表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オトナになった花子さん  作者: じょーくら
24/48

第4話-4

「そろそろ例の道に着くわよ」

時刻は午前2時,

本郷正音が運転する高級セダンが

海沿いの直線道路,"マーメイドライン"に差し掛かった。

「辺りは真っ暗ね」

後部座席の琴音が呟く。

昼間は海を見渡せる人気のドライブコースだが,

丑三つ時に通行する車両はほとんどなく,

街灯もないため不気味だ。

「噂には聞いてたけど,ほんとに来るかしらね」

正音はやや懐疑的だ。

「今この辺りを走っている車は私達だけだから,きっと来るわよ」

ちょうど月が雲に隠れているため,車のライトだけを頼りに道を進む。

すると,後ろに一つの光源が現れた。

「来た…」

車内に緊張が走る。

「私は奴の姿を見ないように運転するから,琴音がなんとかしてちょうだい」

「大丈夫,少なくとも私も死んでるからね」

後ろに見えた光源はあっという間に車間距離を詰めてきた

─と同時にバイクのエンジン音が迫ってくる。

「舐めんじゃないわよ」

正音がアクセルを踏み込む。

エンジンが唸り,車が一気に加速する。

バイクのライトが少し遠のく。

後ろのバイクも負けじとエンジンを吹かして迫ってくる。

「こちとら●●●●よ」

車のメーカー名は皆様のご想像にお任せするとして,

2台は猛スピードで深夜のマーメイドラインを突き進む。

バイクが再度,車の背後に近づいた。

「琴音,今よ」

後部座席に呼びかける頃には

既に琴音の姿はなかった。

途端に背後のバイクが失速する。

「上手くいったようね」

そう,琴音は首無しライダーの後ろに瞬間移動したのだ。

それは琴音が幽霊(イレギュラー)だからこそできる芸当なのだ。

側から見ると,カップルの二人乗りに見えなくもない。

だが,首無しライダーは背後の琴音を振り落とそうと,蛇行運転を繰り返す。

振り落とされないよう,琴音も首無しライダーの身体に必死にしがみつく。

隙を見て琴音がハンドルを握る首無しライダーの腕に手をかけた。

「これで終わりよ」

ハンドルを握る腕を思いっきり引っ張ろうとしたときだった─

「ァガッ…!」

首無しライダーが琴音の峯に肘鉄を叩き込んだ。

幽霊は痛みを普通感じないが,強烈な肘鉄のため思わず声が出る。

そして,その衝撃のため琴音はバイクから振り落とされ,アスファルトの道路に叩きつけられた。

「くそ…」

バイクのテールランプがあっという間に見えなくなった。


「そろそろ戻ってきてもいい頃だけど…」

正音は娘の帰りが遅いため思わず独り言が出た。

すると再び背後にバイクのヘッドライトが迫ってきた。

「…!?」

正音はアクセルを全開まで吹かす。

慌ててハンズフリー機能で電話をかける。

程なくして通話が開始される。

「プラン変更!Bよ!」

「わかった!それまでに何とか奴を引き離してくれ!」

花子さんが応答してからすぐに通話が切れた。

車は猛スピードでバイクを引き離しにかかる。

丁度,道路が片道2車線から1車線に切り替わる地点だ。

それはマーメイドラインの終わりを意味しており,

道は右へカーブし,海から離れ内陸へと向かう。

「私の運転技術(スキル)を見せてやるわ」

車はほとんど減速することなく,急カーブをやり過ごす。

その先に久しぶりに交差点の信号機が見えた。

「今度は上手くいくといいけど…」

バイクは相変わらず後ろから猛追してきている。

信号機は,青信号から赤信号に切り替わろうとしていた。

正音の車は赤信号になる前に交差点を通過した。

背後の首無しライダーは,赤信号などお構いなしに

スピードを上げて交差点へと侵入する

─次の瞬間,バイクの進行方向右側から軽ワゴン車が突っ込んできた。

ガシャーンッ!!!

凄まじい音が周りに響き渡った。

軽ワゴン車は交差点の先で急ブレーキを踏んで止まっていた。

「だ…大丈夫なのか」

「衝突はしていない…。寸前で避けやがった。」

言わずもがな,軽ワゴン車はケンジのものだ。

花子さん一同はマーメイドラインの先で首無しライダーを待ち伏せしていたのだ。

車内から花子さん達が降りて辺りを確認する。

首無しライダーは,軽ワゴン車を避けたものの

ハンドル操作を誤り,交差点の先にある廃屋に突っ込んだようだ。

「し…死んだのか」

ケンジが廃屋の方を恐る恐る覗き込む。

「そこが問題だ。元から死んでいる…。」

花子さんがまだ終わっていないという口調で応えた。

案の定,バイクが突っ込んだ廃屋の中から瓦礫を掻き分ける音が響く。

「プランC!太郎ッ,出てこい!!」

すかさず花子さんが軽ワゴン車に向かって叫ぶ。

太朗が恐々とした様子で降りてきた。

「早くしろ!!合掌!一礼!!」

花子さんが太朗の背後から叫びながら駆け寄る。

言われた通り太朗は花子さんに背を向けてそれに倣う。

「ヤベェぞ!アイツ,NOダメージだ!」

ケンジが廃屋の方を指して叫ぶ。

白い特攻服を着た首のない男が,こちらにゆっくりと向かってきている。

ケンジが花子さんの方を振り向くと,

そこに花子さんの姿はなく,太朗が俯いて立っていた。

「物理的に叩くしかねぇようだな」

"花子さん"が拳の関節を鳴らしながら顔を上げ,

ニタァと笑った。


(続く)


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ