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33ーコハルが喋った!

 食堂に入ると何人も使用人達が食事をしていた。


「ハル、座って待っててね」


 そう言ってハル専用の椅子に座らせる。


「ん、みーりぇ。ありがちょ」

「よう、ハルか」


 ん? 誰だ? オシャレッぽい顎鬚をはやしエプロンをしたオッサンが声をかけてきた。

 オッサンだが、流石エルフだ。見た目はイケメンだ。いや、イケオジだ。サラサラの金髪を後ろで一つに結んでいる。


「ルシカの作った飯じゃないけどな、俺の作った飯も美味いぞ」

「もう、ハルがビックリするでしょう。ハル、このお邸のシェフのシペさんよ」

「しぇふ! おぉー!」

「アハハハ、可愛いなぁ! ほら、食べな。しっかり食べるんだぞ!」

「うん! ありがちょ! いたらきましゅ!」

「ハル! またあたちを忘れてるなのれす!」


 コハルが亜空間から出てきて文句を言っている。


「こはりゅ、ごめんごめん」

「「えぇ……!?」」


 ミーレとシェフのシペが固まっている。どうした? と、分かっていないハル。


「ハル、今コハルが喋ったわよ!」


 何を言ってるんだ? いつもコハルは喋っているぞ? て、顔のハル。


「だからね、私達にもコハルの声が聞こえたの! また忘れてる、て言ってたでしょ?」

「あ……コハル、なんれ?」

「だって、さっきハルは魔力を意識して使ったなのれす。だからなのれす!」

「え、それだけでなの?」

「そうなのれす。ハルは今迄意識して魔法を使った事がなかったからなのれす!」

「やだー! コハル! 嬉しいわ!」


 ミーレがコハルを両手の平にのせてスリスリしている。いや、小さいリスだから。あんまりやり過ぎるとプチッていっちゃうよ? プチッてさ。


「ミーレ! ミーレ! 苦しいなのれす!」

「あ、あら。ごめんなさい。だってコハル、とっても可愛いんですもの!」

「ミーレもとってもかわいいなのれす!」

「やだ! なんて可愛いんでしょうぅッ!!」


 あらら……ミーレが壊れちゃった?


「スゲーな。俺聖獣を見るのも初めてだけど、喋ってるのを見るのも初めてだわ」


 シペがコハルの頭を指でスリスリする。


「よろしくな、俺はシェフのシペだ」

「よろしくなのれす! あたちもハルを食べるなのれす!」


 ん? ハル『を』食べる?


「アハハハ! ハルを食べたら駄目だ! コハルの分も持ってきてやるよ。待ってな」


 おや、シペはサラッと流したか。案外冷静な奴なのか?


「こはりゅ、こっちおいれ」


 ハルの側にチョロチョロと移動するコハル。なんとも、可愛らしい。

 ある意味、ハルとコハルは最強コンビかも知れない。いや、確かに強いっちゃあ強い。


「みーりぇ、座って食べよ」

「ふぅ……ごめんなさい。コハルがあまりにも可愛いもんだから」


 喋る言葉が分かるようになっただけで、変わっていないのだが。


「そうだ。コハルは野生じゃないわよって目印をつけなきゃね」

「なんらそりぇ?」


 ハルはもう1人先に食べ出している。

 シペがミーレとコハルの食事を持ってきた。


「あれだ、なんでもいいんだよ。首輪でも腕輪でもなんでもいいから主人がいるぞ、て目印をつけるんだ」

「ほぉ……」

「そうしないとね、悪いヒューマンとかに連れて行かれても文句言えないのよ」


 なんだ? この世界のヒューマン族は悪い奴ばかりか?


「じゃあ、首にリボンれいいじゃん」

「駄目よ。リヒト様が帰ってきたらちゃんと相談しましょ」

「ああ、その方がいいぜ」

 

 なんだ? 何でもいい訳じゃないのか?

 まあ、コハルがヒューマンに捕まる事自体がないとは思うが。

 なんせ、小さなリスでも聖獣だ。鬼強い。




「「えッ……!?」」


 やっぱ驚いている。オークの集落の調査を一旦終えてヘロヘロになって帰ってきたリヒトとルシカだ。コハルの言葉が分かるようになっていて、2人共驚いて若干フリーズしている。


「マジかよ……」

「リヒト様……聖獣が、コハルが喋ってますよ」

「お、おう……」

「ヨロシクなのれすー!」

 

 そう言ってコハルは片手をヒョイと上げる。ついでに首を(どこからどこまでが首かは分からない)ピョコッと傾ける。

 人間がやればあざとい仕草かも知れないが、なんせコハルはリスだ。真っ白な子リスの聖獣だ。あざとさ等カケラもない……はず。


「ハル! どうしてこうなった!?」

「え……かーしゃまに魔法を教えてもりゃったりゃこうなった」

「母上! 一体どんな魔法をハルに教えたのですか! まだハルは小さいのに……」

「ライトとクリーンだけよ」

「そう、ライトとクリーン。だから……えッ!? 母上、ライトとクリーンですか!?」

「そうよ。魔力を流しただけなのよ。後は長老に会ってからの方がいいでしょう? そしたら、ハルがクリーンを覚えたい、て言うから」

「そんな……魔法と言うか何と言うか。それだけでコハルの言葉が分かるようになるものなんですか?」

「さぁ、分からないわ」

「母上!」

「もう、確かな事は分からないのよ。聖獣自体がとんでもなく珍しいんだから! 多分よ、多分だけど。亜空間持ちのハルの魔力量でコハルの言葉が分からない訳がないのよ。ただ、ハルは魔法を使った事がないと言っていたからそれだけの事だったのじゃないかしら?」


 いやいや、無意識だろうけど身体強化していたぞ。とは、リヒトの心の声だ。無言で首をブンブンと横に振っている。


「リヒト様、以前ハルもその様な感じの事を言ってましたね。だから、本当に意識して使えるかどうかだけだったのではないですか?」

「あ? ああ、そうか? まあ、もう何でもいいさ。コハル、よろしくな!」

「よろしくなのれす!」

「アハハハ! 何か変な感じだな! さ、とにかく風呂だ! ハル、風呂いくぞ!」


 またもや、有無を言わさずハルを抱っこしてさっさと風呂へ行くリヒト。

 コハルは何故かルシカの肩に乗ってきた。


「コハル、もしかしてお腹すきましたか?」

「そんな事あるあるないなのれす。あたち、ちゃんとハルが戻ってくるまで待ってるなのれす」


 はい、お腹が空いていらっしゃるらしいですよ。どうもコハルはまだちょっぴり言い間違いをするらしい。


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