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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第7話 (迷い猫)-5

病院からの帰り道、九堂は無言だった。

立場上、悪魔の提案を受け入れ難いのか。

「なぁ,九堂。俺だってあいつのことは信用できない。」

太郎が口を開いた。

「ただ,今はあいつの提案に乗るしか手立てが無いのも事実だ。」

九堂が振り返った。

「それは一番わかっている。ただ,このまま奴の手のひらで踊らされるのが気に食わない。」

「太郎君、ここにまだ死神がいるのかい?」

橘が言った。

通常の人間には死神の姿を見ることはおろか,その声を聞くこともできない。

「いますよ。橘さんの前にいます。」

「え!?マジか!」

橘が咄嗟に後退りした。

「私はあっちの世界のことは知らないが,あの医師の話だと我々には猶予がない」

「悪魔は平気で嘘をつく。信用してはいけない。」

九堂の声は橘に届かない。

「私は仕事柄,相手が話している内容が嘘か真実か聞き分けることができる」

橘は懐から手帳を取り出した。

「"次の満月までに花子さんを救い出さなければいけない" は真実」

太郎と九堂は橘の両サイドから手帳を覗き込む。

手帳には松本医師とのやり取りが記されていた。

橘が続ける。

「”君たちを助けたい"は嘘」

「やはり,奴は─」

「"死神の力が必要”は真実」

九堂が何か言いかけたが黙った。

「"人間の手助けが必要”も真実」

「"この作戦では犠牲者は出ない”は嘘」

「え!?誰かが死ぬかもしれないってこと?」

太郎が狼狽る。

「いいか,大事なのは会話から有益な情報のみを抜き出し,それを活用する。そして自分の身の安全を守る手立てを考える。」

「つまり─」

「あの悪魔の作戦に一度は乗ってみるんだ。そして,裏では自分達の作戦を企てておく。」

「なるほど」

「そうとなると急がないとな。作戦に必要なキャストを揃えないと。」

橘がニヤリと笑った。


松本医師が指定した場所は

町外れにあるコンビニ跡地だった。

建物と駐車場はそのままだが,人気はなく夜はなかなかの雰囲気だ。

「本当にここに来るんだろうな…」

太郎が建物の影から駐車場の方を伺う。

時刻は19時。

今日はあれから3日後の満月の日だ。

「まぁ,相手が指定したんだからそのうち来るだろ」

橘が電子タバコを咥えながら言った。

時々,目の前の道路を車が通過する度にドキリとした。

既に辺りは暗くなってきており,秋の虫の声が聞こえる。

すると,車のエンジン音が近づいてきた。

「あの悪魔か」

九堂が駐車場の方を伺う。

一台の高級外車が駐車場へと滑り込んできた。

車から松本医師が降りてきた。

こちらに気づいていないのか,スマホをいじっているようだ。

「呑気な奴だな」

九堂が呟いた。

それから15分程,何もない時間が過ぎた。

相変わらず松本医師はスマホの画面を見ている。

「俺たちはアイツにからかわれているんじゃないのか」

太郎がしびれを切らして言った。

「気持ちはわかるが,もう少し様子をみようじゃないか」

橘がそれをなだめた。

その時,辺りの虫の声がピタっと止んだ。

同時に,蒸し暑かった空気が一気に冷たくなった。

「来るぞ…」

九堂が道路の方を見ながら言った。

遠くからバイクのエンジン音が近付いてくる。

バイクの眩しすぎるハイビームが何もない駐車場を照らし出す。

「あれが噂の…」

橘が息を呑む。

ライダーは白い特攻服を身に纏っており,その首はなかった。

『君たちには取引を妨害して欲しい』

それが松本医師のいう"作戦"だった。

首無しライダーが現れたら,九堂がそれを妨害する”フリ"をする。

それが作戦開始の合図だ。

辺りに緊張が走る。

九堂がライダーに飛び掛かるタイミングを計る。

ライダーはバイクから降りて松本医師へと歩み寄る。

そしてゆっくりと手を差し出した。

松本医師はそれに応えるかのように懐から水晶玉を取り出した。

「今だ…!」

太郎が言った。

『バンッ!!』

九堂が飛び出す刹那,駐車場に一発の銃声が轟いた。


(続く)


















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