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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第6話 (血塗られた貴婦人)-2

「『血塗られた貴婦人』って知ってる?」

「何だよ,急に…。」

花子さんは目を輝かせている。

どうせ九堂が花子さんに入れ知恵したのだろう。

「一応,話だけは聞くよ」

「町外れにある屋敷の廃墟に夜な夜な出るって話だ」

「よくある噂ね。本当だとしても"スタンプ"はあまり稼げないだろ。」

「話は最後まで聞けよ!その屋敷で最近─」

花子さんが続ける。

件の屋敷内で若い男女の遺体が発見されたそうだ。

遺体は,肝試しにきた別の男女グループが発見,通報。

警察によると,犠牲者は肝試し目的で屋敷内へ侵入し,何かしらの事件に巻き込まれた可能性が高いとのこと。

「ただの事件じゃないのか?」

太郎の質問に花子さんがニタァと笑う。

「遺体には一滴も血が残っていなかった。」

「じゃ,今度の相手は吸血鬼か?」

「遺体には目立った外傷はなかった。ただ一部分を除いて─」

花子さんがわざと間をあける。

「何だよ,早く言えよ。」

「被害者の目玉だけが無くなっていた。」

「え…。目玉だけくり抜かれていたってこと?」

花子さんが満足気に大きく頷く。

「血は目ん玉がくり抜かれた後に,そこから抜かれたらしい」

花子さんは上機嫌だ。

凄惨な事件を子供のように無邪気に話す花子さんは心底不気味だ

─と言っても本人は子供のままなのだが…。

「おまえさぁ,今度の相手はホントにヤバいんじゃ…」

「ビビってんのかぁ?野球部のくせに。」

「部活の話はすんなよ!どうせ幽霊部員だよ。」

「なんだ,おまえも私の仲間か。」

太郎は思わず"おまえ,生きてんじゃん"とツっ込む衝動に駆られたが,

何とか堪えた。

「ま,しのごの言わずに現場を見に行くぞ」

太郎は,このとき花子さんを止めておけば良かったととても後悔している。


屋敷は噂通り町外れにあった。

偶然にも太郎と花子さんが出会った廃校の近くだ。

最寄り駅から20分程歩いた丘の上にその屋敷はあった。

「ほら,見えてきたぞ」

太郎の前をスキップで進みながら花子さんが言った。

時刻は既に日が傾きつつあった。

ひぐらしが寂しく鳴いており,より不気味さを増している。

「…。ここに入るの?」

太郎が怪訝な表情を見せる。

建物の外観は,立派な洋館といった佇まいだが,

外壁の至る所に植物のツタが伸びており,不気味そのものだ。

「ったりめぇだろ!何のためにここまで来たと思っているんだ。」

「目玉くり抜かれるんだろ?俺,嫌だよ。」

「あったま悪いな。何のために"カキコウシュウ"とやらに通ってるんだ!目玉くり抜かれる前に相手を倒せばいいだけだろ?」

花子さんが大袈裟にエクスカリバーを振り回しながら言った。

『別に幽霊と闘うために通っているわけじゃない』と太郎は心の中で悪態をついた。

「とても入れる雰囲気じゃないけど」

警察の捜査が入ったせいだろう。

屋敷の入り口には"Keep out"の黄色いテープが貼られている。

「こんなもん,気にすんな」

花子さんは,徒競走のゴールを切るかのようなポーズでテープを無理やり押し切った。

「おまえ,捕まるぞ」

「オバケを逮捕できる奴なんているのかよ。」

良いこは真似しない,絶対。

「はぁ〜…」

太郎は大きく溜息をついた。

仕方なく,花子さんの後に続く。

元々は玄関だったであろう場所まで歩いていく。

玄関に続く道のりは酷く荒れていて所々に雑草が生い茂り,

外から投げ込まれたであろうゴミが散乱している。

花子さんが建物の扉に手をかける。

「お邪魔しまーす!」

『ギィ』という音を立てて扉が開く。

鍵はかかっていないようだ。

扉が開くにつれてカビ臭さが鼻をついた。

もう,何年も空家なのだろう。

カビ臭さに加えて古い家の匂いがする。

「空気が澱んでいるな」

花子さんに続いて太郎は恐る恐る中へと進む。

昼間の日差しのせいか,建物の中は熱がこもっている。

「何にもないんだな。」

太郎は辺りを見回しながら言う。

建物内部もかなり広そうだ。

玄関を土足のまま上がる。

腐食が進んでいるのか所々床が軋む。

「何も無さそうだな…。」

建物内部は家具などは撤去されており,ゴミもほとんど落ちておらず,廃墟の割には綺麗だった。

「まだ手前の部屋しか見てないだろ,奥も見てこいよ!」

花子さんに言われて渋々太郎は奥へと進む。

「誰だッ!?」

突然背後から怒鳴られた。


(続く)













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