第7話 (迷い猫)-終
「今のはなんだ!?」
太郎が駐車場の方に駆け寄る。
続けて背後から銃声が2発鳴った。
太郎は慌てて身をかがめる。
松本医師と首無しライダーが倒れている。
「何が起こっているんだ!?急にバタバタと倒れたぞ!」
橘にはあの銃声が聞こえていない?
ということは─
「九堂,あなたには失望しましたよ」
太郎の背後からハイヒールの靴音がした。
太郎が振り向くとそこには黒いスーツに身を包んだツインテールの女性がいた。
「マリア…さん?」
彼女は死神であり,同時に九堂の上司でもある。
マリアは足元に転がっている水晶玉を拾い上げると深い溜息をついた。
「まさかあなたが悪魔とお友達だったなんて…」
『違う』
九堂と松本医師が同時に言った。
「器を変えても,醜悪な匂いは相変わらずね」
「おや?お嬢さんにはこの上質な香水はお気に召さなかったようで」
松本医師は銃弾を口から吐き出しながら言った。
「そのことを言っているんじゃないわ」
そう言うとマリアは銃口を九堂に向けた。
「九堂宗志…,あなたは目の前の大勢の魂よりも一人の少女の魂を優先した」
「それは…」
太郎が割って入ろうとしたがマリアが手で制した。
「我々の使命は,1つでも多くの魂を天に還すこと─」
マリアが銃の引き金に指をかけた。
「掟を破ったからには自らの魂で償いなさい」
鋭い銃声とともに九堂が倒れた。
「九堂ッ!!」
太郎が九堂の元に駆け寄る
─と同時にバイクのエンジン音がした。
「"根"を絶やさないといけない子だったわね」
マリアに向けて首無しライダーがバイクごと猛スピードで突っ込んできた。
マリアはそれを軽くかわす。
「これが欲しいんでしょ?なら力づくで奪ってみなさい,男なら」
首無しライダーの前でこれでもかと水晶玉をちらつかせるとマリアは道路へと飛んでいった。
それを首無しライダーが追う。
後に残されたのは2人の人間と1人の死神,そして1人の悪魔だった。
「どうして助けなかったんだ!?」
太郎が松本医師に向けて叫んだ。
「かえって好都合じゃないか?これで牧場主に怪しまれなくて済む」
「おまえ…,水晶玉がマリアさんに奪われちゃったんだぞ!」
松本医師は服についた小石を手で払いながら言った。
「残念ながらマリア嬢はそう長くはもたないだろう。牧場主がじきに追いつく。」
「え…?」
「いいのか?こんなところでモタモタしていると,白雪姫を助けられなくなるぞ」
水晶玉の時限爆弾は,牧場主がそれを喰らってから起爆まで少しの猶予しかない。
もし,起爆すれば花子さんも牧場主もろとも消滅してしまう。
「行きましょう!橘さん!」
「俺には何がなんだか…。一体どうしたっていうんだ。」
死神の姿が視えない橘にとって,ここまでの状況が飲み込めない。
「いいから!時間がないんです!」
「落ち着け太郎くん。首無しライダーを追うんだったらどうすればいいんだ?」
ここで太郎は少し冷静になった。
「助っ人を呼んであります」
そう言うと太郎はスマホを取り出した。
(続く)




