表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

239/296

239ー面倒事

「いくじょ! 正拳突き! かぁりゃぁの〜裏拳! ちょじょめの〜必殺アッパー!」

「うぉッ!」

「アハハハ! ハル、何だそれ!」

「いおしゅ、必殺技ら!」

「ハルちゃん、剣無しでも強いやん!」

「カエデ、何言ってんだよ。ハルはずっと剣持ってなかっただろうが」

「そうやったわ、忘れてた。恐るべし3歳児やわ」


 今日はやらないと言っていたのに、結局カエデと対戦していたハル。今日は、剣を使わずに体術らしい。張り切って必殺技らしい技を披露していた。


「しかし、ハルは小さいのによくそんだけ動けるなぁ」

「ふふん」


 両手を腰に当ててドヤっているハルちゃん。胸を張っているんだか、お腹を出しているんだか分からない。


「ハルちゃん、可愛いぃ!」

「最近、ちょっとお腹がポッコリしてきたけどね」

「みーりぇ、こりぇは幼児体型なんら!」

「あら、そうかしら?」

「ハルちゃんは、そのままで良いわよ。相変わらず可愛いわ!」

「シュシュはハル贔屓だからなぁ」

「ハルちゃん、必殺技教えて! からの〜って自分もやりたい! 教えて〜!」

「おう、いいじょー!」


 賑やかだ。やはりネコ科が揃うと賑やかになる。訓練になっているのか? 邪魔になってないか?


「また裏にいたのか」

「あ、じーちゃん! 久しぶりらな!」


 長老がやって来ると、ハルがトコトコと駆けて行きポフンと長老に抱きついた。長老はそのままハルを抱き上げる。


「おう。ちょっとバタバタしたからな」

「いしょがしいのか?」

「まあな。リヒトは?」

「リヒト様なら医務室だと思いますよ」

「なんだ、ミーレ。リヒトがどうかしたのか?」

「いえ。ヒューマンの冒険者です。薬草採取のクエストで森に入ってウルフ種に襲われたそうです」

「ヒューマンがか?」

「はい。薬草採取に夢中になっていたのだそうですよ。大した怪我はしていません。今は食事をしているそうです」

「なんだそれは。危ないなぁ」

「ほんとッスね。けど、薬草採取が増えてますね」

「イオス、それなんだ」

「ああ、やっぱそうッスか」

「ああ」

「はろーけんッ!」


 ――ピュゥ〜……ポン!


「うぎゃー! ハルちゃん反則やわ!」


 またハルが、カエデ相手に何かしている。何処かで聞いた事のある技名だ。


「はろーけんッ!」


 ――ピュゥ〜……ポン!


「アハハハ! ハルちゃん、何これ。痛くないで、くすぐったいにゃん!」

「アハハハ! はろーけん!」


 ――ピュゥ〜……ポン!


「アハハハ! ハル、何だそれは!?」

「アハハハ! じーちゃん、はろーけんら!」

「意味が分からん! カエデ、痛くないのか?」

「アヒャヒャ! 長老、くすぐったいねん! アヒャヒャヒャ!」


 ハルが『はろーけん』と言っているのは、超有名なあの波◯拳だ。あのポーズをとって、手のひらからピュゥ〜と何かを出している。カエデも最初は避けていたが、当たっても痛くないらしい。

 

「ハルちゃん、何で痛くないん?」

「らって痛いの嫌らろ? あぶねーし」

「ハルは、面白い事を思いつくなぁ」

「じーちゃん、肩こりにいいじょ」

「そうか? 肩こりか!? アハハハ!」

「ハルちゃん、教えて! 波◯拳教えてー!」

「いいじょー! まじゅはぽーじゅら!」

「えー! そこからなん!?」

「当たり前ら! 手はこう! 足はこう! れ、ん〜って魔力を集めてぇ、はろーけん!」


 ――ピュゥ〜……ポン!


「アハハハ! ハルちゃんめちゃ可愛い!」

「かえれ、マスターしゅりゅんら!」

「はい! ハルちゃん師匠!」

「ん!」

「アハハハ! 何をやっとるんだ」

「はろーけんッ!」


 ――ピュゥ〜……ポポン!



 その頃、リヒトとルシカは……医務室から出てリヒトの執務室へと向かっていた。


「リヒト様、どうします?」

「どうするも何もなぁ。まあ、馬が戻ってきて荷物も無事なんだし。国に戻ってもらえばいいんじゃねーか?」

「それはそうですが」

「なんだ? ルシカ」

「いえ、また面倒な事にならなければ良いのですが……」

「あー、まあ……。考えんな。考えたら引き寄せてしまいそうだ」

「クフフフ、引き寄せるですか?」

「ああ。嫌な事は考えない!」

「嫌な事なんですね」

「面倒だろうよ」

「確かに」


 その面倒がもうやって来ているかも知れない。曽孫へ会いに、裏庭にさ。ほら、角を曲がると出会うかも知れない。


「おう、リヒト」

「げげッ!」

「長老」

「なんだ? 2人共」

「長老はいつも面倒を運んでくるからなぁ」

「今、話していたところなんですよ。面倒を引き寄せるのは止めようと」

「アハハハ。引き寄せるか。すまんな、面倒が態々やってきたぞ」

「マジかよ。またかよ」

「アンスティノスですよね?」

「ああ。ルシカの言う通りだ」

「アンデッドかよ」

「その通りだな」

「マジかよぉ……超面倒だ」

「まあ、そう言わずに。ほれ、リヒトの執務室に行こう」

「おりぇも行くじょ! はろーけんッ!」


 ――ピュゥ〜……ポン!


「プハハハ! ハル、何だこれ!? こそばゆいな! ムズムズするぞ」

「ひっさちゅわじゃら!」

「あ、あかんわ。ハルちゃんちょっと寝よか?」

「平気ら」

「なんだ? 今日はまだ昼寝してないのか?」

「そうやねん。昼食べてからずっとウロウロしてるねん。最近、ずっとシュシュに乗ってるから疲れへんねん」

「ハル、いらっしゃい」

「みーりぇ、平気りゃって」

「駄目よ。後でちゃんと教えてあげるから」

「しょう?」

「そうよ」

「ん、みーりぇ」


 と、ミーレに両手を伸ばすハル。ヒョイと抱き上げられ背中をトントンとされる。


「寝かせてきますね。シュシュ、行きましょう」

「ええ、あたしはハルちゃんといるわね」

「長老、お茶入れるわ」

「おう、カエデ。ありがとう」

「カエデ、皆さんに入れて下さい」

「はいにゃ、ルシカ兄さん」


 カエデはもう慣れたものだ。手に迷いや戸惑いもなくスムーズにお茶を入れていく。そして、皆にお茶を出す。お茶を出す動作も堂々としたものだ。


「カエデ、うまいなぁ。ありがとうよ」

「はいにゃ、長老」

「で、だな。リヒト」

「ああ、アンデッドだな」

「あ、あんでっど!?」

「カエデは見た事ないか?」

「ないなぁ。墓場は近付けへんもん。用事ないし」

「墓場じゃなくてな、街の中に出るんだそうだ」

「あ、イオス兄さん。この事か?」

「ああ、そうだ。最近、ヒューマンの冒険者がやたらと薬草採取で森に入っていたからな」

「イオス、そうなんだ。ニークに聞いたら確かに不足しているそうだ。だが、ニークがいるのは4層目だ。まだ薬草が不足している訳ではないそうだ。で、4層はまだ出ていないらしい」

「また、5層と6層か……」


 長老はやはり薬草の件もアンデッドの件も掴んでいた。これが、リヒトが言っていた面倒な事になるのだろう。


読んで頂きありがとうございます!

いいね、して下さる方々本当にありがとうございます。

よろしければ、評価もお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく拝読しています。 [気になる点] カエデの「波○拳」がふせれてないですよw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ