225ーもふもふ好き
「シロではなく……!?」
「ベタ過ぎるわ! 確かに白いんだけど!」
「ああ、すまない。女王は言葉数が少ないのだ。分かり難いが、これでも感激しているのだ。陸の生物を見る機会はないのでな。しかも、その……女王は、もふもふには目がないのだよ」
ああ、もふもふ好きだったらしい。海中に、もふもふはいないからな。
「うふふ。海の中でもあたしの魅力が溢れ出しているわ」
「会話が……!?」
「はい。コハルもシュシュも聖獣ですので、会話ができます。どちらもハルを守護しております」
「ハルちゃんを……!?」
おや、いきなり初対面でちゃん呼びか?
「こはりゅもしゅしゅも、ともらちれしゅ」
「完璧……!」
そう一言言うと、女王はまた両手で口を抑えてプルプルし出したぞ。今度は涙も溜めてウルウルさせている。大丈夫なのか?
「女王、女王……」
「うぅ……! もふもふとちびっ子!」
「メーレル」
「え? あ……つい」
「すまない。感極まった様だ」
「アハハハ、いやいや。虎もリスも珍しいのでしょう」
「そうなのだ。海中に、もふもふはおりませんからな」
「そりゃそうですな。アハハハ!」
「失礼した。長老殿、此度は無理を申したのに快く引き受けて下さった事感謝致します。我々の力ではびくともしないのだ。大変困っておったのです」
「シェンラ殿から話は伺いました。実際の巨岩を拝見したいのですが見られますかな?」
「もちろんだ。だが、長老殿。今日はお疲れだろう。部屋に案内させるのでゆっくりなさると良い。細やかだが、歓迎の場を設けておる」
「お気遣い頂きありがとうございます」
「長老、ハルはそろそろ眠いだろう? ハルが寝ている間に俺達だけでも見に行きたいが」
「リヒト、そうだな。そうさせて頂いても宜しいかな?」
「忝い。先ずは部屋に案内させよう」
リヒトが言う様に、そろそろハルちゃんはおネムだ。本人は起きていようと頑張っているらしく、目をパチパチさせている。
「ハル、じーちゃんが抱っこしよう」
「ん、じーちゃん」
ハルが両手を出し、長老に抱き上げられる。
「ああ……!!」
なんだ? また感極まったか?
「これ、メーレル」
「天使……!」
「ああ、確かに。天使の様だ。いや、精霊か?」
「正に精霊……!」
もふもふ好きで、ちびっ子好き。可愛いものが好きなのだろう。精霊……いるのだよ。海の中にも沢山いるのだ。
「ハル、我慢せずに寝なさい」
「じーちゃん、けろ……」
「起きたらゆっくり見学させてもらうといい」
「しょうか?」
「ああ」
「ん、わかっちゃ」
ハルは長老に身体を預けた。もう眠くて限界なのだろう。幼児は時々、電池が切れた様に急にコテンと眠り出す。ハルも例外ではない。
部屋に案内される間にスヤスヤと寝息を立て出している。コハルも亜空間に入って行った。
「あたしはハルちゃんと一緒にいるわ」
「おう、俺達は見に行ってくるよ。気になるからな」
「リヒト、頼んだ」
「ああ。ルシカ、イオスも行けるか?」
「はい」
「了解ッス」
ルシカとイオスを連れてリヒトは例の飛んできた巨岩を見に行くらしい。
さて、どんな岩なのか?
「ハルちゃん、はしゃいでいたから疲れたのね」
「そうだな。ハルは本当に好奇心旺盛だな」
「ふふふ。誰に似たのかしら?」
「そりゃあ、アヴィーだろう?」
「あら、長老もよ」
「まあ、ワシらの曽孫だからな」
「ええ。大事な曽孫ね」
「ああ」
シュシュにくっついて寝るハルの寝顔を見ながら、長老とアヴィー先生が話している。
シュシュがベッドの大半を占領している。ハルは上手くシュシュのお腹辺りに小さく丸くなって寝ている。シュシュ、マジでデカイ。
「シュシュ、本当に大きいわね」
「確かにな。シュシュの為のベッドになっとるな。アハハハ」
「ハルちゃんが、シュシュの赤ちゃんみたいになってるわ。ふふふ」
「それにしても……」
「なぁに?」
「どんな巨岩なのかだ」
「そうね……しかも巨岩の根元にマグマが接着剤の様に固まっているのでしょう?」
「らしいな」
「周りに民家はないらしいわよ」
「だとしても、海流があるだろう。下手な事をしたら被害が出るやも知れん。ハルがな、バインドの応用と言っておった。あと、無限収納か」
「バインドの応用……で、破片を集めると言う事かしら? それとも巨岩を支えるのかしら?」
「さあ、どう考えておるのか」
「最悪、ハルちゃんが言っていた様に無限収納ね」
「ああ。それが1番手っ取り早いかも知れん。幸い、ワシもハルも無限収納を持っているからな」
「そうね。被害の事を考えるとそれが1番良いかしら」
「だが、問題は根元だ」
「マグマね?」
「ああ。まあ、リヒト達が戻ってくるのを待つか」
「そうね」
ハルが言っていた、『バインドの応用』とは? 巨岩をバインドすると言う事なのか? 無限収納は単純だ。巨岩を無限収納に入れてしまうのだろう。
しかし、根元がマグマで固定されていると言う。一体どうなっているのか。
「……ん〜……おきちゃじょ……」
「あら、ハルちゃん。起きたのね」
「ん、よく寝たじょ」
「ハルちゃん、おはよーさん」
「かえれ、ありぇ? じーちゃんとばーちゃんは?」
「リヒト様の部屋に集まってるで。ハルちゃんも行く?」
「ん、りゅしかのおやちゅは?」
「きっとルシカが用意してくれてるわよ」
「しゅしゅ、にょしぇちぇ」
「はいはい。ハルちゃんまだしっかり起きてないわね」
「そうやな。カミカミや」
シュシュの背中に乗せてもらい、リヒトの部屋へと行く。
「しゅしゅ、じょうじゅらな」
「でしょぉ〜、楽でいいわ」
「マジな。慣れたらめちゃ楽やわ」
シュシュもカエデも、スィ〜ッと泳いで移動している。海中でも息が出来るネックレスはそれだけでなく、浮力や推進力もあると言う。その為、少しの力で滑らかに進む。シュシュやカエデも殆ど手足を動かしていない。あれだけ不安がっていたカエデまで、ススィーッと進んでいる。
そのシュシュにハルは乗っている。
「超りゃくちんら」
by.ハルちゃん