83ーりょまんら!
ルシカの魔法講座も終了。お昼を食べ、ハルとカエデはしっかりお昼寝もし、おやつも食べた。
そして、またハルとカエデの2人で裏庭にいる。2人ともしゃがみ込んで箒を見ている。今度はルシカとイオスが側で見守っている。
「ハルちゃん。またすんの?」
「ん、今度は強化しゅりゅんら」
「箒にか?」
「ん、折りぇないように……」
ハルが箒に向かって手を翳す。
「イオス、ハルは今強化魔法を使いましたね」
「そうッスね」
「いつの間に覚えたのか……」
「スね……」
2人は呆れているのか? 感心ではないな。
「ルシカ、長老と奥様がウホウホと教えていたらしいぞ」
「あー、あの2人が……」
ハルが徐に箒に跨った。やる気満々だ。
「ヨシッ! いくじょー!」
と、ハルが箒に乗ってフワリと空中に浮いた。前回よりもスムーズだ。
ルシカとイオスが慌ててハルの近くに移動する。万が一、また落ちた時の為だ。
「お、ハルちゃん! 凄いやん!」
「やったー! もうコツを掴んらじょ!」
「凄い! 凄いやん!」
「アハハハ! かえれー! 超気持ちいいー!」
ハルがフワリフワリと空中を飛んでいる。
「あー! ハル! 手を離すな!」
「いおしゅ! らいじょぶ!」
ヒラヒラとイオスに向かって手を振っている。
「ハル! あまり高く上がらないで下さい!」
「えぇー! りゅしか! らいじょぶ!」
「ハルちゃん、ハルちゃん! 自分も乗せてー!」
「いいじょー!」
フワリとハルが下りてきた。危なっかしい感じが全くないぞ。マスターしちゃったか?
「危ないですよ。また折れますよ」
「りゅしか、強化したかりゃらいじょぶら!」
「ハルちゃん、いいでー!」
「おし! いくじょー!」
「おー!」
後ろにカエデを乗せてフワリと浮き上がった。カエデはハルのプニプニのお腹に捕まっている。いや、腰か? え? 腰はどこだ? フワリフワリと空中を飛んでいる。
「ハルちゃん! スゲーやん!」
「アハハハ! らろー!」
「高いにゃ〜ん! 凄いにゃ〜ん! 超気持ちいいにゃ〜ん!」
「アハハハ! かえれ、気持ちいいにゃーん!」
ああもう、この2人は……
「アハハハ! ハル! スゲーな!」
「イオス! またイオスまで!」
「だってルシカ! スゲーよ! あれ、フライか? 何なんだ!?」
「もう私には分かりませんよ」
ルシカが項垂れている。
「ハル! 何してんだ!?」
「あー! りひと! アハハハ!」
ハルさん、テンションMAXだ。
「あら、またやってるのね」
「おー! 本当に飛んでるじゃねーか!」
帰ってきた長老とアヴィー先生が、フワリフワリと飛んでいるハルを呑気に眺めている。
「長老、アヴィー先生! 呑気な事を言ってないで止めて下さい!」
「ルシカ、これは凄い事だぞ! ハル! じーちゃんも乗せてくれ!」
「いいじょー!」
フワリとハルとカエデが下りてきた。
「カエデ、すまねーな。交代だ」
「うん! 長老、ハルちゃんスゲーよ!」
「アハハハ、そうだな!」
「じーちゃん! いくじょー!」
「おう、いいぞ!」
ハルが長老を後ろに乗せてフワリと浮き上がる。
「おおー! ハル! 凄いじゃねーか!」
「うん! じーちゃん!」
フワリフワリと飛ぶ曽孫と曽祖父……
ルシカは疲れたのかもうしゃがんでいる。
「アハハハ! じーちゃんいいらろー!」
「ああ!」
――メキッ……
「んん?」
「ん……?」
――メキメキッ……
「ハル、折れそうだな?」
「じーちゃん、しょうみたいらな」
フワリとゆっくり下りてきた。が……
――バキッ!!
「あー!!」
「おー!!」
ナイスキャッチ! 長老がハルを受け止めてシュタッと着地した。10点満点だ。
「ありぇ? 強化したのになぁ」
「ハル、いくら強化しても箒は箒だ」
「じーちゃん、しょうか?」
「長老、ハル……」
ルシカがゆっくりと立ち上がった。
「ハル……ルシカが怒っているぞ」
「じーちゃん……しょうみたいらな」
「2人共、中に入りなさい!」
あぁー、ルシカが怒ってしまった。
「だから! 危ないと私は何度も言いましたよ!」
「あい。りゅしか、ごめんなしゃい」
「あー、ルシカ。すまん」
長老とハルが並んで叱られている。ハルはまたソファーの上に正座だ。お手々はちゃんと揃えてお膝の上だ。
「長老まで何ですか!」
「ルシカ、すまんて」
「強化したんらじょ」
「ハル、そういう問題ではありませんね。強化したって箒は箒です」
「あい」
「ほら、ハル。ワシも同じ事言ったろ?」
「長老、分かっているなら何故止めないのですか!」
「いや、凄いと思ってだな。つい……」
「ついではありません!」
「ハル、じーちゃんが折れないのを作ってやろうか?」
「うん! じーちゃん!」
ああ、この曽祖父と曽孫は反省していないな。
「長老!」
「お、おう……すまん」
「はいはい、もうそれ位にしておけば? ルシカ、もう夕食にしない? お腹も空いたし、疲れちゃったわ」
「アヴィー先生、分かりましたよ。カエデ、手伝ってください」
「はい! ルシカ兄さん!」
おや、カエデがキビキビしているぞ。カエデも乗っていたからな。いつ自分も怒られるかドキドキしていたのかも知れない。
皆でルシカ作の夕食だ。叱られた後だから、大人しく……な訳がなく。
「りゅしか、んまい!」
元気いっぱいだ。
「ハル、ありがとう。ハルには敵いませんね」
「ハル、箒じゃないと駄目なのか?」
「じーちゃん、りょまんら」
「ロマンなのか!?」
「うん! 箒に乗って飛ぶのはりょまんなんら!」
「そうか、ロマンか! アハハハ! ハルは杖を持っていなかったな?」
「じーちゃん、つゅえ?」
「ああ、長さが自由に変えられる魔法の杖だ。それに乗って飛ぶと今より飛べるぞ」
「じーちゃん! ほしい!」
「よし、じーちゃんが作ってやろう」
懲りない曽祖父と曽孫だ。
それから長老は本当に杖を作った。次の日丸1日掛けて、ハル専用の特別製の魔法杖だ。