第4話-5
「来なよ,首無し」
太郎の身体に憑依した花子さんが首無しライダーを挑発する。
首無しライダーがボクシングのような構えをとった。
(…くるぞ!)
首無しライダーは"花子さん"目掛けて殴りかかってきた。
「おまえの動線は読めるんだよ」
"花子さん"は首無しライダーの右ストレートを難なくかわす。
同時にアッパーを叩き込む─
が,対象の首はない…。
その拳は虚しく空を切った。
(何やってんだよ!)
「つい…。」
人間の本能だろうか。
無意識に頭部を狙ってしまう。
「やりづれぇな!」
首無しライダーはその隙を見逃さなかった。
"花子さん"の腹に強烈な蹴りを入れた。
「グフッ!」
"花子さん"は10メートル後方に吹っ飛んだ。
まるでカンフー映画を観ているようだ。
「こいつ…,慣れてやがる」
首無しライダーは特攻服を着ているだけあって,生前はそれなりに喧嘩に明け暮れたのだろう。
(どうするんだ…,肉弾戦では勝ち目がないぞ)
「プランDだ!おいケンジ!!」
「は,はい!」
軽ワゴン車からケンジが金属バット(エクスカリバー)
を取り出し,"花子さん"に向かって投げる。
「サンキュー!」
それを見事にキャッチして首無しライダーへと向ける。
(これだと公平じゃないな)
「うるせぇ!そんなこと言ってる場合か!」
エクスカリバーを首無しライダーへと振り下ろす。
『バキンッ!』
乾いた金属音が響く。
"花子さん"の一振りを首無しライダーは腕で受け止めたのだ。
「なッ…!?」
すかさず首無しライダーは"花子さん"の横腹に蹴りを入れる。
「ガッ!!」
今度は真横に吹っ飛ばされる。
(まるでこちらの攻撃が効いていないじゃないか)
「マネキンと闘ってるみたいだ。手応えがまるでない…。」
(来たぞ!!)
首無しライダーは倒れた"花子さん"に馬乗りになって
殴打し始めた。
その容赦ない攻撃に対し"花子さん"は防御に徹するしかなかった。
「やられっぱなしじゃないか…」
その様子を見ていたケンジは思わず声が出た。
だが,その状況に加勢する勇気は彼になかった。
「まぁ,時間稼ぎにはなったな…,九堂。」
「そうですね」
首無しライダーの背後から九堂が答えた。
次の瞬間,首無しライダーは糸が切れた人形のように脱力し"花子さん"の方に倒れてきた。
(急にどうしたんだ…!?)
首無しライダーの背後に九堂の姿が見える。
その手には裁ち鋏が握られていた。
「文字通り"糸"を切ってやりましたよ」
「刃こぼれしてたんじゃないのか?」
「ピアノ線くらいなら切れます」
首無しライダーの下から"花子さん"がニタァと笑う。
「ど…,どうなってんだ!?」
死神である九堂の姿が見えないケンジには,突然の出来事に理解が追いつかなかった。
"花子さん"をタコ殴りにしていた首無しライダーが突如静止したかと思いきや,うつ伏せで倒れたからだ。
状況が把握できていないのは太郎も同じだった。
(どういうことだ…!?)
「太郎,九堂が持っている鋏は奴の鎌だ」
(デスサイズって…,あんな裁縫用の鋏が!?)
「全ての死神が大鎌を持っている訳じゃないさ。鋏もあれば拳銃だったり,その形状は様々だ。」
「太郎さんに説明しているのですね」
九堂には,花子さんに憑依されている太郎の声は聞こえない。
「奴はあの鋏で,首無しの首と霊体を繋ぐ糸を切ったんだ」
(首って…,アイツには元から無い筈じゃないか)
「奴の一部である"首"がまだこの辺りに転がっているとしたら?」
(え…?)
(続く)




