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41ー報告会? 昼食会?

「さて、待たせたなコハル」

「え、あたちなのれす?」


 コハルがひょっこりと顔だけ亜空間から出している。


「ああ。コハルもこのままじゃいかん。目印をつけないとな」


 ああ、ミーレが言っていたな。


「じーちゃん、りぼんとかじゃらめなのか?」

「そうだな。まず、物理的に壊せない物でないと駄目だな。あとは、リヒトの家の紋章を入れんといかんな」

「もんしょう?」

「ああ。ハイリョースエルフの家には其々固有の紋章があるんだ。それを付けておくと、どこの家の者が主人なのか分かる」


 なるほど。本格的だ。


「それと、コハル。お前はハルを守る為に遣わされたんだな?」

「そうなのれす! ハルを守るなのれす!」


 コハルが亜空間からピョコンと出てきた。両手を腰に当てて得意気に胸を張っている。


「だが、まだまだ子供だな。よいか、勝手に飛び出すんじゃないぞ。リヒトやルシカ、それにハルの言う事をよく聞くんだ。突発的なハルのピンチ以外はな」

「わかったなのれす。リヒトにも言われたなのれす」

「あー、そうか。もうやっちまってたんだったな。オークキングを倒したんだったか」

「じーちゃん、アレはおりぇが飛び出しちゃったんら」

「ハルは大人を頼る事を覚えないといかんな」


 ああ、また言われたぞ。この世界に来てからよく言われる事だ。だってハルの前世では頼れる大人等いなかった。


「まあ、ゆっくりでいいさ。今までの思いをそう簡単には変えれんだろう」

「れも……れも、じーちゃん。おりぇ、笑えたんら。んれ、泣けたんら。そりぇに毎日が楽しいんら。前はそんな事ずっとなかった。ずっと忘りぇてた」

「そうか! 楽しいか! アハハハ! ハル、ちょっとずつでいいぞ。無理する事はない。嫌なもんは嫌と言っていいんだ。それとな、ハル。忘れてはいけない事がある」


 長老は微笑んではいる。優しくハルを見つめている。だが、急に長老が纏う空気が変わった。


「ハルは辛い思いをしただろう。だがな、両親が心を掛けて手を掛けていたから成長したんだと言う事も忘れてはいかんよ」

「心をか?」

「そうだ。産まれて直ぐのハルはどうだった? 1人で飯を食えたか? 自由に動けたか?」

「じーちゃん……無理ら」

「そうだろう? 小さなハルにミルクを与えオムツを替えたのは誰だ? 死ぬ思いをして産んだのは誰だ? 熱を出したハルを医師に見せたのは誰だ? 当たり前の様に教育を受けさせてくれたのは誰だ? ハル、分かるか?」

「うん……」

「だがな、だからと言って何をしても良いという訳じゃない。ワシはハルの両親の事を肯定している訳ではないぞ。我が子に何をしとるんだと思っておる。だが、それだけではないと言う事も理解しなければならん」

「ん……」

「まあ、すぐには無理だろう。まだまだ先は長い。ゆっくりと考えるといい」

「じーちゃん……」

「そうだ、コハルに付けるのはワシが作っておいてやろう」


 また元の和やかな雰囲気に戻った。長老はハルの曽祖父であり、ハルの祖母の父親だった。親と言う立場からも思う事があるのかも知れない。


「ほんちょか!?」

「ああ、任せろ。じーちゃんがとびっきりのを作ってやるぞ!」

「じーちゃん! ありがちょ!」

「ありがとなのれす!」

「おう! コハルも可愛いなぁ」


 ――コンコン


「戻りました」

「早かったじゃないか、リヒト」

「長老、奇跡ですよ。やられてなかった」

「ほぅ、それは本当に奇跡だな」

「リヒト様、ハルの前で……」

「あ? ああ、すまん」


 ハルはキョトンとしている。さっき長老から聞いたのだ。意味が分からない筈はないのに。もしかして、天然か?


「りゅしか、何?」


 ……天然だったらしい。


「いえ、ハル。無事だったと言う事ですよ」

「良かったじゃん」

「まあな、まだ意識は戻ってないが。戻ったら話を聞かないと」


 余程、怖い思いをしたのだろうか。


 ――コンコン


「失礼致します。昼食を皆様ご一緒にと」


 テージュが呼びにきた。もう昼だ。


「あ、腹減った!」

「そうだな。リヒト、ルシカ行こうか」

「はい、長老」

「はい」

「ご案内致します」


 テージュがドアを開けて待つ。

 当たり前の様に長老がハルを抱っこする。ハルはまだ短い両腕で長老の首に手をまわして嬉しそうだ。

 長老も、目尻が下がっている。こうしているのを見ると、2人はよく似ている。

 グリーン掛かった髪も、少し垂れ気味の目元も。

 そんな2人をリヒトは少し複雑な顔をして見ている。


「ハル、俺抱っこしようか?」

「ん……りひと、いい」


 あらら、リヒトが振られちゃったよ。

 長老がハルの曽祖父だと分かった。保護者にも名を連ねている。じゃあ、血縁のある長老に引き取られるのか? めちゃ嬉しそうに抱っこされてるし。

 なんて事をリヒトは考えていた。さて……どうなんだろう?



「なんだって!? 長老それは本当なのか!?」


 昼食を食べながらのハルの報告会になってしまっている。

 ハルの祖父母の話を長老が報告すると皆一様に驚いて手が止まっている。

 驚くのも当然だ。しかし、食べながらでいいのか? 大事な話だと思うが。


「アハハハ、驚いただろう!? 見たワシもビックリしたぞ! とうとう心臓が止まるかと思ったわ! アハハハ! にわかには信じられんかった」


 大人達の驚きを他所に、ハルとコハルは食べるのに夢中だ。


「りゅしか、りゅしか。こりぇ、めちゃ美味いじょ」

「ああ、トマト煮込みですか? ハルはトマト味が好きですね」

「ん、好き! ちーじゅもめちゃ合う!」

「アハハハ、ハル。お口の周りが大変な事になってますよ」


 ルシカがハルの口の周りを拭いてやっている。そうこうするうちに、一通りハルの能力の報告が終わったらしい。


「じゃあ、ハル。明日から本格的に魔法のお勉強を始めましょうか?」

「うん! かーしゃま。おりぇ、光っちゃうかりゃ」

「ウフフフ、そうね。光っちゃうわね」

「かーしゃま、知ってたのか?」

「ええ。だって母様が魔力を流した時も光っていたわ」


 マジか!? と、ビックリお目々のハル。思わず食べる手も止まっている。


「アハハハ! ハル! 光っちゃっていたとよ!」

「もう! じーちゃんは笑ってばっから!」


 そう言いながらもハルも笑顔だ。長老は嬉しくて仕方ない様だ。昼間からワインが進んでいる。


「初歩から始めてどこから光るのか見てもらうといい」

「うん、じーちゃん」


 長老は目尻が下がりっぱなしだ。


「しかし……驚いた。まるで奇跡じゃないか。それに、長老のこんな顔を見られるとはな」


 皇帝も喜んでいるのだろう。いや、皆だ。皆が喜んでいる。

 昼食は笑顔が途切れなく和やかなうちに終わった。満腹になったらハルはもう駄目だ。コクリコクリとし出した。


「あらあら、もうおネムね」


 リヒトの母がハルを膝に抱っこして背中をトントンとする。ハルはスヤスヤと寝息をたて出した。


「ほんに可愛いのぉ」

「ええ、本当に……」


 皇帝と皇后がスヤスヤと眠るハルを見てしみじみと言う。



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