211ーフィーリス殿下6th
「そっちはどうだったんだ?」
「ああ、時間が掛かるらしい。だから、国に送ってくれるってさ」
「そうか、カエデの新しい服、見たかったなー」
「同じメイド服だぞ?」
「は? リヒト、なんだと?」
「ミーレもカエデも今の服がいいと言ってな」
「マジかよ。色気ねーな。もっとこうさぁ……」
「リレイ様……」
「あ、はい。すんません」
お、ミーレの一睨みで謝ったぞ。ミーレ姉さん、凄いね。リレイは何を期待していたのか?
翌日、一行は揃ってまた親方の工房を訪ねていた。今度はアヴィー先生も一緒だ。リレイとアランの剣を受け取る為だ。
「おう、来たか!」
「親方、出来てるか?」
「おう! しかし何だな! エルフの技術もスゲーな!」
「お、そうか?」
「ああ、リヒトの兄さんが持ってる剣を見た時より良くなってるじゃねーか!」
「それは親方が技術指導してくれたからだ」
「長老、そうかい? そう言って貰えたら嬉しいねー!」
そう、あれから親方は度々エルヒューレの鍛治職人を受け入れてくれていた。リレイの剣はその成果だ。
「おや、また別嬪さんじゃねーか! もしかして、長老の奥方かい?」
「ええ。お世話になってしまって」
「何を言うんだい! 世話んなってんのはこっちだよ! で、剣だがな俺が手を加えるとこは殆どなかったさ。ちょっとバランスを調整してミスリルを追加した程度だ」
リレイが渡された剣を握る。
「お、親方。そう言うが持った感じがもう違うぞ! いいな、これ!」
「ガハハハ! そうかいそうかい! 兄さんはちょっと癖があんだな。それが剣の重心を歪めてたんだ。そこを調整しといた。で、表面のミスリルの焼き付けがちょっと甘かったからな。しっかり焼き付けし直しといた。切れ味が違う筈だぞ!」
「ありがとう!」
「そっちの兄さんもだ」
「はい、ありがとうございます」
「昨日リンがデスマンモールを取りに来たから必要な分を渡しておいたぜ!」
「他の工房とも分けてくれ」
「ああ、長老。任せとけ、ありがとうな! もう帰んのか?」
「我々の仕事は終わったからな」
「そうか。また世話になっちまったな!」
「親方、お互い様だ」
「そうか、長老。そう言ってくれるか!」
「ああ」
「また来いよ! ハルもな!」
「ん、おやかちゃ! 剣めっちゃいいじょ!」
「そうか! 俺が打った剣だからな! アハハハ!」
そして、一行はエルヒューレ皇国に帰って行った。
先ずは城で報告だ。城と言えば……
「ハァールゥー! 待っていたのだぞぉー!」
「ふぃーれんか!」
そう、フィーリス殿下だ。懲りもせず、またハルを抱き上げてクルクル回っている。そんな事をしたらまた……
「とぉ!」
「うッ! 痛いんだぞぅ!」
「らから、ふぃーれんか! 回ったりゃらめらって!」
ハルがシュタッと降りて逆に文句を言っている。相変わらずだ。お決まりだ。
「ハル、遊ぶのだぞぅ!」
「おう!」
また、フィーリス殿下にハルは奪取されシュシュも一緒に中庭へ走って行く。
「ハルは転移が出来るか?」
「短距離なりゃできりゅじょ」
「じゃあ、瞬間移動はできるな?」
「できりゅじょ」
「瞬間移動で鬼ごっこするんだ! 最近ハマってんだぞぅ!」
「おう! シュシュとコハルもやりょう!」
「あたしは負けないわよ!」
「やるなのれす!」
ああ、また何かやろうとしている。このメンバーだと碌な事がないぞぅ。
「シュシュが鬼なのだぞぅ! ハル、コハル、逃げるのだぞぅ!」
「おう!」
「はいなのれす!」
フィーリス殿下とハルやコハルが一斉に瞬間移動を使って逃げる。シュシュがそれを追いかけて瞬間移動する。もう、訳が分からない。
それでも、本人達は楽しいらしく、アハハ、キャハハと盛り上がっている。
「コラッ! またフィーリスか!」
ああ、見つかってしまった。レオーギル殿下だ。
「ハル! 危ないですよ!」
ルシカもいるぞ。お決まりだ。
フィーリス殿下やハル達がレオーギル殿下とルシカの元に集まってきた。
「フィー、瞬間移動で鬼ごっこは危ないと言っただろう?」
「大丈夫なのだぞぅ」
「ハルもですよ、ちゃんと見えてないでしょう?」
「りゅしか、平気らじょ」
「大丈夫よ、本気じゃないもの」
コハルがまた逃げてしまっていない。
「お昼にしましょう」
「りゅしか、腹ぺこ仮面ら!」
「アハハハ。ハル、そうですか」
ハルがシュシュに乗る。シュシュももう慣れたものだ。言われなくてもハルが背に手をやると伏せて乗りやすくしている。
「お昼なのれす!」
おや、コハルがまた出てきてシュシュの背中に乗っている。賑やかだけど、平和な時間だ。
「ツヴェルカーン王国は気持ちが良いな」
「はい、陛下。リレイ達の剣のメンテナンスと、ハルやミーレとカエデの戦闘時の服を頼んだのですが、どちらも金を受け取らんのですよ」
「ほう」
「世話になって素材も貰ったのに金まで貰えんと言うのです」
「アハハハ、なるほどな」
「技術提携もうまく進んでいる様で」
「定期的に鍛治職人を行かせている」
「剣がよくなっていると言っておりました」
「そうか、それは良かった」
「防具も進めたいものです」
「ああ、順次な」
さて、皆で昼食だ。皇帝や皇后、皇子2人も一緒だ。
「ハル、これも食べるんだぞぅ」
「あい、ふぃーれんか」
仲良しの2人だ。
「ちびっ子がいるだけで、賑やかな雰囲気になる」
「ええ、陛下。本当に」
「フィーはちびっ子と変わりませんよ」
「あら、でもハルといる時はちゃんとお兄さんをしているわ」
「そうですね」
フィーリス殿下、普段は一体どうなんだろう?
「2〜3日ゆっくりするといい」
「ありがとうございます。ハルとゆっくりさせてもらいますよ」
「じーちゃん、おやしゅみか?」
「ああ、休みだ。ハル、一緒だぞ」
「ばーちゃんもか?」
「ええ、ハルちゃん一緒よ」
「やっちゃ!」
ハルは曽祖父母には甘えん坊になる。可愛い曽孫だ。