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204ーモグラの魔物

「リヒト! いるか!」

「おう、長老。どうしたんだ?」


 ここは、大森林の北東にあるリヒトが管理者を務めるベースだ。アンスティノス大公国の毒クラゲの毒の解毒と浄化を終えて戻ってきていた。皆日常に戻っている。

 リヒトがルシカと執務室で書類仕事をしていたところに、長老が転移で慌てた様子でやってきた。


「ツヴェルカーン王国でデスマンモールが出た! しかも群れだ!」

「なんだって!? で、今はどんな状況なんだ!?」

「被害が出ているらしい。我が国は協定に従い討伐と救済に出る事になった!」


 デスマンモール。体長190〜280センチメートルの巨大なモグラだ。体型は細長く、円筒形。短い防水性のある密な下毛と油質の上毛で被われる。眼は小型で体毛に埋まり、明度はわかるものの、視覚はほとんど発達していない。地中に住んでいる事もあり、視覚よりも触覚と嗅覚が発達している。なかでも、触覚が発達していて、鼻面や尾などにある触毛で物との距離を認識している。

 普段はツヴェルカーン王国の火山地帯にある河川付近の地中に生息している魔物だ。単独で生活し、それぞれの個体が縄張りを形成する。主に昆虫、ミミズなどに加え魚類や両生類などの大型の獲物も捕食し、鉱物まで食べる。


「確か、群れる魔物ではなかったですよね? どうして群れで出たのでしょう?」

「それだがな、ルシカ。群れといっても10頭いるかどうかなのだそうだが、あいつら普段は単独でいるからな。数頭でも群れているのは珍しいし危険だ」

「で、長老。その群れで出た理由は分かってんのか?」

「リヒト、ヒューマンだ」

「ヒューマン? どう関係あるんだ?」

「ヒューマンの冒険者が知らずにデスマンモールの巣穴を破壊したそうだ」 

「意味分からん。なんでそうなるんだ!?」

「鉱石を採取するクエストだったんだそうだ。無闇矢鱈とそこら中を掘ったんだろう。複数の巣を破壊してしまっているらしい。それで群れで出たんだ」

「馬鹿じゃねーのか!?」

「ああ、掘ればいいってもんじゃない。まさか、坑道付近に巣があるとは思わなかったんだろう。だが、被害が出ている。デスマンモールも討伐できていない」

「マジかよ!」

「1度は退けたらしいが、向こうは怒っている状態だ。必ずまた来るぞ。リレイが既に向かっている。リヒトも出てくれ」

「リレイが行ってんなら大丈夫じゃねーのか?」

「討伐と救援だと人数が足らん。あっちのベースも全員出る訳にはいかん。北のノルテが北西を補助してくれる。ここはまたミエークだ。こっちに向かってくれる」

「分かった! 長老、ハルも連れて行くぞ!」

「ああ、いつものメンバーで頼む。準備が出来次第ワシが転移で連れて行く。事が事だからな、一気にツヴェルカーン王国まで行くぞ」

「分かった! ルシカ、ハル達は裏か?」

「はい。イオスとカエデの訓練を見ている筈ですよ」

「リヒト様、私が呼んできます!」


 丁度、ミーレがお茶を持ってやってきていた。


「ミーレ! 頼んだ!」

「ふぅ、ワシはお茶を貰おう」


 ミーレが置いて行ったお茶を、長老が自分で入れている。バタバタしていたらしい。ソファーに座って一息ついている。


「長老、私が入れますよ?」

「いや、ルシカも準備があるだろう? ワシに構わないで準備してくれ」

「そうですか? ではお言葉に甘えて」


 ルシカは1番準備が大変かも知れない。ハルの大好きなおやつの準備が。厨房へ行くのだろう。部屋を出て行った。


「しかし、長老。ヒューマンは色々とやらかしてくれるな」

「ああ。知識のない者が多すぎる」

「確かにな。今回の事も、ちょっと下調べをすれば分かる事だろうよ」

「坑道から外れた場所でも掘ったんだろう。どうして態々坑道を作ってあるか位、分かりそうなもんなんだがな」

「あれだ、無知蒙昧だな」

「なんだ? カエデの影響か?」

「何? 自分が何なん?」


 ミーレに呼ばれて戻ってきたカエデだ。


「カエデ、何でもないぞ。訓練は順調らしいな」


 長老の瞳がゴールドに光った。


「長老、自分な魔力量が増えたんや!」

「ほう……確かに増えておるな。これならマジックアローも問題ないだろう」

「そうやねん! 矢も2本同時に出せる様になってん!」注記:それとも弓を2張り束ねて強力にしたとかかな?


 後ろからイオスが顔を出した。ミーレも一緒に戻ってきてお茶を入れている。


「カエデの上達は早いですね。さすが獣人ですよ。真面目に訓練すれば獣人だってここまでになれるのかと驚きましたよ」

「イオスの教え方も良かったのだろうよ。カエデ、その髪飾りは魔道具か?」

「そうやねん! ハルちゃんが作ってくれてん!」


 カエデが前髪に可愛いお花のピンをとめている。


「カエデ、お茶を出してちょうだい」

「はいな、ミーレ姉さん」

「ハル、上手に作ったな」

「じーちゃん、ほんちょか?」


 シュシュに乗ってハルもやってきた。シュシュの背中にちょこんと器用に乗っている。最近、よくシュシュに乗っている。


「ああ。これなら魔力を持たない者が見るとただの髪飾りにしか見えん。何を付与したんだ?」

「かえれのステータスは防御が甘いんら。らから、物理防御に魔法防御ら。状態異常は前にじーちゃんから、タグにちゅけりゅのをもりゃったかりゃ」

「ほう……」

「けろ、じーちゃんが作ったのみたいに完全防御じゃないんら」

「軽減か?」

「ん、あの花弁1個1個に付与してんらけろ、魔石が小っしゃいかりゃ軽減しか無理らった」

「しかし、それでも役に立つぞ」

「らといいんらけろ」

「ハルちゃん、果実水でいい?」

「ん。かえれ、ありがちょ」

「ねえ、ミーレ。甘いのないのかしら?」

「シュシュ、あなた最近太ったじゃない」

「やだ! 太ったんじゃないのよ! 元に戻ったのよ! 見てよ、この魅惑のナイスバディーを!」

「はいはい。クッキーしかないわよ」

「いいわ! ちょうだい」

「みーりぇ、おりぇもクッキー食べりゅじょ」

「ハル、先にシュシュから降りなさい。ちゃんと椅子に座って手をクリーンしなさい」

「あい」


 ミーレがオカン化している。わちゃわちゃと賑やかだ。リヒトの執務室が休憩室になってしまっている。


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