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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第2話(幽霊マンション)-8

ー17時マンション前集合

橘と昨日の帰りに約束した。

本郷正音の公開除霊は今日の18時からだ。

既に2時間枠の生放送の特番が組まれており,朝からTVでCMが何度も流れている。

「どう思うよ?」

太郎が花子さんに言った。

「容疑者のことか?黒野の件でわかんなくなっちまったな」

太郎と花子さんは,一連の事件がマンションで目撃されている白い服の女の仕業ではないかと考えていた。

「黒野の遺体が発見された竹藪は,あのマンションから10 km以上離れている」

花子さん曰く,幽霊(イレギュラー)が自分のテリトリーから離れて人を殺めるには膨大なエネルギーが必要だそうだ。

「それじゃあの管理人…?」

「マンションの大家からしたら地上げ屋は邪魔かもしれんな, ただ奴は生身の人間で超人的な能力はない」

橘によると黒野の遺体は何度も高所から地面に叩きつけたように損傷が激しかったそうだ。

とても普通の人間にできる芸当ではない。

「いずれにせよ今日の公開除霊で何かわかるだろ。結界を張るくらいプライバシーに敏感な奴がそれに反応しない訳がないからな」


マンションの前には祭壇と護摩壇が設置され, その周囲に大勢のマスコミと野次馬が押し寄せていた。

「これじゃあ側に近寄れないな」

橘が呟いた。

予定通り橘と合流した一行はマンション前の人集りにゲンナリしていた。

「なぁ,公開除霊っておまえは平気なのかよ…?」

太郎が花子さんに小声で聞いた。

花子さんも一応,幽霊(イレギュラー)なのだ。

「私をそこらの三下と一緒にすんな」

「…ならいいんだけどよ」

その時一際会場が沸いた。

霊能力者の本郷正音が登場したのだ。

今日はいつものアズライトブルーの私服ではなく,それらしい白装束だ。

「先生,いよいよですね」

新人アナウンサーがマイクを持って駆け寄る。

「私がこれから,このマンションに巣食う悪霊を全て祓ってみせます」

本郷正音は静かにゆっくりと言った。

助手らしき人物が護摩壇に火をくべる。

会場が一気に盛り上がる。

「まるで"フェス"のようだな」

「おまえ,フェス知ってんのかよ」

太郎と花子が小声でやり取りしていると

「それでは静粛に,一同合掌,一礼してください」

本郷正音がマイク越しに言った。

会場が静まり,その場で全員が合掌,一礼した。

花子さんもそれに倣う。

本郷正音が護摩壇の前に座り,祝詞のようなものを唱えはじめた。

カメラがその様子をズームで撮影し始める。

マイクがあちこちに設置してあるらしく,会場に除霊のための呪文だけが響く。

不思議とそれまで鳴いていたセミの声がピタリと止んでいる。

「やべぇ,頭痛くなってきた…」

「おまえ,効いてんじゃねぇかよ」

どうやら花子さんに多少なりとも除霊が効いてるようだ。

除霊が始まって15分くらい経っただろうか。

急に会場でカタカタと音がし始めた。

「ご覧ください!祭壇の上の物がひとりでに動いています!」

祭壇の上,果物などの供物をのせた皿が音をたてて振動している。

マンションの近くを車などが通行している気配はなく,明らかにおかしい。

会場にどよめきが起こる。

「…きたか」

花子さんが呟いた。

心なしか呪文のトーンが大きくなった気がした。

そのとき,祭壇の上に置いた皿の振動がより大きくなり,皿が地面に落ちて割れた。

皿にのっていた果物が辺りに散らばる。

「皿が…皿がひとりでに落ちて割れました!」

アナウンサーが興奮してその様子をリポートしている。

その頃には皿だけでなく,祭壇自体が大きく振動していた。

会場から次々と悲鳴があがる。

「静粛に!今大事なところです!」

本郷正音が会場に喝をいれた。

次の瞬間,護摩壇の火が炎のように吹き出した。

「おい,これはマズいぞ」

橘が動揺している。

本郷正音が除霊を続けようとしたときー

その身体が護摩壇の前から見えない力で後方に吹っ飛ばされた。

後ろの観客席に本郷正音が鈍い音をたてて落下した。

「キャア"ァー」

会場から悲鳴が上がり一同パニックに陥った。

「落ち着いてください!落ち着いて!」

TVスタッフがその場をなだめようとするが,

(かえ)ってそれがパニックを煽る。

怪奇現象はそれだけでない。

カメラなどの機材も見えない力で次々となぎ倒されていく。

とても撮影ができる状況ではない。

会場にいたTVスタッフや野次馬が一目散に逃げ出そうとして,将棋倒しになっている。

「おい,あれを見ろ!!」

花子さんが逃げ出そうする太郎の襟を掴みながらマンションの方を指さした。

マンション北側の会場からは各階の廊下を見渡すことができるが,4階の廊下に白い服の女がいた。

こちら側をじーっと見ているようだ。

「"エクスカリバー"は持ってきてるな?」

「もちろんだけども…,俺が行くのか!?」

「ったりめぇだろ!本体を()ちのめさないと解決しない」

結界のため花子さんはマンションに入れない。

そのとき,逃げ惑う人達とは真逆の方向,つまりマンションの入り口へと向かう人影があった

ー本郷正音だ。

先ほどの落下で負傷しているのかよろよろと足を引きずっている。

「奴に先を越されるな!ポイントが貯まんないぞ!」

「おまえ…,この状況でオバケスタンプラリーかよ」

「いいからさっさとしろ!野球部だろ!!」

花子さんに急かされて仕方なく太郎はマンションの4階を目指す。

途中,本郷正音を簡単に追い抜いた。

非常階段を一気に駆け上がり,4階に到着する。

「…奴はどこに消えた」

先ほどの位置に白い服の女はいなかった。

だが,その先の住居スペースの扉がこれ見よがしに開いていた。

それは"406号室",TVのロケが行われた部屋だった。

「…ここにいるのか」

太郎は生唾を飲み込む。

既に日は陰っており,部屋の中は薄暗い。

恐る恐る土足のまま内部へと侵入する。

TVで見たとおり内部は普通に住居スペースだが人の気配はない。

リビングへと続く扉を開ける。

「…ひっ」

白い服の女がそこに立っていた。

南側のバルコニーの側でもの悲しそうな表情をしている。

太郎はエクスカリバーを一層握りしめる。

「うぉおおおおおー!」

コンマ数秒後,太郎がエクスカリバーを振りかざしながら白い服の女へと突進しようとしたときー

『ドン!!』

太郎の身体が横に吹っ飛ばされ,リビングのソファに突っ込んだ。

それは見えない力によるものではなく,何者かが太郎の腰にタックルしたからだった。

「痛ってぇ…」

うつ伏せで倒れたため,慌てて太郎は背後を振り向いた

ーそこには鼻息が荒い本郷正音の姿があった。

「てめぇ,そこまでして手柄をー」

「う…うちの娘に何すんのよ!!」

「は?」


(続く)














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