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84ー伯爵の調査報告

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 ハルのロマンはさておき。


「で、謁見はどうだったのですか?」

「ああ、ルシカ。領主の伯爵がかなり調べておったぞ」


 長老達の話だと、今日の謁見にはこの街の領主である伯爵も同席していたそうだ。子爵と関係者を護送してきていた。そして、先にクラゲの件を書面で報告していたらしい。その後の捜査報告をしていた。

 この街を任されていた子爵。てっきりこいつの単独計画だと思っていたのだが、子爵が直接クラゲを調達した訳ではなかった。子爵にクラゲを渡し、井戸に入れたらクラゲの毒でスラムの人達を一掃できると入知恵してきた男がいた。

 その入知恵してきた男……子爵の義兄であり、子爵夫人の兄だった。子爵は我が身が1番なのだろう。自分の考えではない、自分は義兄に騙されたのだと、ペラペラと喋ったそうだ。義兄は伯爵よりも上の侯爵と繋がっていた。それは前大公時代に大臣として入閣していた男だった。義兄は子爵位で、その侯爵に取り入って領地の小さな町を任せてもらっていた繋がりがあった。


 前大公は、税金を増税し国にあるすべてのスラムを解体すると公言していたが、その解体の仕方が拙かった。

 強制的に追い出しスラムの建物を解体していった。その為、スラムを追われた人達が街に溢れ路上に住み出し治安や衛生環境も悪化した。平民からはもちろん、貴族からも苦情が出だしそれに伴い他の政策も上手くいかなくなり4年を待たずに政権は交代する事となった。

 現大公が即位して直ぐに税金を元に戻した。スラムの解体も時間と資金が必要だと一時凍結させた。その矢先の出来事だった。

 子爵の義兄と繋がっていた、元大臣だった侯爵は前大公の政権が失墜すると同様に表舞台から姿を消していた。その侯爵が、秘密裏に動いていたんだ。高ランク冒険者を雇い、クラゲを捕獲させた。そのクラゲの生息地が北のドラゴシオン王国付近だった。


「ドラゴシオン……ここで出てくるのですか……」


 リヒトが話を続ける。


「ルシカ、そうなんだ。ドラゴシオン王国の直ぐ近く、北の高山地帯付近にある洞窟の中にある地底湖がクラゲの生息地だそうだ。付近はクラゲが出す毒の影響で草も生えず、岩場になってしまっているそうだ。よく見ないと洞窟の入り口も見過ごしてしまう程らしい。よく、そんな所に生息するクラゲを知っていたもんだよ」

「では、リヒト様。ドラゴンの幼体は、その高ランク冒険者がそこでクラゲを採取している時に混ざってしまったという事ですか?」

「そうなる。高ランク冒険者も調べられていたが、ドラゴンどころか苔玉にも覚えがないそうだ」

「しかし……その冒険者もよく採取しましたね。下手をすれば自分達が毒に侵されるのに」

「ニーク、そうなんだ。案の定、冒険者の1人が毒に侵されていたよ」

「ありゃりゃ」

「ハルちゃん、分かってんか?」

「ん……かえりぇ、当ちゃり前ら」

「ハルちゃん、眠いやろ?」

「ん……」

「ミーレ姉さん、もうハルちゃん、カミカミになってるで」

「ハル、いらっしゃい」

「みーりぇ、れも聞きちゃい」

「ハル、また明日教えてあげますよ」

「りゅしか、しょう?」

「はい、必ず」

「ハル」

「ん……みーりぇ」


 ハルがトコトコとミーレの側に行くと、抱き上げられた。いつもの様にミーレにもたれ掛かり背中をトントンされると、ハルは直ぐにムニャムニャと寝る体勢になった。


「しかし、リヒト様。その侯爵はどうしてそんな事を?」

「獣人に大公の座を奪われたから自分も失脚したんだと逆恨みだ。政策の失敗が原因で大公の座を追われたのに、獣人ごときに……だそうだ」

「ヒューマン族は妬みや嫉妬の感情が強いですからね」

「まったくだ。獣人に対する差別意識が根強く残っているんだ。見た目が違うだけなのに。しかも、ヒューマン族は飛び抜けて能力が高い訳ではない。寧ろ、獣人の方が身体能力は高い」

「時間の感覚もあるかも知れないわ。私たちにとってはたかが1年、大公の交代だって4年毎よ。たった4年で国をどうこうできる訳がないわ。寿命が短いからたった4年でも長く感じるのかも知れないわね」

「アヴィー先生、それはそうかも知れません。例えば、アヴィー先生達の様にエルフ族の方だと26歳でも30歳でも変わりはないのでしょうが。私たちヒューマン族にとっては26歳と30歳では違います。56歳と60歳だともっと違います。たった4年とは思えないのでしょう」

「ニーク、なるほどな……だが、だからといって妬んだり嫉妬したり差別する理由にはならないぞ」

「はい、長老。それは人にもよるでしょう」

「なんだかスッキリしねーな」

「リヒト様、そうですね。何かまだ残っている様な気がしますね」

「まだ、調査は続けるそうだ。そんな北の高山地帯にある洞窟に生息する毒クラゲなんてどうやって知ったのかも疑問が残る」

「長老、そうですね」

「だが、ワシ達は此処までだ。ハルが保護したドラゴンの幼体は面倒を見てやらんといかんが、人攫いや奴隷の問題はヒューマン族の意識の問題だ。自分達の方が優れているという優越意識や傲慢な気持ちがある。だから、獣人や抵抗できない子供、それに女達を攫う。毒クラゲもこのまま調査を続けるならそれで良かろう」

「そうですね。長老、俺達はさっさと帰りますか?」

「そうだな。アヴィー、戻っては来んか?」

「もう少し……スラムの人達の先がもう少し見えるまではいたいのよ」

「アヴィー1人がいるからどうなると言うものでもないぞ? まあ、ここまで来たら数年は大した違いはないがな」

「長老、良いんですか?」

「リヒト、良いも何もワシのそばにはハルがいるからな! アハハハ」

「まあ、ズルいわ」

「何を言っておる。残ると決めたのはアヴィーだろうが」

「そうだけど。ハルちゃんとは離れたくないもの」

「ならさっさと片付けて戻ってくれば良い」

「そうね……そうするわ」


 なんと、長老は寛容だ。


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