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74ーハルの耳

 その後、アヴィー先生とリヒトは伯爵に詳細を説明する為に同行した。

 一方、ハル達はアヴィー先生の自宅に戻ってきていた。


「りゅしか、腹減った」

「そうでした。お昼がまだでしたね」

「今日はハルちゃん大活躍やったからなぁ。腹ペコ仮面になっても仕方ないなぁ」

「カエデ、手伝って下さい」

「はいな、ルシカ兄さん!」


 ハルは食事を待つ間、ミーレのお膝の上にいた。


「ハル、危ない事しないでね」

「みーりぇ、らいじょぶら。こはりゅもいりゅ。みーりぇ、あの苔玉はどうなった?」

「ポーションをあげてるけど、まだ動かないわ。生きてるわよね?」


 ミーレがベッド代わりの籠を出した。中にはフカフカの布の上に丸い苔玉。蝙蝠の様な2対の羽とトカゲの様な尻尾がある。まだ、ピクリとも動かない。


「ん……」


 ハルの瞳が光った。


「生きてりゅけろ……まらまらみたいら」

「そう。大丈夫かしら?」

「ん……解毒と浄化はれきてりゅ。体力を回復させりゅのがなかなかなんらけろ……」

「ハルちゃん、できたでー!」


 カエデの大きな声だ。


「みーりぇ、飯ら!」

「そうね、食べましょう」


 ルシカとカエデが作った昼食を食べ、ハルはコテンとお昼寝だ。


「ハルちゃん、ほんまに可愛いなぁ」


 ソファーで丸くなってお昼寝しているハルにハーフケットを掛けてあげながらカエデがしみじみと言う。


「カエデ、今日は一緒に寝ないの?」

「ミーレ姉さん、自分はハルちゃん程ちびっ子やないからな」

「何言ってんの。充分ちびっ子よ。寝なくても少し横になりなさい。今日はカエデも沢山作ったから大変だったでしょう?」

「自分がした事なんか大した事あれへん。ハルちゃんはこんなちびっ子やのに、偉いわ。天は二物を与えずって言うけど、ハルちゃんは別やなぁ」

「フフフ、また何か言ってる。カエデも偉かったわよ。お疲れさま」

「ミーレ姉さん、ありがとう」

 

 ミーレに頭をヨシヨシされて、カエデは少し照れ臭そうだ。カエデも、褒められたり可愛がられたりする事に慣れていない。

 アヴィー先生とリヒトが戻ってきたのは、ハルがお昼寝から起きてオヤツを食べている時だった。既にコハルのほっぺはパンパンに膨らんでいる。


「ハルちゃ〜ん! ただいま〜!」

「ばーちゃん、おかえり。りひとも」

「おう。お、オヤツか? ルシカ俺も」

「ルシカのオヤツなの? じゃあ私も」

「はいはい。少しお待ち下さいね」


 ルシカはやはりオカンの立ち位置か。


「ばーちゃん、りひと。おりぇ気になってりゅ事がありゅんら」

「ハル、湖のだろ?」

「ん、りひと。しょうなんら」

「子爵の子飼いの男が白状したわよ。湖にいたクラゲね、あれだけ大きくなりすぎたらしいわ。それで、手に負えなくなってオリージャ湖へ捨てたそうよ」

「ばーちゃん、まじ……」

「ええ。1番近い湖がオリージャ湖だったのよ。水槽とは違って広いし豊かな湖だからどんどん大きくなっちゃったのね」


 信じられない……て、顔のハル。ただし、可愛いぷくぷくのほっぺにはオヤツのパンケーキにのせてあった生クリームがついている。


「はい、アヴィー先生、リヒト様。お待たせしました。お好みでハチミツをかけて召し上がって下さい」


 ルシカ作のふわっふわなパンケーキだ。これはきっとメレンゲだけ先に泡立てて混ぜているな。そんな少し厚みのあるパンケーキ。ハルのほっぺについている生クリームものっている。


「うまそー」

「アヴィー先生、湖のある村は領主が違った筈ですが?」

「ルシカ、そうなのよ。だから、この街の領主の伯爵が頭を抱えていたわ。でも、村人を治療したり、クラゲを退治して解毒と浄化をしたのが私の知り合いだからそこら辺でうまく話をつけるのじゃないかしら? 村を任されている男爵は、知っていたのに何もしなかったのだから」

「なるほど。自分の街の関係者が治療だけでなく、退治や解毒に浄化もしたと」

「ルシカ、そういう事ね……美味しい! ルシカ、相変わらず上手ね」

「ん、りゅしかのおやちゅはなんれも美味い」

「フフフ、ハルちゃんそうね」

「ハル、夕飯まで街を見てみるか?」

「うん! りひと行きたい!」

「構わないけど。ハルちゃん、ちゃんとフードを被りなさいよ。耳が見えていたわ」


 ん……? 耳?

 え……!? と、皆がハルを見る。


「ハル、お前耳どーした!?」

「りひと、何いってんら?」

「おや……」

「あら、本当だわ」

「いつの間に……」

「ハルちゃん。耳伸びてるで」

「え……? かえれ、しょう?」


 ハルが自分の耳を触ってみる。


「ありゃりゃ……」

「アハハハ! それだけかよ!」

「リヒト様、いつからか覚えてますか?」

「いや、ルシカ。分からん。俺もアヴィー先生に言われて今気付いた」

「アヴィー先生に会いに来た時はまだ伸びてなかったわよ。私がハルにフードを被せたから覚えているわ」

「ばーちゃん、なんれ?」

「え? なぁに? 意味が分からないんだけど?」


 アヴィー先生はまだパンケーキを食べている。


「アヴィー先生、覚えてないのかよ。ハルの耳はヒューマンみたいに短かっただろ?」

「あら、リヒト。そうだったかしら? でも今だってハイエルフにしては短い方じゃない?」

「あれか? ハイヒューマンの血が入っているからか?」

「多分、そうでしょうね」

「じゃあ、なんで急に伸びたんだ?」

「魔力の通り路が塞がっていたところを広げたから、魔力がしっかり馴染んだのじゃないかしら? ハイエルフとしての魔力がね。ハルは精霊魔法を使っていたもの」


 全く意味の分かっていないハル。キョトンとしている。誰かハルのほっぺを拭いてやってほしい。カピカピになるぞ。


「そんな事があるのですか?」


 と、ルシカが濡らした布でハルのほっぺを拭いた。さすがだ。


「知らないわよ。ハイエルフとハイヒューマンのクォーターなんて今迄いないもの」

「えッ!? ハルちゃんスゲーやん! ハイヒューマンなんて絶滅してるやん」

「カエデ、だからヒューマンの国では余計に気をつけなければいけません」

「ルシカ兄さん、なんでなん?」

「あら? カエデはハイヒューマンが何故絶滅したか知らないの?」

「知らんで。ミーレ姉さん知ってんの?」

「知ってるわよ。ヒューマン族が殲滅したのよ」

「えッ!? ヒューマンの方が弱いんやろ?」

「そうだけど、圧倒的な数で負けたのよ」

「へぇー、知らんかったわ。自分は獣人やからなぁ。いや、学がないからなぁ。無学無知や」


 皆が話しているのを他所に、ハルはトコトコと鏡の前に行った。自分の耳を確認する為に。


「お……おぉ……まじ……まじか……」


 鏡を覗き込みながら、耳を触ってみている。ヒューマンにしては長いが、エルフにしては短い。ただ、伸びている事は確かだ。


「ハルちゃん、伸びてるやろ?」

「うん、かえれ。びっくりした」

「ハルちゃんは何でも可愛らしいで」


ハルちゃんの耳が伸びちゃってました。

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