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44ー傲慢な令嬢?

 結局、令嬢の体力が回復するのを待ってリヒト達が送り届ける事になった。

 令嬢はすこぶる元気そうだ。オークに囚われていたのにだ。恐怖を誤魔化している風もない。救出された時は、空腹で気を失っていたらしい……図太いのか? いや、覚えていないからか?


 調査後の考察だが、あと1日でもオークの集落を一掃するのが遅かったら令嬢は無事ではなかっただろうという事だった。

 オークキングは攫ったヒューマンの女性を1人ずつ蹂躙していたらしいのだ。遺体の状態がそれを物語っていたそうだ。

 数人の、女性だったであろう無残な姿の遺体が発見されていたそうだ。令嬢が話していた侍女もその中にいたのだろう。


 さて、城から帰ってきたハルは次の日からリヒトの母に付いて勉強をしている。

 1日の1/3を座学、1/3を魔法の勉強、1/3を体術や身体の動かし方等を教わっている。

 結果……ハルは初級魔法なら身体が光らずに使えた。中級魔法になると意識して魔力を抑えないと光り出す。

 ハルは鑑定スキルも持っていた。リヒトが悔しがっていた様に鑑定の上位スキルである『精霊眼』だ。だが、これも使おうとするとたちまち身体が光り出す。

 もっと魔力が馴染んで魔力操作も出来て身体が光らない様になるまで初級魔法のみに留めておく事になった。それでもハルは……


「くりーんが使えりゅ!」


 と、喜んでいた。


 コハルにつける目印だが、城に行った次の日に長老が早速持って来た。

 話していた通り、リヒトの家の紋章をつけた赤の細い首輪だ。チョーカー仕様になっている。一見、普通の首輪に見える。が、空間魔法を付与してありコハルに合わせてサイズが自由に変化する。

 そして、物理耐性を付与し物質強化もしてあるので切ろうとしても切れない。尚且つ、物理攻撃防御と魔法攻撃防御にシールドが付与されていた。重量軽減も付与されているので重さは感じないだろう。超優れものだ。

 コハルの白い身体に赤い皮の首輪がよく映える。首輪のトップには、シュテラリール家の紋章が入っているコイン型になった小さな丸いプレートがついている。プレートをつけた部分は赤い皮でできた小さなリボンが飾られていて可愛い。

 

「こはりゅ、めちゃ似合ってりゅ!」

「ふふん、ありがとなのれす!」


 と、コハルも気に入った様だ。小さな胸を張ってドヤっている。コハルが作った訳じゃないのに。


 なんだかんだと言って長老は毎日ハルに会いに来た。

 母と一緒に座学の先生をしたり、魔法の練習に付き合ったり、体術の相手をしてくれたり。時には一緒にお昼寝をしたりした。長老とリヒトの母によって、毎日1日中甘やかされ愛情を掛けられ疑う隙もなくハルが大事なのだと伝えられる。

 夕方になれば、リヒトやリヒトの父と兄が帰ってくる。母と一緒に出迎える。直ぐにリヒトと風呂だ。すると、父と兄も入ってくる。3人の背中を流すのがハルの役目になっている。

 それから、全員揃って夕食だ。1日あった事を話す。ハルも母とこんな勉強をしたと報告する。そんな、平和な日々が数日過ぎた頃だった。


「3日後、アンスティノス大公国へ出発する事になった」


 オークに捕らえられていた令嬢を送り届ける為だ。思い込みが激しくて人の話を聞かない令嬢。元気になったのだな。


「元気どころか……」

「あら、リヒトどうしたの?」

「母上、城の中を我が物顔で歩き回っていて、帰りたくないとまで言い出しているようです」

「あら……図々しいわね」

「ずっと城で住めるとでも思っているのでしょう。しかし、いくらヒューマンの国で伯爵令嬢だったとしてもエルヒューレに来れば平民と一緒ですからね」

「可哀そうにと思って城で保護したのが間違いだったか」

「父上、そうかも知れません」

「傲慢だな」

「本当ですわね。何をどう考えたら城で暮らせると思うのかしら?」

「母上、レオ殿下です。殿下を狙っている様です」

「まあ! 本当に傲慢なのね!」

「リヒト、さっさと送り届けなさい」

「父上、俺はもう大森林に放り出してもいいとさえ思います。あの図太さなら生きていけますよ」


 よっぽどリヒトは嫌らしい。どんどんヒューマン族の印象が悪くなっていく。それは、話を聞いているハルも一緒だ。その結果ハルは……


「おりぇ、ヒューマンに保護さりぇなくて良かった〜」


 とまで言い出すようになってしまっていた。

 ヒューマン族の伯爵令嬢、たった1人の言動が原因でヒューマン族全体の印象が悪くなっている。それは良いのか……?

 翌日、ハルは長老と庭のテーブルセットでその話をしていた。


「ハル、彼女が特別変わっているんだ。ヒューマン族全体がそうという訳ではないぞ」

「じーちゃん、そりぇは分かってりゅ。らってこの世界に来りゅ前はヒューマンらけの世界で、おりぇもヒューマンとして生きていたんらかりゃ。れもおりぇは、りひとに保護さりぇてラッキーらったよ」

「そうか。それが分かっているならいいさ。ハルも一緒に行くのか?」

「うん、おりぇは行きたいんら。他の国も見てみたい。れも、りひともとーしゃまも危ないかりゃ邸にいりゅように言うんら」

「ハルの髪色がな、ヒューマンがどう見るかだ」

「おりぇの色、珍しいんらっけ」

「ああ、今はもう絶滅したハイヒューマンの色だからな。数の暴力で絶滅まで追い込んだのがヒューマン族だ」


 ああ、本当にヒューマン族は……


「何千年も前の話だから、もうヒューマンは覚えていないだろうが。一層の事、魔法で髪色を変えるか?」

「じーちゃん、そんな事できんの?」

「ああ、できるぞ。簡単だ」


 簡単なのか。それは便利じゃないか?


「長老、ハル、おやつ食べましょう」


 リヒトの母がやってきた。リヒト家は今日も平和だ。母がドーナツを持ってきた。


「かーしゃま、そりぇあのドーナツか?」

「そうよ、ハルの好きなドーナツよ。食べるでしょ?」

「うん! 食べりゅ!」

「あたちもなのれす!」


 どこからか、コハルが出てきた。ハルだけでなくコハルもこのドーナツが大好きだ。以前、ルシカやミーレと一緒に街へ出掛けた時に買って食べてから大好きになった。


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