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64ーカエデの身体能力

「ハル、もう食べたか?」

「食べたじょ。りひとも食べな」

「おう、腹へったわ」

「リヒト様、どうぞ」

「ルシカ、ありがとう。ルシカも食べたか?」

「これから頂きますよ」


 やっとリヒトとルシカが腰を下ろし食べ出した。


「原因はなんらったんら?」

「ハル、多分近所にある湖だってよ」

「湖……なりゃ、みじゅか?」

「だろうな。水草が腐り魚も捕れなくなったそうだ」

「なんれ急に毒?」

「さあ、見てみなきゃ分からんな」

「りひと、おりぇも行く」

「そうか? 見てみるか? 光っちゃうけど。アハハハ」

「え? 何なん? 光っちゃうって何やの?」

「カエデは、知らなかったか。ハルは初級より上の魔法を使うと身体が光っちゃうんだ」

「え!? ホンマなん!? いやそれより、ちびっ子やのに魔法使えるんや。めちゃ凄いやん、流石エルフさんやな!」

「かえれも練習したりゃ少しは使えりゅ」

「そうだな。初級位はいけんじゃねーか?」

「ホンマ!? ちょ、ホンマにか!?」


 そう、以前リヒトがカエデを鑑定した時に言っていた。『魔力もちょっと持っている』と、確かに言っていた。


「だからカエデ、お前さ無意識なんだよ」

「へ? リヒト様、意味分からんねんけど」

「無意識で身体能力の方に魔力を使ってんだ。猫獣人なんだから、元々の能力も高かったんだろう。カエデ、ハルを攫う時に2階の部屋にどうやって入ったんだ?」

「え? 自分、今になって責められてる?」

「カエデ、そうではありませんよ。あの2階の部屋にどうやって入ったのか聞いているだけですよ」

「え……ルシカ兄さん、普通にジャンプして」

「やはりな」

「カエデ、マジか!?」

「リヒト様、マジやで?」

「イオス」

「はい、リヒト様。俺、部屋の外から確認しました。あの部屋に入る、足場代わりになる物はありませんでした」

「あそこの部屋やろ。何もないな」


 そうだ。あの時しっかりイオスは確認していた。近くに木もない、足場になる様なものがなかったんだ。そこをカエデはジャンプで入ったと言った。エルフのイオスでさえ無理だと思った高さをジャンプしたんだ。リヒトの話だと、猫獣人の身体能力だけではないらしい。


「だからだよ。だから俺は内部のメイドが手引きして部屋に入ったんだと思ったんだ」

「イオス兄さん、ちゃうで。この部屋やって場所は教えて貰ってたけどな。ヒョイヒョイとジャンプや。自分、猫獣人やからな。楽勝や」

「カエデはその時に多分、身体強化的な魔法を使ってんだ」

「リヒト様、自分魔法は使われへんて」

「だから、無意識にだよ。それを訓練して意識して使える様になったら強くなるな」

「ホンマ!? 自分、訓練するわ!」

「そうだな。今のままだとハルの方が余裕で強い」

「え……ハルちゃん強いん? めちゃめちゃちびっ子やで」

「ハルは強いですよ」

「そうね、全然強いわ」

「え……ルシカ兄さん、ミーレ姉さん……あかーんッ! 自分、全然あかんやん! 勉強もでけへん、魔法も使われへん、その上ハルちゃんより弱いんやろ? ホンマに凹むわぁ。なんなん? そのエルフさんの無敵さ加減はなんなん? めちゃ反則やわー! 虎に翼やん!」


 『虎に翼』とは? もともと威勢のよいものが、さらに威勢を加えることだそうですよ。カエデはことわざが好きらしい。

 反則と言われても仕方ない。元々能力がある上にハルに関しては、エルフの国ではその分野でトップとも言える2人が可愛がり嬉しがって教えたのだから仕方ない。

 また、ハル自身も面白がってどんどん覚えて吸収していくのだから、もう教える方の2人は止まらない。

 実はそれは魔法や調薬だけではなかったのだが、それはまた披露する時が来るだろう。


「ハルちゃん、教えてくれる?」

「ん、いいじょ」

「ハルちゃん! ありがとー! 天使やわ!」

「カエデ、魔法は私が教えます」

「え……ルシカ兄さん」

「ん、しょれがいい」

「マジ? ハルちゃん」

「ん、丁寧らからりゅしかがいい」

「ほな、ルシカ兄さん! よろしく頼んます!」

「はい、頑張りましょうね」


 適任だ。ルシカなら基礎から丁寧に教える事だろう。


「さて、湖に行ってみるか」

「リヒト様、案内を頼んできますよ」

「ルシカ、頼む」


 さっき、馬車を止めた村人だ。


「俺が案内するぜ! 俺もポーション貰ったんだ、もう元気だぜ! しっかり案内するからよ!」

「じゃあ、頼む」

「兄さん達、本当にありがとうよ! 村人が皆元気になった。その上飯まで食わせてもらって、もう俺達にとっては救世主だぜ!」

「いや、大袈裟だろ?」

「大袈裟なもんかよ! 領主の男爵なんて見にも来やしねー! なのに、通り掛かっただけの兄さん達がよぉぉ!」


 おやおや、泣いてしまったぞ。


「まだ湖を見てみないと解決にはならないだろう? 案内してくれ」

「すまねー。こっちだ。歩いてすぐだ」


 村人の後をリヒト達一行が続く。今度はハルやカエデも一緒だ。リヒトに抱っこされているハルと、カエデを見て村人が言った。


「ちびっ子もいたんだな」

「俺の弟とその従者だ」

「あの子は猫獣人か?」

「そうだが?」

「いや、エルフさんて他種族を受け入れないイメージがあったからよ」

「そんな事はないな」

「そうなんだな。俺達とも気さくに話してくれるし。想像とは違ったぜ」


 勝手にどんなイメージを持たれているのやら。


「ま、とんでもなくベッピンさん揃いなのは噂以上だったけどな! ワハハハ!」


 また、どんな噂だ。リヒト達は少々呆れ気味だ。


「見えて来た。あの湖だ」


 村人が指差す方に小さな湖が見えてきた。湖というには小さい。どこかの川が流れ込んでいるのだろうが、水が澱み水草や湖の周辺に生えている植物まで枯れている。なにより、空気まで澱んでいる。

 リヒトが瞳をゴールドに光らせながら村人に話す。


「あんた達は近寄らない方がいいな」

「え!? そうなのか?」

「ああ、空気が悪いな。離れていてくれ」

「分かった! 俺は此処で待ってる。すまん、頼んます!」


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