第8話 (牧場主) -1
「で,私にどうしろと?」
黒い高級セダンから全身アズライトブルーのコーデをした小太りの中年女性が降りた。
霊能力者の本郷正音である。
「首無しライダーを追って欲しいんです」
太郎が言った。
「奴か…。前回取り逃した奴ね。」
過去に首無しライダーと対峙したが既の所で逃げられていた。
「太郎くん,『助っ人』って霊能力者の本郷正音のことだったのか」
橘が興奮した様子で言った。
「例の幽霊マンションの件で色々ありまして…」
橘と本郷正音は幽霊マンション事件でニアミスはしているが
面と向かって会うのは今回が初めてである。
「それで,後ろの彼は…?」
橘が太郎の後ろのを軽ワゴン車から降りてきた青年を見ながら言った。
「自分は,こいつの高校ん時の部活の先輩でケンジって言います」
ケンジが自己紹介した。
「初めまして,新聞記者の橘です」
一通り自己紹介が済んだところで本郷正音が口を開いた。
「あんた,後ろのは何者?相変わらずとんでもない物を引き寄せるわね」
本郷正音が太郎の後ろでスマホをいじっている松本医師を指さした。
「私はとある病院で神経科医をしている善良な市民だが?」
「それは"入れ物”のことでしょう。私は"中身"のことを言っているのよ」
「ほう。人間の中には心眼がある物もいるようだ。」
「それと,白髪の少年。あんたは幽霊マンションにいた子ね。」
「九堂のことが見えるんですか!?」
太郎が驚いた。
これには九堂も驚いた様子だ。
死神は普通の人間にはその声も存在も見ることができない。
それがたとえ霊能力者であったとしても─
「ということは,正音さんも"死"に触れたということですか?」
「そんことはどうでもいいのよ。時間がないんでしょう?」
「そうだった。早く首無しライダーを霊視で追ってください。」
「そうしたいのは山々だけど,"そこ”の存在が強力すぎて霊視を妨げているのよ」
「じゃ,九堂と天道さんはあっち行っててください」
「今は"松本"だ。人間の癖にこの私を足蹴にするのかね。ライダーじゃなくて,水晶玉を追ってもらう方がわかりやすいんじゃないのかな?」
確かに,沢山の魂を封じ込めた水晶玉の方がわかりやすいかもしれない。
「正音さん,沢山の魂が一箇所に集まっているところを探してください」
本郷正音が目を閉じて,両手の掌を上げる動作をした。
「…いたわ。それにしても沢山の魂が高速で移動しているってどういうことなの?」
「大量の魂を封じ込めた水晶玉を首無しライダーが追っているんです」
「何よこれ!その水晶玉の周りにとても強い気配を感じる…!」
マリアのことを言っているのだろうか?
「一つは白髪の少年に似ているけど,もう一つは…」
次の瞬間,本郷正音が吐いた。
「…大丈夫ですか!?」
橘が本郷正音の背中をさする。
「諸君,時間がないようだぞ。牧場主がすぐそばまで来ている」
松本医師が言った。
「じゃ,早いところ行こうぜ」
ケンジが言った。
「配車は,そこの"レディ達"の車に新聞記者さん。そこのチンピラの車に死神と太郎くんだな。」
「おまえが指図するな」
松本医師に九堂が食ってかかった。
「私は先のことを予見してアドバイスしているのだよ」
「九堂,今は喧嘩している場合じゃない。花子さんを助けるんだろ!」
太郎の意見に九堂は渋々従った。
一同はそれぞれ松本医師の指示の通りに車に乗り込んだ。
「あんたは来ないのか?」
ケンジがスマホをいじっている松本医師に言った。
「私の役目は終わった。あとは君たちが自力で何とかする番だよ。」
「先輩,早く車を出してください!」
先頭は本郷正音の車,それに追従するかたちでケンジの車が走り出した。
(続く)




