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245ー魔石発見

「コハル、もう触ってもいいか?」

「平気なのれす! もう唯の魔石なのれす!」


 イオスが魔石を拾う。


「イオス、それちょっと匂わせてちょうだい」

「ああ」


 イオスがシュシュの鼻先へと魔石を持ってくる。


「やだ、イオスったらいい匂い」

「バカ、俺はいいんだよ!」

「あら、照れてるの?」


 馬鹿な事を言いながら、シュシュがクンクンと匂いを嗅ぐ。


「やっぱりそうだわ。あの毒の匂いだわ」

「じゃあ、まだ毒を持ってんのか?」

「そうかも知れないわ。毒と言うか毒クラゲをね」

「そりゃまた面倒だな」

「長老、そうよね」


 そんな事を話しながら皆は街へと戻って行った。距離をとって陰から誰かが見ている事にも気が付かずに。



 ――あ、エルフの兄さん達! どうなってんだ?

 ――突然、アンデッドが消えたんだ!


「ああ、もう出ないぞ」


 ――兄さん達が何かしてくれたんだろう?


「元を浄化したから、もう大丈夫だ」


 ――そうか! ありがとうよ!

 ――助かった!


 街にあれほど出て来ていたアンデッドが消えていなくなっていた。コハルの言った通りだった。


 ――てか、兄さんよ。そのデカイ虎……


「あ!」

「やだ! 忘れてたわ!」

「しゅしゅー……」

「ハルちゃんだって乗ったままじゃない!」

「あーあ」

「やだ、ハルちゃん! どうしよう!?」


 シュシュが元の大きさのまま、ハルを背中に乗せて堂々と歩いて来たものだから、冒険者達は距離を取って引いて見ている。


「アハハハ! まあ、シュシュ。仕方あるまい」

「長老、笑い事かしら?」

「まさかワシらがいるのに捕らえようとはせんだろうよ」

「あら、そうかしら?」

「まあ、怖がらなくても大丈夫だ。この虎は聖獣なんだ」


 ――初めて見たぜ

 ――聖獣だってよ

 ――スゲーな

 ――ちびっ子が乗ってるよ


「シュシュ、さっさと戻るぞ」

「そうね、そうよね」


 そそくさと、リヒト達は領主邸へと戻って行った。が、そこでもまた……


「……!!」


 帰りを待っていた領主が元の大きさのままのシュシュを見て固まっている。


「あー、領主殿すんません。実は、シュシュと言って聖獣なんです」

「……な、なんと! 聖獣ですか!?」

「はい、ハルと俺に加護を与えてくれています」

「本当に聖獣がいるのですね……伝説かと思っておりました」

「アハハハ、シュシュ。お前、伝説なんだってよ」

「やめてよ、リヒト。あたし達はヒューマンの前に姿を現さないだけよ」

「話せるのですか!?」

「当たり前じゃない。聖獣なのよ」

「なんと、神々しい……!」

「でしょう? 崇めなさい!」

「しゅしゅ、やめりぇ」

「ハルちゃん、だってヒューマンは直ぐに捕まえに来るから」

「それは恐れ多い! とんでもない事です! お目にかかれて光栄です!」


 光栄なんだってよ。それよりも、ハルがもう限界らしい。


「あー、ミーレ姉さん。もうハルちゃんフラフラやわ」

「あら。ハル、抱っこしましょう」

「ん、みーりぇ」


 ミーレに抱っこされて背中をトントンとされると、途端に電池が切れた様にコックリと寝だした。


「ハルを寝かせてきます」

「ミーレ、あたしも行くわ」


 ミーレとシュシュが部屋へと移動して行く。


「あの聖獣は雌なのですね」

「いや、あれでも雄だ」

「なんと……聖獣とは不思議なものです」


 不思議なのではなく……聖獣だからなのではなく……シュシュだからなのだが。

 この街でのアンデッド討伐は無事に終わった。だが、次だ。次の街に行かなければならない。こうして6層と5層全域の墓地を回るとすれば、一体どれだけの日数が掛かるだろう。


 さて、翌日。皆で作戦会議らしき事になっている。


「長老、どうする?」

「全ての墓地を回る必要はないだろうよ」

「ヒューマンの街に絞ると言う事か?」

「ああ。そうすれば6割程度で済むだろう」


 確かに、全部の墓地を回るよりは数が減る。だが、本当にそれで大丈夫なのだろうか?


「ヒューマン族を狙っているのは明確だ。だが、一体誰があの様な魔石を作ったのかだ」

「かなり魔力がないと無理だよな?」

「リヒト、その通りだ」

「まさか、エルフって事はないよな?」

「エルフがこんな事をする理由がないだろう?」

「ああ。どっちかと言うと関わりたくないからな」

「その通りだ。でだ、アヴィーがリレイと一緒に来る事になった。ノルテとシアルもだ」

「え? のりゅてしゃんとしありゅしゃんにりりぇいしゃん?」

「ハル、そうだ。ノルテ達には5層を北側から、シアルには5層を南から攻めてもらう。リレイはアヴィーと一緒だ」


 おお。ベースの管理者勢揃いだ。と、言う事は、エルフの最強の5戦士が全員出る事になる。


「アヴィーには魔石に込められた魔力を確認してもらう」

「ばーちゃん、危なくねー?」

「ハル、大丈夫だ。ずっとワシ等と一緒だからな。リレイもいる」

「しょりぇなりゃいい」


 アヴィー先生を1人にすると何を仕出かすか分からないからな。無鉄砲なアヴィー先生だ。その抑制の為のリレイなのか?


「それとだ。ソニルの方からも魔石が出たそうだ」

「やはりか」

「ああ、決まりだ。誰か分からんがヒューマンを狙っている。なるべく早くソニルと合流したいんだ。もう魔石がある事が分かっているだろう。だから昼間でも墓地に行って魔石を探すぞ」

「おう。分かった」


 それからの行動は早かった。真っ昼間に長老達は墓場で魔石を探す。幸いコハルが大きな戦力となって直ぐに見つける事ができた。そして、リヒトが魔石を浄化する。

 しかし、それだけではない。立ち寄った街に毒や麻痺、精神攻撃を受けた者がいれば回復させる。そして、ポーションを配る。対アンデッドの戦い方を教える。

 どの街でもヒューマンは、対アンデッドの戦い方を全く知らなかった。今まで聖水頼りで戦ってきたらしい。今や聖水も教会が出し渋っているのでアテにはならない。

 そんな事を繰り返しながら進んでいると、途中でアヴィー先生とリレイが合流してきた。


イオスは良い匂いがするらしい。

誤字報告、ありがとうございます。

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