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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第1話 (トイレの花子さん)-1

「先輩, もうやめましょうよ」

軽ワゴン車の助手席に座った青年は, ため息まじりに呟いた。

「ビビってんのか, 太郎ー」

小馬鹿にしつつ, 先輩と呼ばれた男が運転席でタバコをふかしながら応えた。

深夜の山中, 男女4人を乗せた軽ワゴン車がせまい国道をとばしている。

彼らの目的は, 心霊スポットをハシゴして, 肝試しをすることだ。

「ここまで何もなかったんだから,最後にとっておきのところ行きたいよねー」

後部座席の金髪の女性が先輩に話しかける。

「ナツミ, 次はここらで有名な廃校にしよ。そこの3番目のトイレに出るっていう‥」

「花子さんね! マジでいんの?あたしの行ってた小学校でも流行ってたし」

ナツミと呼ばれた金髪の女性がすかさず応える。

「私の行ってた小学校にも, 出るって噂があったよ」

ナツミの隣に座っている黒髪ロングの女性が応える。

「りょうちゃんの学校にも出たんだ, どこでも出んじゃん」

「いやいや, 次行くところはガチだから。この前も動画投稿されてたし!」

先輩が最近見た動画について熱く語っているうちに件の廃校に到着した。

確かに, 噂通りの雰囲気のある廃校である。

住宅地から少し離れた山の丘に位置しており,

築年数を重ねた2階建ての木造校舎が, 暗闇で不気味にそびえ建っている。

近所には現役のコンクリート校舎も建っているが, 深夜のせいか, 人影はどこにもない。

軽ワゴン車は, かつての校庭と思われる草むらに乗り入れた。

「じゃんけんで負けた奴が, 1人で校舎に入ろうぜ」

先輩が吠える。

「嫌ですよ, 全員で行きましょうよ」

「太郎, おまえそれでも野球部か!負けた奴がスマホで動画撮りながら噂を検証すんだよ」

「いくよ!じゃーんけーん‥」

ナツミが声を張り上げる。

「ポン!」

「やっぱそういう運命だよな, 太郎」

他3人がグー, 太郎1人がチョキであった。

「嫌ですよー, 床が抜けるかもしんないですし‥」

「漢に二言はないよな, 太郎! りょうちゃんも見てるんだしよ (笑)」

「太郎くん, 何かあったらみんなですぐ駆けつけるから」

りょうちゃんとナツミに見守られながら, 太郎は先輩から懐中電灯を持たされる。

「いいか太郎, 出んのは2階の北側女子トイレだ。奥から3番目のトイレを3回ノックしてから…」

「『はーなこさーん, 遊びーましょー』って言うんでしょ。それくらい知ってますよ」

太郎がふてぶてしく応える。

「動画撮りながら行くんだぞー!何か撮れたら動画サイトに投稿すっからなー!」

校舎に入ろうとしている太郎の背後から先輩が吠える。


スマホの動画撮影機能をオンにしてから, 校舎の入口を目指す。

今まで何人もの若者が肝試しに訪れたのだろう。

鉄製の校舎の扉はガラスが割られ, カギがこじ開けられており半開きになっている。

ドアに手をかけると, 懐かしいような, カビのような, 何ともいえない臭が湿った空気とともに

漂ってくる。

一瞬入るのをためらったが, 女の子2人と恐い先輩に見られているため, 仕方なく校舎に潜入した。

「階段はこっちだな」

誰もいない空間で独り言のトーンだけが大きくなっていく。

下駄箱を抜けると,すぐに階段に辿り着いた。

あまり周囲を見ないようにしながらひたすら2階の北側女子トイレを目指す。

月明かりがあるせいか, 校舎の中は案外見通しがきいた。

すぐに2階に到着し, 北側女子トイレをさがす。

「あれ…かな…」

校舎北側の一番奥, 女子トイレを発見したが, そこまでの道中が異様であった。

ビールの空き缶, 雑誌,それに掃除用ロボットのル●バまで, 様々なものが散乱している。

「みんな, ここが目的だったんだな」

ゴミの散乱具合からして, 訪れた者が2階の北側女子トイレを目指していたのは言うまでもない。

トイレ前の手洗い場を過ぎると, 校庭側に向けて個室トイレが5つ並んでいる。

一番奥の壁側には校庭を望む窓があり, 先輩の軽ワゴン車が見えた。

「真ん中の個室か‥」

薄暗いトイレは不気味ではあるが, 真ん中の個室にこれといった特徴があるわけでもない。

「花子さんとか, ただの噂だし」

最後のトーンは消え入りそうなくらい小さかったが, 思い切り個室の扉をノックした。


(続く)


























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