表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オトナになった花子さん  作者: じょーくら
10/48

第2話(幽霊マンション)-4

ー後ろから派手にクラクションを鳴らされた。

太郎と花子が背後を振り向くと,黒い高級セダンが停まっていた。

「邪魔よ」

どこかで聞いた声だ。

「…すみません」

2人は頭を下げて道を譲る。

車はせまい私道に関わらず, 急発進した。

「なんだアイツ, 車ボコボコじゃないか」

車体にはぶつけたり擦った傷が目立った。

車がマンションの正面玄関前に乗り付けると,

待機していた何人かが車を囲む。

黒い高級セダンから全身アズライトブルーのコーデをした小太りの中年女性が降りた。

「おい, あれ本郷正音(ほんごうまさね)だろ」

太郎が指さす。

「あのインチキ野郎か」

今朝の情報番組で幽霊マンションの霊視をしていた霊能力者だ。

マンション前の駐車スペースにはTV局の車が数台停まっており,

スタッフが撮影の準備をしていた。

TV関係者以外にも,雑誌記者も何人か待機しているようだ。

「これからロケかな…」

「…マズいな, 中に入りづらいぞ。」

しばらく様子を伺っていると,マンションから中年男性が出てきた。大家だろうか。

「名刺交換してるみたいだ」

花子さんが言った。

太郎達の予想に反して, マスコミ一行はすぐに建物内部へと入っていった。

「よし, 今だ」

幸い正面玄関前には既に人影がなく, オートロック式でもなさそうなので内部へ入れそうだ。

正面玄関手前に管理人室があるが, 管理人も今は不在のようだ。

「いよいよ敵陣に乗り込むぞ」

花子さんが勢いよく正面玄関に飛び込もうとした

ーがその身体が後方へはじかれた。

「大丈夫か!?」

突然のことに太郎が駆け寄る。

「結界だ…」

花子さんが起き上がりながら言った。

「…結界って, 何もないぞ」

太郎は普通に正面玄関にあがれた。

だが, 花子さんが正面玄関の入口に差し掛かると進めない。

まるで見えない壁があるかのようにー。

「…冗談だろ」

花子さんが手をかざして結界を確かめている様子は,

パントマイムそのものだった。

「ここにいる奴は相当用心深いようだ。"同業者"は入れないようになってる。」

「オバケのみに有効ってことか」

「…こいつは頑丈だ」

「じゃ,俺の身体に入って結界を通過したら?」

「"2人乗り"でも駄目だろうな…, どちらか片方の魂が弾かれる可能性がある」

「どちらか片方って…」

「私は構わんぞ。上手くいけばおまえの身体が私のモノになる。」

花子さんがニタァと笑う。

「わかった…, わかったってば!俺が一人で行けばいいんだろ!」

「わかればよろしい」

最悪の事態だ。頼みの綱の花子さんはマンションの内部へ入れない。

「どうした,さっさと偵察してこい」

「…俺からあまり離れられないって言ってたけど大丈夫なのかよ」

「そうだな…, 半径1 kmくらいなら大丈夫だ」

「意外と余裕じゃねぇか!」

「心配すんな,もし非常事態になったらー」

花子さんが太郎に何か耳打ちした。

「いいな, しっかり調査してくるんだぞ。私は周囲を調べておくから。」

「ホントに大丈夫なんだろうな。」

太郎は意を決して正面玄関の入り口をくぐった。

どんなに綺麗な建物でもここは幽霊マンションなのだ。

入ってすぐに住人のポストが並んでおり, その奥にはエレベーターが設置されていた。

エレベーターは4階の位置にランプが点灯していた。

先ほどのマスコミ一行はそこにいるのだろう。

仕方なく太郎はエレベーター横の外階段で上を目指すことにした。

階段の踊り場から見上げると,上階の廊下が見える。

案の定,4階付近に人だかりがあった。

マスコミ一行には見つからないように, ひとまず10階を目指す。

「意外とキツいな…」

野球部の太郎だが, 真夏の昼下がりに10階までの階段はしんどかった。

途中の踊り場にはセミが転がっていた。

セミ爆弾を避けつつ上を目指す。

「ようやく着いたぞ」

10階まで到着すると, 長い廊下に風が吹き抜けていた。

汗ばんだ体に心地よい。

「調べろって言われてもなぁ…」

さすがに部屋に入る訳にもいかず, 廊下の端までとりあえず歩いていく。

下を見ると, 真っ赤な服の女性が駐車場をブラブラしていた

ー花子さんだ。

「…自分はサボってんじゃねぇかよ」

はたから見ると,マンションの幽霊と誤解されてもおかしくはない。

そのまま目線を先ほどの外階段の方へと移す。

「人…かな?」

6階と7階の間,外階段の踊り場に白い人影が見える。

向こうの様子を伺うが, その場に佇んでいるようであった。

人影と目があった気がした。

「…!」

その瞬間,全身に鳥肌が立った。

廃校で初めてオバケを見たときの感覚と非常に似ていた。

「アイツ…,ここの」

距離が離れているにもかかわらず,太郎にはその人影が女性だとわかった。

ここで度々目撃されている白い服の女だろうか。

太郎はなるべく人影から目を離さないようにしながら,そぉっと廊下から外階段を目指す。

外階段の入口からは, 苦労して上ってきた階段を全速力で駆け下りる。

8階, 7階, …もうすぐだ。

太郎は目的の踊り場に辿り着いたが, 既に人影は消えていた。

人影から目を離してから1分も経っていない。

「どこいったんだ」

息を切らしながら周囲を見渡すが人の気配は全くない。

念のため, 6階と7階の廊下も探したがどこにも人影は見当たらなかった。

「…もどるか」

収穫としては十分だろう。

この短時間でオバケの存在は確認できたのだから。

太郎はマンション前の駐車場まで戻ってきた。

「おーい!もどったぞ!どこだー?」

マスコミが取材に来ているためあまり大声が出せない。

「あの野郎…」

花子さんからの応答はなく,太郎は外階段の方に視線を向けた。

外階段の下も駐車スペースになっており,そこでは記者と思われる男性が1人電子たばこを吸っていた。

「やべ…, 人がいたか」

今までの行動を見られていたかもしれない。

幸い, 男性はこちらに気づいている様子はなく, 電子たばこ片手にスマホをいじっていた。

ふと男性の頭上, 先ほど太郎がいた階段の踊り場に目をやる。

「あ」

階段の踊り場から白い手が2本, 空中に突き出ていた。

両手で植木鉢を挟み込むようにして持っている。

その真下には男性…。

「あぶない!」

太郎が叫んだ瞬間,白い手は植木鉢を離した。


(続く)





































(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ