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3巻発売記念SSーおばば様の家で

 ドラゴシオン王国のおばば様の家で、ハルとおばば様が庭を散策している。遺跡調査が一段落して、国に帰る前におばば様に会いに来ている。


「おばばしゃま、しぇいれいってどこにれもいるんらな」

「ああ、そうだよ」

「いねーとこはねーのか?」

「あるさ。魔素が落ち着かないところはあまりいないさね」

「ましょ?」

「ああ、魔素だよ」


 魔素とはこの世界のファンタジー要素だとハルは思っている。とってもアバウトな思い込みだ。なにしろ、前世では魔素や魔法のない世界で育ったハルだから。未だに、魔素なんて何が何やらさっぱり理解していない。


「魔素はね魔法を発動する時に必要なんだ」

「ほうほう」


 この世界のどこにでもあるが、地域によっては濃度が違ったり、不安定だったりするらしい。


「まあ、ヒューマン族の国アンスティノス大公国は魔素濃度が薄いと言われているね」

「あー、らからしぇいれいをみなかったのか?」

「あそこはそれだけじゃないよ。緑が少ないだろう?」

「うん。めっちゃしゅくねー」

「だろう、それもある」

「ふむふむ」

「それに瘴気だね」

「しょれはわかるじょ。遺跡で浄化したんら」

「そうさね、それだね」


 アンスティノス大公国には、どの国にもあった遺跡の大きな魔石がない。遺跡自体がない。そのためか、あの国では他国よりほんの少し瘴気の濃度が高い。魔素に対する割合が他国より高いらしい。


「それを調べたのが、長老とアヴィーなんだよ」

「じーちゃんとばーちゃんが? しゅげーな」

「そうだよ、ハルのじーちゃんとばーちゃんは凄い人たちなんだ」


 自分のことのようにハルは自慢そうに胸を張る。ちょっぴり鼻息も荒くなっていたりして。

 ずっと昔、まだ長老と呼ばれる前の頃らしい。各国を大使として回っていた長老夫婦が、魔素濃度と瘴気の関係について調べていたらしい。

 エルフ族の魔法は、ほんの少しの魔素と精霊の力を借りて発動する。それ以外の種族は、魔素のみで魔法を発動する。その関係性を調べていたのだ。

 するとアンスティノス大公国は、魔素が他国より少しだけ濃いと分かった。だが、そこに住んでいるヒューマン族は魔法を得意としない。使えない者も多い。その理由は不明のままだった。

 だが今回ハルたちが遺跡調査をした結果、ハイヒューマン族で力を失った者たちがヒューマン族だと分かった。


「今回の遺跡調査はアヴィーが小躍りして喜ぶくらいのものだろうさ」

「ばーちゃんが?」

「ああ、アヴィーは研究者だからね」

「りひとのかあしゃまもしょうらじょ」

「そうかい」

「うん、魔法をおしょわったじょ」

「そうなのかい」


 二人手を繋いで裏庭へと歩いて行く。そこには小さいが畑があった。そこにおばば様が食べる分の野菜が育てられている。

 畑で野菜を収穫するおばば様、それを手伝うハル。祖母と孫のように見える。

 おばば様がハルを見る目はとても優しく慈愛に満ちている。ハルもおばば様には素直に甘えている。


「アハハハ! くしゅぐったいじょ!」


 ハルの周りに精霊たちがたくさん集まってきて、我先にとハルに近寄ろうとしている。


「おばばしゃまの家は気持ちがいいな。しょれに、しぇいれいがいっぱいら!」

「そうだろう? 精霊たちは緑が好きだからね」

「しょうなのか。じゃあ大森林にもいっぱいいるな!」

「ああ、そうさね」


 おばば様が野菜を収穫している側で、ハルはキャッキャと精霊たちと戯れている。

 そこにリヒトがやってきて不思議そうな表情をして見ている。

 精霊の姿を見ることができないリヒトが見ると、ハルが一人で走り回っているようにしか見えない。


「おばば様」

「なんだい、リヒトかい」

「俺たちはずっと精霊を見れないのか?」

「そうだね、それは誰にも分からないさね」

「そうか、俺も見たいんだ」


 精霊と戯れているハルを、羨ましそうに見ているリヒト。その姿を見ておばば様が腰を上げた。


「一瞬だけど、見てみるかい?」

「見られるのか?」

「ああ、私の手を握ってみな」


 おばば様の皺のよった小さな手をリヒトがそっと握る。おばば様がリヒトに魔力を流した。


「あ……これが精霊なのか!」


 どうしてそんなことができるのか?


「おばば様、どうなってんだ!?」

「さあね、私にも分からないさ」

「アハハハ! おばばしゃまもわかんねーのか!?」

「ああ、どうしてだか私と手を繋いでいる時だけ見えるらしい」


 今リヒトの目に映っているものは、ハルの周りにたくさんの精霊がいる光景。ハルの肩や頭に載っている精霊もいれば、周りでヒラヒラと飛んでいる精霊もいる。ハルが七色に光っているようにも見える。

 ハイエルフとハイヒューマンの血を継いだハル。世界を渡ってきたハル。ハルは特別なんだ。この世界にきっとハルが必要なんだとリヒトは思った。


「あたちもハルと遊ぶのれす!」


 いつもは呼ばれるまで、ハルの亜空間の中に入っているコハルが自分から出て来た。


「ズルイのれす! あたちも遊ぶのです!」

「アハハハ! コハルー!」

「さあさあ、夕飯の支度をするよ」

「おー! おばばしゃまの、しちゅーがいいじょ!」

「そうかいそうかい、作ってあげようね」

「やった!」

「やったのれす!」


 おばば様とハルとリヒトが家に入っていく。待ち構えていたルシカが野菜を受け取り、おばば様と一緒にキッチンに向かう。それをリビングから見ているハルとリヒト。

 こんな平和な日々が訪れるとはハルは思いもしなかった。ちびっ子になっちゃったけど、でも今はとても楽しい。

 そんなハルの冒険はまだまだ続く。


お読みいただき有難うございます!

応援して下さる方、続けて読んで下さる方は是非とも下部↓の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


1日遅れですが、3巻記念SSです!

2本できたので、明日も投稿します!

久しぶりのハルちゃんです。

3巻が昨日9/30に発売になりました。今回は各国の遺跡調査です。細々と色々加筆修正してます。

こよいみつき先生のイラストも相変わらず可愛いです!書店様に並んでますよ〜!是非!是非手に取っていただけると嬉しいです。

書泉様では毎回サイン本を販売してくださってます。お近くの方は是非とも!٩(๑•̀ω•́๑)۶

売れ残ったらめちゃくちゃ悲しいので( ߹ㅁ߹)

よろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

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