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23ーリヒトの家族 3

「ふゅぅ~、りひと気持ちいいな。木のいい匂いがしゅりゅ」

「だろう、ベースの風呂もいいけど、こっちの風呂もいいだろ」

「うん、さいこーら」

「ハル、そろそろあがるぞ」

「ん」


 ハルとリヒトだけでなく、父と兄もあがってくる。2人はハルの世話を焼きたくて仕方ないらしい。

 ハルはリヒトにされるがまま身体を拭かれている。頭をガシガシと拭いて……前拭いて……はい、お手々あげて……後ろ向いて……オートモードだ。最後にドライの魔法で髪もサラサラに乾く。最初からドライすればいいのでは?


「ハル、母様がハルの服を出してくれたぞ」

「え、とうしゃま。わりゅいよ」

「悪くない。当然だ。新しいのを着なさい。母様も喜ぶさ」

「ん、りひと……」

「ああ、気にすんな。着ればいいよ」


 リヒトに言われて新しい服を着ようとするハル。


「ハル、兄様が着せてあげよう」

「何? 父様が着せてあげよう」

「あーもう、2人共いいから。俺が着せます」


 さっさとリヒトに着せられるハル。

 なんなんだ? ちょっと戸惑うハル。


「ハル、すまん。父上も兄上もハルを構いたくて仕方ないんだ。ちびっ子は珍しいから。それに、ハルは可愛いしな」


 ふう~ん……て、顔のハル。てか、リヒト。やっぱ編み込みがとれてるよね。エルフっぽいサラサラストレートの髪になっている。


「おりぇ、迷惑かけてねー?」

「何言ってんだ。喜んでんだよ」

「しょっか……」


 4人で食堂へと歩いて行く。その間も抱っこしようか、手を繋ごうかと煩い父と兄。リヒトはスルーだ。ハルを片手で抱っこしてスタスタと歩いている。

 食堂に入ると夕食の用意ができていた。

 大きなテーブルに、所狭しと並べられたご馳走の数々。


「ありぇ、りゅしかとみーりぇは?」

「あいつらは別で食べてるさ」

「べちゅべちゅなのか?」

「ああ、ベースでは手の空いた者から順に食べているけどな。ここでは2人はうちの従者と侍女だからな」


 そっか。別々なのか。と、ハルが思っていると急に抱き上げられた。


「ハル用の椅子だ」

 

 普通の椅子より座面が高くなった子供用の椅子に座らされた。


「りひと、ありがちょ」

「おう。ハル用のナイフとフォークもあるぞ」

「え、ほんちょに?」

「ああ。食べにくそうだったからな。作ってもらったんだ」

「しゅげー! うりぇしい!」


 ハルは自分の前に並べられた小さなナイフとフォーク、それにスプーンを嬉しそうに見る。


「気に入ったかな?」

「とーしゃま、ありがちょ。大っきくて重くて食べにくかったんら」

「そうかそうか。予備も作ってあるからベースに持って行くといい」

「ありがちょ! うりぇしい!」

「そうかそうか! ハルは可愛いな! さ、食べなさい。遠慮せずに沢山食べるんだぞ」

「うん! とーしゃまありがちょ! いたらきましゅ!」


 ハルは嬉しそうに食べ出した。

 いつもの様に、大きな口を開けてハムっと食べる。


「ウマウマら! とーしゃま、めちゃ使いやしゅい!」

「良かった! リヒト、作って良かったな!」

「ハルちゃんは美味しそうに食べるわね」

「かーしゃま、らってしゅごく美味しい!」

「そう、慌てずにね。よぉく噛んで食べるのよ。沢山食べて大きくならなきゃね」

「うん!」


 ハルはモグモグとお口を動かして食べる。やはり、ナイフとフォークが大きすぎたのだろう。器用に上手に食べている。


「ハル、コハルはいいのか?」

「りひと、出してもいいのか?」

「何言ってんだ。もちろんだよ。コハルも食べたいだろう?」

「ハル、遠慮しちゃダメ。この家ではハルは自由なのよ。何でも父様と母様に相談してくれればいいのよ」

「かーしゃま、ありがちょ。うりぇしい! こはりゅ」

「ピルルル」

「食べな、美味いじょ」


 ハルにとってはリヒトの母の言葉は嬉しいのだろう。前世の経験から、母親と言う存在が苦手だったハルにとっては何より嬉しい事だろう。

 この世界に来たばかりのハルだったら、まだ油断できないと警戒していたかも知れない。だが、リヒト達とベースで過ごした少しの間にハルの心は少しずつ癒されていたらしい。

 リヒトの母の言葉を素直に受け止めて喜んでいる。これは、かなりの進歩だ。


「りひと、かーしゃまに頼んれもいいか?」

「ん? 何だっけか?」


 リヒト、覚えてないのか? と、ハルが顔で語っている。


「え……なんだっけか? 待てよ、思い出すから」


 ルシカがいないと使えねーとハルはちょっぴり思った……かも知れない。


「ハル、お前顔に出てるからな」


 いや、忘れているリヒトが悪い。


「ああ、あれだ。母上、ハルが勉強したいんだそうですよ」

「まあッ!」


 リヒトの母が嬉しそうに微笑む。


「ハル、そうなの?」

「かーしゃま、おりぇなんもしりゃねーんら。らから、いりょんな事を知りたいんら。まら、魔法も使えねーし」

「あらあらあら! なんてお利口さんなんでしょう! お母様、感動しちゃったわ! ハル、いいわよ。私が知ってる事ならなんでも教えてあげるわ!」

「ほんちょか!? ありがちょ!」


 またハルは嬉しそうに食べだす。

 コハルもハルにもらってほっぺを膨らませながら食べている。


「次からはコハルちゃんの分も用意しなきゃね」

「かーしゃま、ありがちょ」

「ピルルル」


 ああ、可愛い。こんな可愛い生き物がいるのか。と、でも思っていそうなリヒトの家族の表情。


「マジ、ちょっと引くぞ」

「リヒト、何言ってんの。あなただって小さい時はこうして皆に可愛がられて育ったのよ」

「覚えてねーし」

「ハハハハ、リヒトはもっとヤンチャだったな」

「兄上、やめてください」

「にーさまにーさまと後をついて来ていたんだ。可愛かったんだよ」

「りひととにーしゃまは何歳違うんら?」

「ん? 俺と兄上か? んー……153歳か」


 ひゃくごじゅうさん歳!?

 ハルが目をまん丸にして驚いている。


「にーしゃま、378歳!?」

「まあ! ハルは計算が出来るのね! まだ小さいのに凄いわ! 教え甲斐があるわね」


「長老がもう少し落ち着くまでゆっくりするといい。ハル、自分の家だと思って遠慮するんじゃないぞ」


 リヒトの家族の温かい対応にハルの心はまた少しずつ癒えていく事だろう。


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