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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第4話-1

「もっとスピード出せよ!追いつかれるだろうが!」

「は…はぃッ!」

助手席の花子さんに急かされてケンジは涙目になりながら軽ワゴン車のアクセルを踏み込む。

ここは深夜の海岸沿いの国道,数キロに渡り見晴らしの良い一直線の道だ。

昼間だと海が見えることから人気のドライブスポットなのだが──

「追いつかれるって…,何に…!?」

ケンジはサイドミラーで後ろから迫り来るモノを確認しようとした。

「見るな!おまえが奴を見たら全てがお終いだ!前だけを見てろ!」

「はいッ!」

そのやり取りを後部座席で見ていた太郎は怖くて後ろを振り返れなかった。

(何でこんな事に…。元はと言えばアイツが…。)

太郎は心の中で花子さんに対し悪態をついたが時既に遅しだった。


遡ること今日の夕方

「太郎,見てみろ!次のターゲットが決まったぞ!」

本日分の夏期講習を終えた太郎が予備校の入口を出ると,興奮した花子さんが待ち構えていた。

「…ターゲットってオバケスタンプラリーの?」

「そうだ!これ見てみろ」

花子さんは太郎にある雑誌を差し出した。

近くのコンビニで買ってきたのだろう。

「『恐怖!深夜の首無しライダー』…て,よくある都市伝説じゃん」

太郎は記事の見出しをそのまま読み上げた。

「そうだ!今度の相手は私と肩を並べる大物だ。」

幽霊(イレギュラー)としての"格"はスタンプの評価に関係ないんじゃないのか?」

「おまえ,見出しだけじゃなくて記事を最後まで読めよ」

花子さんに促されて記事の中身も渋々目を通す。

『海が望める国道●号線,通称"マーメイドライン"には深夜になると首無しライダーがドライバーを狙う…』

記事が長かったので途中を省略して後半部分を読む。

『…この半年間で,首無しライダーに起因する交通事故が多発しており,死亡事故に至るケースも報告されている。』

「これって…」

「な?実際に被害に遭った人が沢山いるだろ。」

花子さんは目を輝かせている。

「つまり,コイツを昇天させれば評価点も高いということか」

「あの顔面蒼白野郎の言う"ダイヤの乱れ"に貢献ってわけだ」

「"顔面蒼白野郎"は私の事ですか?」

九堂が突然姿を現した。

「…急に出てくんなよ。コイツを倒したらスタンプ沢山貰えるだろ?」

「確かにこの個体には我々も手を焼いています。評価は高いですが…。」

「何だよ,煮え切らない態度だな」

「お二人はどうやってバイクに乗った相手と闘うんですか?」

「う」

太郎と花子さんは運転免許を持っていない。

花子さんが太郎に憑依すればバイクに追いつくことも可能だが,今回の相手は車やバイクなどの乗り物に乗った人物しか狙わないと記事に書いてある。

「太郎,お前の知り合いに車持ってる奴いねぇのかよ」

「急に言われても。そんな知り合い…,あ!」


「この前は悪かったな,太郎。急にドライブしたいって?」

軽ワゴン車から先輩が降りてきた。

太郎の知り合いの中で唯一,免許を取得して車を持っている。

「俺も黙って帰ってすみませんでした。ナツミ先輩とはあれから─」

「あぁ…,別れたよ。まぁ"アレ"が直接の原因ではないけどな。」

「…そうでしたか。」

「で,今日はおまえの姉さんの友達紹介してくれるんだろ?」

先輩(ケンジ)は太郎がドライブに誘っただけですんなりOKを出してくれる人物ではない。

傷心中の先輩に,"太郎の姉の友人"を紹介する(てい)で誘い出したのだ。

無論,太郎の姉の友達とは花子さんの事であるが。

「はじめまして!太郎くんのお姉さんと同じ高校に通っていた花子です。」

普段よりワントーン高い声で花子さんが自己紹介した。

「お…,俺はケンジって言います。太郎の部活の先輩でして…。」

ケンジの反応を見ると満更でもない様子だ。

ここまではシナリオ通りに進んでいる。

「夜に呼び出してごめんなさいね。太郎くんのお知り合いに素敵な方がいると聞いて。」 

「あっ…,太郎くんがそんな事を…。」

普段,ケンジは太郎の事を"くん"をつけて呼ぶことなど絶対にない。

太郎はケンジの態度に鳥肌が立った。

「先輩,ドライブしながら話しませんか?」

場の空気に耐えられなくなった太郎が切り出した。

「そ,そうだな。狭いですけどどうぞ。」

「素敵な車ですね。」

一同はケンジの車に乗り込んだ。

助手席に花子さん,後部座席には太郎と九堂だ。

これが悪夢のドライブの始まりだった──


(続く)



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