黙って前方を指さした。

本郷正音の車のサーチライトに照らされたのは、負傷したマリアだった。

「マリアさん!?」

太郎がマリアを抱き起こした。

「水晶玉、とられちゃった…」

「酷い傷だ、早く手当を!」

「太郎、お前、一体何やってんだ?」

死神の姿が見えないケンジには状況が理解できない。

「お黙り!」

「は、はぃ…」

本郷正音に一喝されてケンジが黙った。

「九堂、マリアさんが重傷だ」

「これはマズいな。応急処置だけでもしないと。」

その時,バイクのエンジン音が鳴った。

一同に緊張が走る。

「おばさん、ここはいいから首無しライダーを追ってくれ!」

太郎が叫んだ。

「わかったわ。この娘はそこの白髪少年が何とかしてくれるのね」

「最善は尽くす」

本郷正音はすぐに車を出した。

後に残されたのは太郎、ケンジ、九堂と負傷したマリアの4人だ。

辺りは真っ暗で所々で秋の虫の声が聞こえる。

「ここまでの傷をあのライダーが…」

九堂がマリアを手当しながら言った。

マリアは弱々しく首を振った。

「違う。これはライダーじゃなくて、ソイツが…」

マリアは九堂の後方を指さした。

九堂が振り向こうとしたその時,

九堂が見えない力で吹っ飛ばされた。

「九堂!」

太郎が叫ぶ。

慌てて辺りを見渡すと

ケンジの車のサーチライト付近に誰かが立っているようだ─

勿論、ケンジではない。

「大門さん!?」

太郎の通う高校のマドンナである大門亜良(だいもんあら)がそこにいた。

「こんばんわ,太郎くん」

普段,学校や予備校で見せる笑顔で彼女が言った。

「大門さん…,ぼ」

次の瞬間,太郎の喉元を大門亜良の右手が掴んでいた。

そのままの勢いで地面に押さえつけられてしまった。

「ゴホッ」

息が出来ない。

太郎に馬乗りになりながら,大門亜良が言った。

「最近,私の牧場を荒らす狼がいてね─」

太郎は涙目になりながらも必死でその手を振り解こうとするが

全く歯が立たない。

「悪い狼は1匹食べちゃったんだけど,まだ残りがいるみたいで」

太郎の意識が飛びかけていた。

『グサッ』

鈍い音とともに太郎の喉元を掴む手の力が緩んだ。

太郎が大きく咽せながら目を開くと,大門亜良の右腕を裁ち鋏が貫いていた

─九堂の(デスサイズ)だ。

「これ,返すね」

大門亜良は表情ひとつ変えずに鋏を引き抜くと,それを九堂の脇腹に突き刺した。

「あぁ”ーー!」

九堂が悲鳴を上げる。

間髪入れずに,脇腹に刺した鋏目掛けて大門亜良が強烈な蹴りを入れた。

「ッ!!」

言葉に出来ない悲鳴を上げながら九堂は再び吹っ飛ばされた。

「さて太郎くん」

逃れようとする太郎に,再び大門亜良が馬乗りになった。

「あなたが残りの狼なのかしら?」

大門亜良が太郎の喉元にかけた腕に徐々に力を入れていく。

”もう駄目だ…。ごめん,花子さ…”

太郎が死を覚悟したその時,頭上を黒い塊が駆けていった。

それと同時に鈍い衝撃音が辺りに響き渡った。

「大丈夫か…!?太郎?」

ケンジだった。

ケンジが太郎に馬乗りになっていた大門亜良を軽ワゴン車で撥ねたのだ。

「あぁ,人を撥ねちまった…俺」

「相手は『人』じゃないから大丈夫ですよ。それより,九堂とマリアさんは!?」

九堂は這いながらも軽ワゴン車の方まで来ていた。

「俺のことはいいからマリアさんを…!」

道路に横たわっているマリアを太郎が抱えた。

「先輩!車の扉を開けて!」

「おう!」

ケンジが軽ワゴン車のスライドドアを開ける。

ケンジの目には何か重いものを引きずっているような太郎の姿しか見えない。

まるでパントマイムを見ているかのようだ。

「大門さんは…?」

助手席に乗り込みながら太郎は前方を確認する。

車のサーチライトの先に仰向けで倒れている大門亜良の姿があった。

次の瞬間,仰向けのままゆっくりとその体が起き上がった。

「ヤベェぞ!?人間じゃねぇ!!」

ケンジはパニック状態だ。

「だから人間じゃないんだってば!逃げましょう!」

ケンジは軽ワゴン車を急発進させた。


(続く)


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