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86ー魔法杖とイヤーカフ

「ハル、来なさい」


 長老がハルを呼ぶ。ハルが、トコトコと近寄って行くとハルの目線に合わせて長老が膝をついた。


「ハル、これがハル専用の魔法杖だ。これからずっと使って行く物だ」

「じーちゃん、ありがちょ。大事にしゅる」

「ああ。肌身離さず持っている物だ。使い方を教えよう」


 長老が持っているハルの魔法杖。しかし、ハルの身長より長い。


「じーちゃん、おりぇ持てねー」

「今はな。この長さが元の大きさだ。大人になった時に丁度いい長さに作ってある。ハルが魔力を流すと長さを自由に変えられるんだ」


 長老は持っている魔法杖にハルの小さな手を添えさせる。魔法杖を両手で持つハル。


「先ずは、この半分の大きさをイメージして魔力を流してみなさい」

「ん……半分……」


 ハルが魔力を流したのだろう。魔法杖が光ってシュルシュルと短くなった。


「おー!」

「どうだ? 持てるか?」


 長老がハルに魔法杖を手渡す。


「ん、れもじーちゃん重い」

「じゃあもう半分だ」

「ん……」


 また魔法杖がシュルシュルと短くなった。


「ん、もうちょっとら……」


 また少し杖が短くなった。ちびっ子のハルが片手で楽に持てる長さだ。まるで、オモチャに見える。月に代わってお仕置きしたくなる。


「ん、こりぇくらいら」

「よし、この長さを覚えておくんだ」

「わかった」

「ハル、ワシも今魔法杖を持っている。リヒト達もだ。どこにあるか分かるか?」

「え……?」


 どう見てもそんな物を持っている様には見えない。もちろん両手には何も持っていない。


「ハル、ここだ」


 長老は、自分の服の襟につけたハットピンを指差す。


「じーちゃん! しょんな小さいのか!?」

「だから、長さを自由に変えられると言っただろう? リヒト」

「はい、長老。ハル、俺はどこに持っているか分かるか?」


 ハルはジッとリヒトの全身を観察する。

 リヒトは魔物を討伐したりする為か、洋服にはアクセサリー類は着けていない。だが……


「りひと、まさかぴあしゅ?」

「そうだ。俺はピアスにしている」

「しゅげー!」

「ハルはマジックバッグを貰っただろう?」

「うん、じーちゃん」


 ハルがいつも腰につけている小さなポーチを見せた。


「マジックバッグに入れている者もいる。ハルが使い易いようにすれば良い」

「しょっか……」

「魔法杖を使うと、杖なしの時よりも威力の高い魔法が使える。発動も楽になる。最上級魔法を使う時や広範囲に使う時に良い。魔法を楽に使う為の媒体の様な物だ。だから普段は殆ど必要ない。だがな、ハル。エルフ族は皆自分の師匠や身内等から魔法杖を貰うんだ。エルフは精霊魔法を使うだろう」

「ん、じーちゃん」

「この杖は精霊の力を借りやすくする為の物でもあるんだ。どんな木にも精霊が宿る。その木で作った魔法杖を持つという事は、精霊との繋がりをエルフは大事にする。その証でもあるんだ」


 ハルは自分の魔法杖を両手で嬉しそうに大事に持つ。魔法杖がシュルシュルとずっと小さくなりハルの手のひらにのる位の大きさになった。


「じーちゃん、おりぇはみーりぇかりゃ貰った魔道具に一緒につけりゅ」

「ほう、そうか」

「うん。おりぇが初めて貰った物ら。大事らから」


 ハルは魔道具をつけている自分の髪の髪飾りに魔法杖を刺した。


「よし。その魔法杖はハル専用だ。万が一、ハルから一定距離を離れたらハルの元へ戻る様にしてある」


 と、長老から一通り魔法杖について教わった。


「次から箒ではなく、杖を大きくして乗るといいぞ。世界樹の枝から作った杖に強化魔法を付与してある。これで、魔物を殴っても折れんぞ。まあ、追々覚えていくといい」

「じーちゃん、ありがちょ。大事にしゅりゅ」

「ああ」


 長老が愛おしそうにハルの頭を撫でた。


「さて、カエデ」


 急に自分が呼ばれてキョトンとしているカエデを長老は側に呼んだ。


「カエデにはこれだ」


 イヤーカフ型の魔道具だ。

 イヤーカフから、華奢なフープチェーンに通された向日葵色とエメラルドグリーン色した2つの小さな丸い魔石が揺れている。カエデの猫耳に良く似合う。


「カエデも国へ入る時にパスが必要だろう。リヒト達が持っているパス代わりの魔道具と、ハルと同じように離れてもどこにいるのか分かる魔道具をつけてある。それと、カエデにもマジックバッグだ。無いと不便だろうからな」

「え……自分、こんなん貰ってもいいん?」


 カエデがリヒトを見る。


「カエデ、当たり前だ。長老に礼を言って喜んで貰えばいいんだ」

「リヒト様……自分はだってエルフちゃうし……自分、そんな……何かを貰った事なんかないから……」

「カエデ、うにゃーんて泣いてもいいんだぞ」

「イオス兄さん! 泣けへんわ……あかーん! うにゃ〜〜ん! 自分には勿体ないにゃ〜ん! 申し訳ないにゃ〜ん! 嬉しいにゃ〜ん! うにゃ〜〜ん!」

「アハハハ! カエデ、泣いてるじゃねーか。良かったな!」

「足向けて寝られへんわー! 長老、ホンマにありがとうございます!」


 カエデが長老に頭を下げた。


「カエデ、お前も苦労した。これからはそんな事はもうない。皆、カエデの仲間だ」

「長老……! うにゃ〜〜ん!」

「ヨシヨシ、かえれ」


 ハルが隣からカエデの頭を撫でている。どっちが上なのか分からない。


「ハルちゃん!」


 カエデがハルに抱きついた。


「かえれ、ヨシヨシ。いい子ら」

「なんでやねーん! 自分の方が大っきいっちゅーねん! うにゃ〜〜ん!」


 カエデは今迄何かを貰った事などなかったと泣いた。自分には勿体ない。自分なんかが貰っても良いのかと。その意識だ。カエデが小さな頃から刷り込まれた自己卑下の心理。

 それに最近言い出した『にゃ〜ん』だ。これも……にゃーにゃーうるさい、と人攫いの頭に叱られてから言わない様に気をつけていたらしい。そんな事、カエデの自由だ。目くじらを立てる程の事ではない。

 『にゃ〜ん』と自然に言える様になった事と同じ様に、刷り込まれた自己卑下の意識もハルやリヒト達と一緒にいる事で薄くなっていく事だろう。


「じーちゃん、じーちゃん」

「ハル、どうした?」

「じーちゃん、おりぇも作りたい」

「作りたい? 魔道具をか?」

「うん! じーちゃんなんれもれきりゅ! しゅげー! おりぇもれきりゅようになりたいじょ!」

「そうかそうか! ハルにはまだまだ時間が沢山ある! じーちゃんが教えてやろう!」


 また、曽祖父と曽孫が楽しそうだ。嬉しそうだ。


うにゃ〜ん! とカエデちゃん嬉し泣きです。

読んで頂きありがとうございます。

宜しければ評価とブクマをお願いします。

励みに1日2話投稿、頑張るにゃ〜ん!

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