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25ー街へ 1

「やはりスプーンが大き過ぎたのですね。頼んでおいて良かったです」

「りゅしかが頼んでくりぇたのか?」

「大人が使っている物は、小さなハルの手には合っていなかったでしょう? だから食べ難いのだろうと思っていたのですよ」

「りゅしか! しゅごいな!」

「アハハハ、そうですか?」

「うん! しゅごい! 大きすぎで重くて大変らったんら。こりぇ作ってもりゃってめちゃ食べやしゅくなったんら!」

「それは良かったです。ハルは上手に食べますね。殆どこぼさないですし。大きさが合っていればお顔も汚さないみたいですね」

「ちゅかいやしゅいんら。おりぇの口にちょうろいい」

「ハルって、何か大人びてるわよね。食べ方も上品だし」


 だってハルは本当は20歳だからな。こっちの世界に来た事で幼児になってしまったが。


「おりぇの母親がうりゅさかった」

「食べ方?」

「ううん、みーりぇ。じぇんぶ」

「全部?」

「ん、じぇんぶ。何もかも……」

「そう……」

「でも、ハルの身についている事は良い事ですよ。マナーが悪いよりは良い方がいいですからね」

「りゅしか、おりぇの身にちゅいてりゅ?」

「ええ。小さいのに、どこに出ても恥ずかしくないですよ」

「しょっか……」


 複雑な顔をするハル。


「どこまで煩く躾けるかは別の話ですけどね。少なくとも、ハルがその様な顔をするようならやり過ぎだと私は思います。でも、それとは関係なくハルの身についている事は胸を張って良い事です」


 ルシカがハルに微笑む。ハルはルシカが言ってくれた事で少し胸が軽くなった様だ。

 ただただ我慢して言われる通りにしてきた事でも無駄ではなかったんだ。ハルの身についている、胸を張っていいと認めてもらえた。


「りゅしか、ありがちょ。やっぱりゅしかは頼りになりゅな! りゅしかがいないとりひとはらめらめら」

「アハハハ、そうですか?」


 ハルは昨日の夕食での事を話した。リヒトの母に頼みたい事も忘れていたと。


「まあ、リヒト様ですからね。そんな感じですよ、ハル」

「ねえ、ハル。今日は街に行きましょうか?」

 

 おっと、いきなり話が飛んだぞ。


「みーりぇ、行きたい!」

「でしょう? 食べたら行きましょう」

「うん!」


 ちょっと楽しみなハル。エルフの国だ。こっちの世界に来て初めての国だ。


「私も行きますよ。ミーレだけだと不安ですからね」

「なに、ルシカ。どういう意味よ」

「そのままです。それに、ハルはまだ小さいですからね」


 まあ、幼児だからな。ハルもルシカがいる方が安心だろう。


 さて、食事も終えてさぁ街へ。


「ハル、そのままだとダメよ。これ着なきゃ」


 ミーレがハルに着せる。フード付きのケープマントだ。


「はい、フード被って」

「みーりぇ、じゃまら」

「ダメよ。ハルの髪色は珍しい色だから。それに可愛すぎるのよ」


 意味不明……て、顔のハル。


「ハル、ちゃんと自覚しなきゃ危ないわ。ハルはね、可愛いの。みんな寄ってきちゃうわ」


 なんだそれ? て、顔のハル。


「昨日のリヒト様のご家族の反応で分かるでしょう? エルフはね、小さな子供には構いたいのよ」


 ああ……あれか。て、顔のハル。


「ハル、ミーレ。馬車の用意ができましたよ」


 なんだと? 馬車だと?


「さあ、行きましょう」

「みーりぇ、馬車? 街まで遠いのか?」

「遠くはないわ。でも、馬車は必要よ」

「馬か、ありゅいてじゃないのか?」

「そうね、街中であの馬は乗れないわね。目立っちゃうわ」


 なるほど……そりゃ目立つだろう。ユニコーンだから。


「皇族かガーディアンしかあの馬は乗らないのよ。変に目立たない方が良いでしょう?」


 なるほどなるほど。またしても皇族か……だが、馬車を引いている馬は普通だぞ。その馬に乗れば良いのでは?


「ルシカ、ミーレ、街までか?」

「そうよ、お願いね」

「了解ッスよ。あ、俺イオス。宜しくな」

「おりぇ、はりゅ」

「おう、ハル!」


 イオスにガシガシと頭を撫でられる。御者をするらしい。誰かに似ている。

 ルシカとミーレと一緒に馬車へ乗る。


「りゅしか、いおしゅ誰かに似てりゅ」

「執事のロムスさんの息子ですよ」


 あぁ〜、似てる似てる。て、事はハイダークエルフか。ダークブルーブロンドの髪もダークブルーの瞳もロムスと同じだ。


「イオスは小さい頃はヤンチャで、よくロムスさんに叱られていたのですよ。今はすっかり執事見習いになって落ち着いてますけどね」

「りゅしかと歳近いのか?」

「そうですね。3歳しか変わりません。珍しい事なんですよ」

「なんれ?」

「エルフは子供が少ないですから。リヒト様とミーレも3歳差ですが、3歳違いなんてめったにいません」


 ほぉ〜。ハルの前世の弟は3歳下だった。懐かしくもなんともない。それだけ縁が薄かったのか。もう前世の事だと、ハルは少しずつ思えるようになっていた。


 馬車が邸を出て街に向かう。馬車の窓から外を見るハル。

 白っぽい壁に淡い水色の屋根。御伽噺の世界の様な景色。街と言っても木と木の間に道があり、木に寄り添うように家がある。あくまでも森が主役と言う感じだ。木の伐採を最低限にしているのだろう。この大森林を守るエルフ族らしい街だ。


「ハル、ほらあの屋根がお城よ」


 ミーレが指す方を見る。

 来る時に飛んでいるユニコーンから見た丸いとんがった屋根が見える。


「ありぇ、泉の中にどうやって建てたんらろ……」

「ね、私にも分からないわ」

「ミーレ、習ったでしょう?」

「ルシカ、そうだった?」


 どうやら、勉強もミーレよりルシカの方が出来るらしい。料理だけじゃない様だ。


「あら、ハル。私は普通よ。ハイエルフの記憶力が凄いのよ」


 そうか? と、思っているとルシカがため息を吐きながら小さく首を横に振っている。どうやら、そんな事はないらしい。


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