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31ー母様とお勉強

 朝食を食べ終わる頃に、執事のロムスがやってきた。


「食事が終わりましたら奥様のお部屋に案内しますよ」

「あ! もしかして、かーしゃま待たしぇてりゅ!?」

「いえ、大丈夫ですよ。ゆっくり食べて下さい」


 昨日、勉強を教えてくれると言っていた。ハルは楽しみにしている。

 最後の一口を、はむっと頬張る。


「ミーレ、貴方も一緒に勉強しますか?」

「え……ロムスさんやめてください。嫌ですよ」

「あなたはもう少し勉強する方が良いのですけどね」


 おや、ミーレ。そうなのか? やはりそんな感じなのか?

 ハルはスープも全部飲んだ。


「みーりぇ、ごちしょーしゃま!」

「ハル、またお昼ね!」

「うん! ろむしゅお願い」

「はい、参りましょう」


 ロムスに連れられて3階まで上がる。ハルが寝ている部屋も3階だ。だが、まだ他の部屋は見た事がない。

 1番奥の部屋に入ると、リヒトの母が待っていた。


「ハル、おはよう! ちゃんとお腹いっぱい食べたかしら?」

「あい、かーしゃま」

「もう! なんて可愛いのかしら!」


 ロムスが黙ってハルを机の前の椅子に座らせてくれる。


「奥様、落ち着いて下さい」

「ロムス、分かっているわ。大丈夫よ」


 母は話していた通り勉強を教えてくれるつもりらしい。


「まず、ハルちゃんは文字を読んだり書いたりできるのかしら?」

「あい。ベースれ、りひとの仕事の書類を読めたし書けた」

「まあ! 何してたの?」

「リヒトのお仕事のお手ちゅらい」

「やだわ、リヒトったら。何をさせているのかしら!」


 リヒト担当のハルだったな。お目付役とでも言うべきか。


「じゃあ、このご本を読んでみましょう」


 リヒトの母が出してきた本。この世界の始まりの物語りだ。子供用の本なのだろう。文字も大きくて絵もある。絵本ほどではないが、子供にも分かりやすく書かれている。


「これはね、エルフの皇族が代々受け継いできたお話なの。皆、小さい時に教わるのよ。大森林を大切にしましょう。世界樹を大切に守りましょう。何故なら……て、お話ね」


 ハルはコクンコクンと頷いている。


「この世界の神はまず最初に世界樹をお作りになったの。それから大陸、海ができて、泉、河、湖が出来たの。この、大森林は何と言うか知っているかしら?」

「へーねの大森林」

「そうね。世界樹と大森林の守護人としてエルフがいるのよ。1番歴史の古い種族なの」

「まもりびと……」

「そうよ。ガーディアンね」

「おお、がーでぃあん!」


 ハルはリヒトの母が話す話を、目をキラキラさせながら聞いていた。全部面白く思えるんだ。まるで、神話の中で生きているかのようだ。

 

「さて、もうすぐお昼ね。朝のお勉強の最後にハルちゃん。母様と手を繋ぎましょう」


 徐にリヒトの母はハルの前に両手を出した。

 ハルは何も考えず、その両手に自分の手を重ねた。


「ゆっくりと深呼吸して母様の手に意識を集中してみて」


 ハルは言われた通り、ゆっくりとゆっくりと深呼吸した。目を瞑りリヒトの母の手に意識を集中させる……


「……分かるかしら?」

「うん、かあしゃま……」


 両手から温かいものが流れ込んでくる。


「これが魔力よ。ゆっくりとハルちゃんの中を巡らせるわね」


 ハルは集中する。目を瞑っているので見えていないが、この時ハルの身体は微かに光っていた。


「あなた……」


 何か言いかけながらも母は続ける。

 ハルの全身を温かい魔力が巡る。


「いい? 手を離すわよ。そのまま集中して自分で巡らせられるかしら?」


 母がゆっくりと手を離す。

 ハルはそのまま自分の身体の中を巡らせる。お腹の下辺り……そこに同じ様な温かいものを見つけた。それも一緒に巡らせる。ハルの身体がより一層光り出した。


「いいわよ。それをゆっくりとお腹に貯めてちょうだい」


 言われた通りに自分のお腹の下辺りにゆっくりと収めていく。


「はい、目を開けて」


 ハルはゆっくりと目を開けた。


「凄いわ、ハルちゃん。素晴らしいわ!」

「かーしゃま?」

「今、感じたお腹の温かいものを少しだけ意識して言ってみて。ライトよ」


 お腹の中の温かいものを少しだけ意識して……


「りゃいと……」


 ピカッと、部屋中を照らし出す大きな光が現れた。


「うわ……」

「まあ! なんて事でしょう!」

「かーしゃま、魔法!?」

「そうよ! ハルちゃん、凄いわ! こんなに大きな光を見た事がないわ!」


 眩し過ぎるので、ハルはお腹の中の温かい魔力を意識して絞った。

 すると、光も小さくなっていく。


「まあまあ! 本当に素晴らしいわ!」

「エヘヘへ……」

「魔力を加減したのね!?」

「うん。かーしゃま、おりぇ覚えたい魔法がありゅ」

「何かしら?」

「くりーん」

「まあ、ウフフフ。そんなの簡単よ。意識する必要もない位だわ。ほんの少しの魔力でいいのよ。クリーンて、言ってみて」

「くりーん」


 シュルン……と何かがハルの身体を通り過ぎていった。頭の先から、髪や着ている服、体もすべて綺麗になった。


「ほら、出来たわ」

「かーしゃま! しゅごい!」

「まあ! 凄いの?」

「うん! 覚えたかったんら! 1番に覚えなきゃって思ってたんら!」

「ウフフフ、ハルちゃんは本当に可愛いわね。長老にお会いしたらね、もっと凄いわよ」

「しょうなのか!?」

「ええ。長老がハルちゃんの魔力を通したステータスタグを作って下さるわ」

「しゅてーたしゅたぐ……」


 なんだそれは? また不思議なワードが出てきたぞ。


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