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65ークラゲ退治

 リヒト達はそのまま真っ直ぐに湖へと近付いていく。


「ミーレとカエデも離れていろよ。近付くんじゃないぞ」

「りひと、何かいりゅ」

「ああ、いるな」


 リヒトとハルが湖面を覗きこもうとした時だった。湖から、蝙蝠の様な羽が2対生えた丸い苔玉が飛び出してきた。そして、それを追ってか湖から触手が何本も伸びてきた。


「とぉ! はいー!」


 ハルがリヒトの腕の中から飛び出し、いきなり触手を両足で思い切り踏んづけた。ハルの身体が僅かに光っちゃっている。


「うおッ! ハル! ビックリするじゃねーか! 急にジャンプするなよ!」

「こはりゅ!」

「はいなのです!」

 

 コハルがポンッと亜空間から出てきて2人して触手をグチャグチャと踏みまくる。


「ハル、引っ張りあげるぞ!」

「おう!」


 リヒトとルシカ、イオスが3人で伸びてきたウネウネと動いている触手をガシッと掴んで引っ張りだした。

 その間にも、ハルとコハルはバタバタと別の触手を踏んづけている。

 丸い苔玉の様なものは、ハルの頭の上に避難だ。ん? よく見ればトカゲの様な尻尾もある。


「せぇーーのッ!!」


 リヒト達が息を合わせて引っ張ると、ズルズルと巨大なクラゲの様なものが現れた。ハルのゴールドの瞳がさらにゴールドに光る。


「りひと、先っちょのピンクに毒がありゅ!」

「おう! 本体を斬るぞ!」

「まららめ! 全部陸に出してかりゃ! 毒を持ってりゅ! 触手が湖に残ったりゃまたでっかくなりゅ!」


 そう言いながら、ハルとコハルはバタバタと次から次へと触手を踏みつける。


「こいつ、ヌメヌメして掴み難いんだよ! ルシカ、イオス、もう1度引き揚げるぞ!」

「はい!」

「了解!」

「せぇぇーーのッ!」


 リヒト達がまた一気に引っ張ると巨大なクラゲ本体と長い触手も陸に出てきた。クラゲと言っても小さなクジラ程の大きさがある。とんでもなく大きい。

 透明なゼラチン質の傘の部分に、細くて黒い筋が無数にあり中が黄色く透けて見えている。伸ばしている触手の先は毒々しい鮮やかなピンク色をしている。短い触手が何本も生えていて、その内数本が長く伸びている。ウネウネと動いていて気持ちが悪い。


「りひと! 斬って! やっちゅけて!」

「おう! 任せろ!」

「りゅしか、いおしゅ、りひとが斬ったりゃフレアーれ燃やして!」

「はい!」

「了解!」


 『フレアー』とは、火属性魔法の中級攻撃魔法の事だ。対象を超高熱の炎で包んで焼き尽くしてしまう。

 リヒトが高くジャンプして巨大なクラゲの本体を斬り裂いた。

 同時にルシカとイオスがフレアーの炎で包むと、巨大なクラゲが燃え出した。炎に包まれたクラゲは悶えながらも水分が抜けてどんどん干からびてプスプスと燃えていく。


「うわ、リヒト様一刀両断やん。ハルちゃん、結構攻撃的なんやなぁ……びっくりしたわ」

「ありぇ、毒がありゅから完璧に退治しないちょ」

「ハル、あのクラゲが原因なの?」

「みーりぇ、そうら。あのくりゃげの毒が湖に流りぇ出てんら」

「で、ハルちゃんの頭の上にいるのは何なん?」

「こりぇ……こはりゅ、こりぇって……」

「ドラゴンの幼体なのれす! 弱っているなのれす!」

「「ド、ドラゴン!?」」


 ミーレとカエデが驚いて声をあげた。

 が、ハルはそれよりも湖が気になるらしい。


「りゅしか、湖を浄化れきねーか?」

「さっきの解毒と浄化の薬湯を撒いてみますか?」

「ん〜……」


 ルシカが薬湯の小瓶を幾つか出し、イオスと手分して湖に撒いていく。


「あれじゃ足らないなのれす」

「こはりゅ、らな」


 ハルがトコトコとリヒトの側に歩いて行く。


「りひと、おりぇ光っちゃうかりゃ」

「ああ、解毒と浄化か?」

「うん」

「俺も一緒にするわ。俺の前に立ったら俺で周りからは見えないだろ。念の為、フードは被っとけ」

「ん」


 ハルがリヒトに言われた通りリヒトの直ぐ前に立つ。確かに、ちびっ子だからリヒトの陰に入って見えない。


「ハル、いいか?」

「ん」

「アンチドーテ」

「あんちどーて」

「ピュリフィケーション」

「ぴゅりふぃけーしょん」


 リヒトとハルがそう唱えると、湖だけでなく辺り一体に白い光のヴェールが降りてきてそのまま地面へと吸い込まれていった。


「スゲー! ハルちゃんスゲー!」


 いや、リヒトもなのだが。解毒と浄化魔法は聖属性魔法になる。だから、ハイリョースエルフのリヒトしか使えない。ダークエルフのルシカやイオス、ハイエルフではないミーレには使えない魔法だ。ミーレは訓練すれば初級のヒール位は使えるようになるらしいが、ミーレは訓練が嫌いだ。


「みっちょんこんぴゅりーちょ!」

「アハハハ! コンプリートだな!」


 リヒトがハルを抱き上げた。


「ハルちゃん、ホンマに光っちゃってたわ!」

「アハハハ! 光っちゃってたな」


 ハルはムスッとしている。


「おりぇは光りたくないんら!」

「アハハハ!」

「でもハル、解毒と浄化魔法まで覚えていたのですね」

「ん、りゅしか。かーしゃまとじーちゃんが教えてくりぇた」

「マジ、あの2人はどんだけ教えたんだよ。俺、ビックリしたわ」

「リヒト様、そうですね。本当に、僅かな期間で……」


 そう、ルシカの言う通りほんの数日しかなかった。

 なのにあの2人は一体どれだけの事をハルに教えたのか。それはもう2人で嬉しがって教えていた。なんせ、ハルは直ぐに覚えるのだ。例えば、魔法なら既に上級魔法まで習得済みだ。ただ、ハルは身体が光っちゃう。


「りゅしか、まら解毒と浄化の薬湯ありゅ?」

「ありますよ、どうしました?」

「村の水路に上流かりゃ撒いて」

「はい、わかりましたよ。イオス」

「おう」


 ハルに言われて、ルシカとイオスが手分けして解毒と浄化の薬湯を撒いていく。

 湖でリヒトとハルが解毒と浄化魔法を使った事、ルシカとイオスで徹底的に解毒と浄化の薬湯を撒いた事で辺りの空気が変わった。


「で、ハル。その頭に乗っかってるのどーすんだ?」

「あ……どーしよ? とりあえじゅ、りゅゆしか。薬湯とポーションちょうらい」


 ルシカからもらいポトポト……と垂らしてみる。尻尾が少し動いたがまだ元気がないようで動かない。

 ハルの瞳がゴールドに光った。身体は光ってないので、かなり力を抑えたのだろう。


「ん……解毒と浄化は大丈夫ら。ちょっとじゅちゅポーションあげてみりゅ。いっぺんにあげりゅとらめみたいら。まらちっしゃいかりゃ」

「そうか。毎日、少しずつか」

「ん……」


 またハルのペットが増えそうな予感。

 さて、村人だ。


「兄さん達、スゲーな! 一体何したんだ!?」

「でっかいクラゲみたいなのは見たか?」

「ああ! 見た見た! あんなのが棲みついていたんだな!」

「あれが毒を出してたんだ」

「マジかよ……あんなの今までいなかったぜ。見た事もないぜ!」


「みーりぇ、この子寝かせてあげたいんら」


 ハルは話を聞いていない……マイペースだ。

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