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27ーオークの集落

 ハルはまたベッドの中で目が覚めた。


「……激うまッ!!……ありぇ、おりぇ寝てた……?」

「ハル、何それ、寝言?」


 ハルは時々変な寝言で目を覚ます。夢でも見ているのだろうか? リヒトはもう慣れっこだ。


「みーりぇ、わりぃ。また寝てた」

「ちょっと疲れたのね。人混みを色々見てまわったから」

「ん。楽しかっちゃ」

「そう。また行きましょう」

「おう!」


 それにしても……なんだか邸内が慌ただしく感じる。


「リヒト様達が帰っていらしたのよ。何かあったみたいね」

「しょうなのか?」

「みたいね。でも、国には結界があるから多少の事は平気よ」

「みーりぇ、じゃあ国のピンチなのか?」

「さあ、どうかしら? ピンチって程じゃあないと思うけど。私も詳しい事は知らないから。下に行ってみる?」

「ん、行く」

「お昼も食べなきゃね」 

「あ、そうら。おりぇ昼飯まらら」


 街でケーキやら色々食べたのに。


「りゅしかの飯がいいなぁ〜」


 ハルがベッドからヨイショと降りる。


「じゃあ、厨房の方の食堂に行きましょうね」

「ん」


 ミーレに手を引かれて邸の中を歩く。


「ありぇ、やっぱ何かあったんら」


 1階に降りると、皆がバタバタしていた。ミーレは気にせずそのまま食堂へ向かう。


「みーりぇ、いいのか?」

「平気よ。まだ今すぐどうって事じゃないわ」


 そうなのか……?


「ルシカ、ハルがお昼食べるって」

「あ、起きましたか。座って待っていて下さい。直ぐに持って行きますよ」


 ミーレにハル用の椅子に座らせてもらう。


「はい、お待たせしました」

「おー! ぱしゅたら!」

「はい、新鮮なミルクが手に入りましたからね。クリームパスタにしました」

「りゅしか、いたらき!」

「はい、どうぞ」


 ハルが自分用の小さいフォークで器用にクルクルとパスタを絡めて、大きなお口でパクリと食べた。


「ピルルル」

「あ、こはりゅ。わりぃ」

「ピルルル」

「ごめんて。ほりゃ」

「ああ、コハルの分も持って来ましょう」


 ルシカがまた厨房に戻る。


「こはりゅのもありゅって」

「ピルルル」

「こはりゅは、りゅしかの飯が大好きらからな」

「フフフフ、コハルは可愛いわね〜」

「ピヨヨヨ」

「みーりぇ。ありがちょ、て言ってりゅ」

「コハル、どうぞ」

「ピヨヨヨ」

「りゅしか、ありがちょ」

「はい。沢山食べて下さい」


 うんうん、と食べながら頷くハル。

 それにしても、邸の中が慌ただしい。


「りゅしか、なんかあったのか?」

「ええ、オークの集落が見つかったらしいですよ」


 オーク。ファンタジーではお馴染みのモンスターだ。

 身長は人間と同じくらいあり、筋肉質な体をしている。顔は醜く、ブタのような鼻と牙、尖った耳がある。知能はそう高くないが、短気で戦いを好み、略奪や殺人を好む個体も多い。それに、繁殖力旺盛で多産である為に放置する訳にはいかない。


「大丈夫です。エルフの敵ではないですよ」

「集落が見つかったのなら、討伐に向かうのでしょう?」

「そうですね。多分、キングあたりがいるのでしょう」

「きんぐ?」

「ハルは知りませんか。オークの中でも、大きくて率いる能力のある個体です。普通のオークよりも少し大きくて強いハイオークを従えて集落を作っているのでしょう」


 え……大丈夫なのか? と、心配顔のハル。


「ハル、心配いらないわ。ルシカも言ったでしょう、エルフの敵ではないわ」


 そうなのか。エルフって強いんだな。


「ルシカ! いるか!」

「はい、リヒト様」

「オークの集落に討伐に向かう! お前達は国の境界で守備をしてくれ!」

「了解です。リヒト様、お気をつけて」

「オーク程度、どうって事ないさ。ハル、心配するな。邸でミーレと一緒にいるんだぞ。ミーレ、ハルを頼んだ」

「はい、リヒト様」


 いつもと違って編み込まずに、サラサラストレートの髪をそのままポニーテールに結んでいるリヒト。いつものヘアバンドもしていない。

 そうしていると、とてもエルフらしい。

 腰にはロングソードを帯剣していて、背中には弓も背負っている……が、何故か矢を持っていない。

 ルシカがリヒトと一緒に食堂を出て行った。


「ハル、大丈夫よ」

「ん……みーりぇ、矢がない」

「え? ああ、リヒト様が矢を持っていない、て事かしら?」

「うん」

「魔法の矢を飛ばすから必要ないのよ」


 なんですとッ!?


「魔法……?」

「そうよ。ほら、国に来る時に大型のビックベアが出たでしょう。あの時に私が攻撃していたでしょう?」


 そう言われてみれば……あの時も矢がなかった。

 ミーレが言うには……ミーレは風属性のウインドアローだ。だが、リヒトは魔力をそのまま矢にして飛ばすマジックアロー。普通はそんなに威力はないらしいが、リヒトは込める魔力を調整できるらしく威力も思うままに変えられるそうだ。

 スゲー、見てみたい。と、ハルの目が輝き出した。男の子だ。でも、それって弓は必要なのか? 突っ込むのはやめておこう。


「駄目よ。敵じゃないと言っても危険だわ」

「みーりぇ、分かってりゅ」


 仕方ないといった様子で、パスタを食べるハル。


「ピルルル」

「うん、おとなしくしてりゅ」

「ピルルル」


 おや、コハルにも注意されたらしい。


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