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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第3話-3

「太郎くん!この前はほんとごめん!」

太郎が予備校の正面玄関を抜けるとすぐにりょうちゃんに話しかけられた。

「なんだ,りょうちゃんか。りょうちゃんもここの夏期講習予約してたんだ。」

「そう,これから数IIBの講習。太郎くんは?」

「俺は英文読解だよ。全然予習できてない…。」

「ちゃんと予習しないとイケナイんだぞー」

りょうちゃんの横から長髪の美人が現れた。

「だ…大門(だいもん)さん」

太郎は息をのんだ。

大門亜良(だいもんあら)

太郎とりょうちゃんが通う高校一の秀才で,容姿端麗で男子生徒からの人気も高い。

「なに鼻の下伸ばしてんのよ。きっしょ。」

「ッるせーな。伸ばしてなんかいねぇよ。りょうちゃんと大門さんて仲良かったんだ。」

「そうなのよ。これから一緒の講習受けるの。」

太郎は内心,数IIBを受講しとけばと激しく後悔した。

「太郎くんー」

そのとき大門さんが髪をかき上げながら太郎の首元まで顔を近づけた。

「だ…大門さん!?」

りょうちゃんが思わず声を上げた。

太郎は咄嗟の出来事に声を出すこともできなかった。

「…きみ,彼女いるでしょ?女の人の匂いがする。美味しそうなー」

「は?」

「嘘うそ。冗談よ,じょーだん!男の子って可愛いわね。」

「…からかわないでください!」

「ちょっと太郎!彼女って…」

「いるわけねーだろ!大門さんも冗談って言ってんだろ!」

花子さんのコトを言ってるのだろうか。

彼女と言うよりは取り憑かれているのだが。

「それじゃ,また」

大門さんがねっとりとした口調で言った。

りょうちゃんと大門さんはそのまま上の階へと消えていった。


「この猫も幽霊(イレギュラー)なのか」

死神の九堂が,マタタビと同様の効果があるキウイの根で誘いだした猫はこの世のものではなかった。

そればかりではない,集まってきた他の猫も全て幽霊だ。

「この辺のやつ,全員死んでるのか…」

大勢の通行人が周囲にいる猫に気づかずに,その体をすり抜けていく。

「生きてる猫だろうが,死んでる猫だろうがこの子の靴を返してもらうぞ!」

花子さんが白猫に向かって走りはじめた。

すると,その猫が花子さんに向かって毛を逆立てて威嚇した。

「猪突猛進ですね。警戒してるじゃないですか。」

「じゃあ,おまえには他にいい案があるってのかよ!」

白猫を捕まえようとしたそのとき,

白猫はいとも簡単に花子さんの手をかいくぐった。

「ほら言わんこっちゃない」

「傍観してないで少しは手伝えよ!ポンコツ死神が!」

「あなたにポンコツ呼ばわりされる筋合いはないですね!私は特殊回収班というー」

九堂と花子さんが言い合いになっているときだった。

「ねぇ見て, 猫さん大きくなったよ」

「え?」

地縛霊の女の子が指差した方を九堂と花子さんが同時に見る。

確かに,先ほどは通常サイズだった白猫が大型犬くらいの大きさになっていた。

「猫ってこの短期間に急成長するのか…?」

「死んでるのですから,それ以降の成長はあり得ません。生きてたとしても,これは異常です。」

周囲の猫が大型犬サイズの白猫に集まってきた。

すると,それぞれの猫が白猫の体に吸い込まれるようにして消えていくー

それに伴って白猫の体がどんどん大きくなっていく。

「…ヤバいぞ。こいつはー」

「化猫ですね」

周囲の猫が一匹の白猫に収束する頃には,その大きさがライオン程になっていた。

「力づくで取り戻すしかねぇみたいだな」

花子さんは背負っていたバットケースから"エクスカリバー"を取り出した。

「かかってきな,猫ちゃん。格の違いを見せつけてやる。」


「…すげぇ」

「大道芸人かな」

太郎が受講する教室の様子が慌ただしい。

見ると教室の窓に人だかりができていた。

太郎もそれに続く。

教室はビルの6階, 大通りに面しており,見下ろせば目の前の交差点が一望できる。

交差点付近で,赤い服を着た女が金属バットを持って宙を舞っていた。

「特撮か何かの撮影かな?」

「すごい跳躍力だ」

赤い服の女は飛んだり跳ねたり,まるで"見えない何か"と闘っているようだった。

太郎にはそれが言わずもがな花子さんであることが瞬時に分かった。

(あいつ…,何やってんだよ!)

太郎の目には巨大な白猫の攻撃をかわしながら跳んでいる花子さんが見えたが,

周囲には花子さんの姿しか見えていない様子だった。

次の瞬間,白猫の強烈な猫パンチが花子さんに命中した。


「か…はっ!!」

アスファルトに叩き付けられた花子さんは思わず声が出た。

その隙を逃さずに,巨大な白猫が花子さんに覆い被さった。

鋭い牙で噛みつこうとする白猫の口を,

花子さんがエクスカリバーで必死に防いでいた。

エクスカリバーと白猫の牙が擦れて嫌な音がする。

獣臭い唾液が花子さんの顔に滴ってきた。

「…にゃろう!!何て馬鹿力だ!」

花子さんが横を見ると,九堂が地縛霊の女の子と安全な場所で傍観していた。

(アイツ…!この状況でも"第三者委員会"かよ!!)

花子さんは渾身の力で白猫の鳩尾(みぞおち)付近を蹴り飛ばした。

『フギャッ』

不意を突かれた白猫はそのまま後方へと吹っ飛ばされた。

すかさず花子さんが飛び上がり白猫目がけてエクスカリバーを振り上げた。

「チェェストォオオオッ!!!」

白猫の眉間にエクスカリバーを振り下ろそうとしたそのときー

「やめて!!!」

勢い余って花子さんは白猫の横にある電柱に激突した。

横たわる白猫を庇うように地縛霊の女の子が手を広げて立っていた。

「この子は悪くないの!!」


(続く)








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