250ー勢揃い
翌日、朝から長老の転移で4層にあるニークの家へと向かった。
「ニーク! 元気だった!?」
「アヴィー先生!」
アヴィー先生とニーク、2人が感動の再会だ。
「あれ? 今回は多人数ですね?」
「そうなの。私の教え子で、ベースの管理者よ」
感動と言う程ではなかったらしい。アヴィー先生が紹介をする。
「ベースのですか? じゃあ最強の?」
「そうよ。リレイと従者のアラン。ソニルと従者のコニーよ」
「はじめまして、ニークです。お会いできて光栄です! エルフの最強の3人にお会いできるなんて! 感動です!」
そっちの方が感動だったらしい。まるでヒーローに出会ったかの様に、ニークの目がキラキラしている。
「ニーク、俺の時とえらい違うじゃねーか」
「だってあの時はリヒトさんが最強の5戦士の1人なんて知らなかったんですよ」
「俺も最強だぜ?」
「はい! もちろんです!」
そうそう。リヒトも最強と言われる5人の戦士の1人なんだよ。忘れがちだけ。
元、アヴィー先生の小ぢんまりした家にエルフが何人も。狭くないか?
「で、今回はアンデッドですよね?」
「そうだ、ニーク。4層はまだ出てないか?」
「はい、長老。まだですね。でも、いつ出るかと皆不安がっていますよ。噂は聞きますから」
「人の口には戸は立てられぬやな」
「アハハハ、カエデちゃん。その通りだよ」
「けろ、にーくしゃんはポーション作りぇりゅんらろ?」
「作れますが、俺だけ作れても追いつかないでしょう?」
「しょっか」
「ハルくん、相変わらず可愛いね」
「ふふん。ありがちょ」
おや、ハルちゃん。まんざらでもなさそうだ。
「君がアヴィー先生の愛弟子かぁ。よろしくね」
「よろしく。世話になる」
「はい! こちらこそ!」
ソニルやリレイとも仲良くなれそうだ。ニークは1人になってから逞しくなったか? 初めてリヒト達が来た時には遠慮して躊躇っていたのに。今は堂々としたもんだ。それとも単純に、エルフに慣れたか?
「ねぇ、長老。ニークには話してもいいわよね?」
「ああ、そうだな」
「実はね、ニーク」
「何ですか?」
アヴィー先生が現状分かっている事を説明した。
どうやら、アンデッドは人為的なものだろうと言う事。
それも、毒クラゲ事件と同じ犯人だろうと言う事。
そして、約2000年前にヒューマン族によって絶滅させられたハイヒューマンの生き残りが犯人だろうと言う事をだ。
「そんな……ハイヒューマンなんて……!?」
ニークは信じられないのだろう。言葉が続かないでいる。
「どうやら、そうらしい」
「リヒトさん、俺達の中では、ハイヒューマンなんて昔話……いや、伝説ですよ。でも、ヒューマンではエルフに太刀打ちできませんから」
「そう。俺達に気付かれない様に様子を探るなんて、ヒューマン族には絶対にできない事だ」
「それが本当なら……俺達ヒューマン族を恨んでいる、て事ですよね?」
「そうだろうな。だが、ニーク。ヒューマン族と言っても皆同じではないだろう?」
「長老、そうですが……でも、中央にいる貴族の人達はヒューマン至上主義ですから」
「ああ、そうだな」
「でも、今犠牲になっているのは、そんな事を考える暇もない庶民ばかりです。ハイヒューマンにとってはそんな事は関係ないのでしょうが」
「毒クラゲ事件からワシ達をつけているらしい。それで分かって欲しいのだ。ヒューマンだって色々だとな。実際、ワシ達が会ったヒューマンは皆好意的だった」
「長老、そりゃそうですよ! 態々助けに来て下さっているのですから! 中央にいる貴族達も1度被害にあってみればいいんですよ」
「アハハハ、そりゃそうだ。ヒューマンだエルフだと言ってられなくなるわな」
「ねえ、長老。4層の入り口を見張らなくてもいいの?」
「ああ、ソニル。そうだった。ノルテとシアルに連絡してみるか」
長老がパーピを飛ばした。
「あれですね、パーピですよね?」
「そうだ。ニークには見えないだろう?」
「はい、全く。気配さえ分かりません」
「そっか。ヒューマンて不便なんだね」
「ソニルさんて……」
「何?」
「いえ、華奢で可愛くて最強には見えないなぁと。すみません、失礼ですね」
「ニーク、こいつはこう見えて1番強いんだ」
「え……!? リヒトさん、マジですか!?」
「大マジだ。最強の中の最強だ」
「凄い!!」
「へへん。そうなんだよ。僕、実は強いんだ」
「そうだな」
「そう見えねーけどな」
「ね、見えないわね」
「しょうらな、見えねー」
「そうやんな。いい人やし」
「何? みんなどう言う意味だよ?」
「しょにりゅしゃんは、キュートなんら」
「え、キュートはハルちゃんだよぅ!」
また、ハルに抱きつくソニル。いい加減にしないと、ハルちゃんパンチが飛んでくるぞ。
「よし、じゃあ手分けして門を見張ろう」
長老の指示で其々が出掛けて行く。
「何かあったら直ぐにパーピを飛ばすんだぞ。1人で無理はするな」
「分かったよ、長老」
「了解だ」
5層から4層に入る為の門に其々が配置についた。東西南北にある4箇所の全ての門に見張りが付いた。
朝から夜まで。開門されてから、閉門されるまで交代で見張った。しかし、それらしき人物は門を通らなかった。それらしき黒マントの男を見つけられなかった。
そして、発見できないままとうとう4層目でもアンデッドが出現した。
「なんで? 通らなかったよね!?」
ニークの家に全員集合だ。最強の5戦士が揃っている。また人数が増えた。1部屋には入りきれなくて、隣りの部屋との仕切りを外している。
「カエデ、こっちはもう出して下さい」
「はいにゃ」
ルシカとカエデが慌ただしく夕食を用意している。人数が増えた分、大変だ。ハルはもうハル専用の椅子にちょこんと座って出てくるのを待っている。
「ハル! 久しぶりだな!」
「あい! しありゅしゃん!」
「おう。相変わらず可愛いなぁ!」
そう言いながら、ハルの髪をくしゃくしゃと撫でるシアル。
「ちょっとぉ、シアル。ハルちゃんの隣りは僕だよ」
「いや、何でだよ」
「駄目よ。ハルの隣りは私に決まっているから」
「ミーレ、もう座ってんのかよ」
「私もハルちゃんの隣りよ」
「あー、アヴィー先生には対抗できねーな」
わちゃわちゃと、訳が分からなくなってきている。なんせ人数が多すぎる。
リヒト達いつものメンバーに加えて、北にあるベースの管理者で、兄貴肌のノルテ・テントーリオ。
北西にあるベースの管理者で、豪快なリレイ・グリーエン。
南西にあるベースの管理者で、1番ガタイのいいシアル・カピターノ。
南東にあるベースの管理者で、キュートなのに最強のソニル・メリーディ。
そして、北東にあるベースの管理者で僕らのヒーロー、リヒト・シュテラリールだ。
エルフ族最強の5戦士が勢揃いだ。其々の従者もいるからニークの家が手狭になっている。食事の用意も大変だ。
「凄い……感動だ!」
「にーくしゃん?」
「だってハルちゃん、最強の5人だよ! 勢揃いだよ!」
「しょうらな」
「凄いよ! もうこんな機会はないよ!」
「しょうかもな」
「ね、ハルちゃん。まだ食べないの?」
「しゅしゅ、まらら。もうちょっと我慢ら」
ハルとシュシュはそれよりも食い気だ。
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