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34ー初めて城へ行く

 翌日、いつもより少しだけ早い時間に、ハルはミーレに起こされた。昨日、リヒトの母が言っていたように、長老と会う前にこの国の皇帝に会わなければならないからだ。いつもより豪華でヒラヒラの多い服を着せられるハル。


「みーりぇ、こりぇ飯食べてかりゃ着替えりゅ方が良くない?」

「ハル、汚しちゃ駄目よ。絶対に」


 ミーレの目が怖い。だから、朝食を食べてからの方が良いだろうとハルは言っている。


「今朝だけは私が食べさせようかしら」


 ああ……ミーレは本気だ。


「みーりぇ、気をちゅけりゅ」

「取り敢えず、タオルは巻くわ」


 あー、意味不明。会話になっていない。


 今朝はリヒトもいるので、リヒトや両親、兄と一緒だ。ハル専用の椅子に座らされ、首に大きめのタオルを巻かれたハル。

 マジかよ……と、目で訴える。タオルってこの事だったのか。


「ハル、だから汚しちゃ駄目」

「う、うん……」


 食べやすいサンドイッチとスープで良かった。これなら9割の確率で汚さずに食べられるだろう。トマトソースなんかだと半分終わってる。汚さない確率が、9割から5割位まで一気に落ちてしまう。


 緊張した朝食も無事に終え、リヒトと玄関に向かう。ルシカとミーレが既に待っていた。


「お供致しますよ」

「りゅしかが一緒なりゃ心強いな」


 それ、どういう意味だ?


「みーりぇは行かねーのか?」

「私はお邸で待ってるわ。ハル、頑張ってね」


 そっか、ミーレは行かないのか……と、残念そうなハル。


「ハル、父様のお膝に乗せてあげよう」


 また空気を読まない父だ。


「とーしゃま、今日は馬車?」

「そうだ。城に行くからな。先にちょぉーっとだけ兄上に挨拶してから長老へ会いに行こう。長老も今は城におられるからな」


 あ……これはやはり父も一緒に長老と会うつもりだ。


「あなた……あなたは陛下とお話があるでしょう? しっかりお話しなさって下さいね」

「あ、ああ。分かっているさ」


 怪しい……目が泳いでいる。


「ハル、行くぞ」

「ん、りひと」


 リヒトが出した手を繋ぐハル。

 リヒトも今日はキラキラとヒラヒラが多めで皇子様仕様の格好をしている。ユニコーンに乗ったら、まんまおとぎ話に出てくる白馬の皇子様だ。

 やっと、カッコいいポジの本領発揮かも知れない。


「リヒト様、おはようございます。ハル、おはよう」


 街へ行った時に御者をしてくれた、執事であるロムスの息子でイオスだ。今日も御者をするらしい。


 1台の馬車に、リヒト、ハル、ルシカが乗り込み、もう1台の馬車にはリヒトの両親が乗り込んだ。

 ハルは初めての城だ。初めての皇帝との御目通り。それよりも、長老と会えるのが楽しみなハル。


「ハル、緊張するか?」

「りひと、なんれ?」


 しないらしい……


「いや、なんでもないさ。いつも通りでいいからな。ハルのメインは長老と会う事なんだし」

「ん。長老てろんな人ら?」

「ま、一番長生きしてるから長老だ」


 いや、リヒト違う。ハルが聞きたいのはそこじゃない。


「リヒト様、そこじゃありません。ハル、大丈夫ですよ。優しいお爺さんです」


 ほう。お爺さんか……そういえばエルフの国に来てまだ老人を見た事がないな、と思うハル。1番上の年代と言えば、執事のロムスだ。でもリヒトの父とそう変わらない気がする。


「奥様からステータスタグの話は聞きましたか?」

「うん、りゅしか。昨日聞いた」

「皆、長老から貰うのですよ。私も小さい頃に長老から頂きました」


 ほう……そうなのか。


「大抵は5歳位に貰うのですが、ハルは事情が事情ですので早く貰っておく方が良いだろうと言う話になったのですよ」


 そうなのか……やっぱルシカは違うね。リヒトみたいに的外れな事は言わないね。

安心感が違うよね。と、思ってそうなハル。


「なんだよ、ハル。何か失礼な事考えてたろ?」


 ふぅ……と、ため息をつくハル。


「りひと、しっかりしりょよ」

「あぁ? 俺はいつも、超しっかりしてるだろうよ」


 そうか……やはり無自覚か。



 世界樹が悠然と佇む『ウルルンの泉』の中央、世界樹の樹下にエルヒューレ皇国の皇城がある。

 その城に三方から橋が架かっている。

 どうやって泉の中央に城を建てたのか。どうやって橋を架けたのか。ハルは興味津々だ。


 橋近くまで来ると城はもう直ぐそこだ。

 よく見ると、世界樹が立っているのは泉の中央にある小島だと分かる。城が建っているところもだ。

 世界樹の存在感があまりにも圧倒的で見逃してしまいがちだが、その樹下にある城も小島に建てられたものだった。

 ミーレは、どうやって泉の中に建てられたのか分からないとか言ってたぞ。

 本当に、もっと勉強しようぜ。しかし、これって大雨の時とか大丈夫なのか? 泉の水位が上がったらヤバイんじゃないのか? テュクス河が氾濫したりしないのか?


「ハル、大丈夫ですよ。滅多な事ではウルルンの泉の水位は変わりませんから」


 なんと! それは不思議だ。

 橋の直前で馬車は止まった。ルシカが馬車の窓を開ける。兵士が中を覗き込み、御者に合図を出している。どうやら確認らしい。また、馬車が動き出し城の正面に架けられた橋を渡り城壁の中へと入って行く。

 三方にある橋と言うのは、今ハル達が渡った城の正面に架けられた橋と、左右だ。城のすぐ背後には世界樹があり、その方向には橋がない。城に行こうにも世界樹に阻まれるからだろうか? 防犯からだろうか?


 日本の城にある様な色んな形の天然の岩を切り出し積み重ねた石垣の城壁とは違って、同じ形同じ大きさに切り揃えられた岩石らしき物が積まれた城壁。半円形の側防塔もある。

 身体から蒸気を出しながら、巨人が顔を出しそうだ。


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