202ー小話 ハルのお片付け
ある日、ベースにあるハルの部屋。ハルとカエデとシュシュが集まって何やらゴソゴソとしている。
「ハルちゃん何してんの?」
「マジックバッグの中整理してんら」
「ハルちゃん、沢山入ってたのね」
「ん、何が入ってりゅかもう分かりゃん」
そう言いながら、ハルは小さなマジックバッグの中身をどんどん出して行く。ハルのマジックバッグと言うと、いつも腰に着けている小さなポーチだ。
「これなぁに? 唯の枝?」
「あ、しょりぇ! なちゅかしいなぁ」
「ハルちゃん、特別な枝なん? 魔法が強力になるとか?」
「ふちゅーの唯の枝ら。おりぇが、りひとと初めて会った時に持ってた枝ら。入りぇてたんらな」
「へぇ〜」
「ちょうろいい感じなんら」
「何が?」
「持った感じが」
そう言いながらまたマジックバッグに仕舞う。
「え、ハルちゃんまた枝を仕舞っちゃうの?」
「ん、思いれら」
「あら、そう?」
「ハルちゃん、これは何なん?」
「あー、しょりぇはありぇら。ドラゴンの赤ちゃんが苔玉らった時の苔ら」
「ハルちゃん何でも入れてんのね」
「ん、らって思いれら」
「ハルちゃん、これは?」
「しょれは石」
「石?」
「しょう、石。こりぇは、ツヴェルカーン王国の石。こっちは、ドラゴシオン王国の石」
「そう……石ね……いつの間に取ってたのかしら」
「これは? これは何か特別っぽいで」
「しょりぇは葉っぱ」
「え? 唯の葉っぱ? 珍しい薬草じゃなくて?」
「しょう、葉っぱ。大森林の真ん中の葉っぱ。こっちはレッドベアビーがいた木の葉っぱ」
「そう……」
ハルちゃんのマジックバッグはハルの思い出の品が入っている様だ。
「いりょいりょ入りぇてたかりゃ、いっぱいになっちゃって……」
まだまだ出てくる石に枝や葉っぱ。ハルの小さな手で一つずつ確かめてまた仕舞っていく。
「ハルちゃん、また仕舞ったら一緒やで。減らさんなあかんやん」
「いいんら」
「え、いいの?」
「無限収納ありゅかりゃ」
いいのかよ! じゃあ何で整理していたんだ!?
「何が入ってりゅかと思って」
「ハルちゃん、持って歩く必要ないからな。部屋に纏めて置いとこか?」
「しょう?」
「うん、そうやな。それより、ポーションとか薬湯とか入れとこか」
「え、しょう?」
「うん。そうやな」
「れも、かえれ。ポーションなら無限収納にいっぱい入ってりゅじょ」
「え!? そうなん!?」
「ん、ポーションかりゃ毒消しも薬湯もじぇんぶ入ってりゅ」
「じゃあ、ハルちゃん。マジックバッグいるん?」
「ん、思いれら」
どうやら、ハルはマジックバッグにその時に行った場所等の思い出になる品を入れているらしい。
「けど、もう入れへんのやろ?」
「しょうなんら」
「だからな、1回出そか? 手頃な木箱貰ってくるからそこに入れて部屋に置いとこか?」
「しょう?」
「うん、そうやな」
「分かっちゃ」
カエデが木箱を貰いに出て行った。
「それより、ハルちゃん。ドワーフの親方に打ってもらった剣は?」
「しょりぇは無限収納に入ってりゅじょ。大切らからな」
「ハルちゃん、剣帯はいつも着けてるわよね」
「ん、なんかかっちょいいかりゃ」
「で、剣は?」
「無限収納ん中」
おや?
「剣帯は着けているのに、剣は仕舞っているの?」
「ん、あんまちゅかわないし」
「え?」
「ん?」
おやおやぁ?
「ハルちゃん、この箱に入れとこ!」
カエデが木箱を抱えて戻ってきた。
「カエデ、ちょっとそのまま立っててちょうだい」
「うん、何? どうしたん?」
カエデがシュシュに言われた通り、立っている。
「ほら見て、ハルちゃん。カエデは剣帯にちゃんと剣を差しているわ」
「ん。かっちょいい。めいろ服とミスマッチなんがまたかっちょいい」
「ほんま? ハルちゃん、ありがとー!」
「ハルちゃんは?」
「そう言うたら、ハルちゃんいつも剣帯だけやな?」
「らってちょっとかっちょいい」
「ハルちゃん、剣は?」
「無限収納ん中」
「なんで?」
「あんま使わねーし」
「え?」
「もっちゃいねーし」
「ええ?」
「ハルちゃん、剣は使わんと」
「しょう?」
「そらそうやで」
「え、しょう?」
「折角、作ってもらったんやから」
「でしょぉ? そうよね」
「らって、もっちゃいなくねー?」
「いやいや、使わな余計もったいないやん。宝の持ち腐れやん」
「え、しょう?」
「そうやで」
「そうよ」
「けろ、ちゅどーんしゅりゅ時ちょっちじゃまらし」
「え」
「ちゅどーん、て何?」
「シュシュ、あれやん。ハルちゃんが突っ込んで行ってドロップキックするやん」
「ああ、よくやってるわね」
「邪魔なん?」
「ん」
「じゃあハルちゃん剣いらないじゃない」
「いりゅじょ」
「だって、ハルちゃんちゅどーんする時に邪魔なんでしょ?」
「けろいりゅじょ」
「どうして?」
「かっちょいいかりゃ」
「……」
「……」
「え……?」
「ハルちゃん、ちょっとズレてるかも」
「そうやんな」
「カエデやリヒトがいつも剣を差しているでしょう? あれはカッコいいからじゃないのよ」
「そうやな」
「え、しょう?」
「そりゃそうよ」
「知らなかっちゃ……」
「え?」
「ハルちゃん……」
カエデとシュシュが可哀想な子を見る様な目でハルを見ている。
「あれよ、きっとハルちゃんは強いから」
「そうやな」
「剣がなくても魔法があるし」
「うん、そうやんな」
「剣は飾りじゃないもの」
「シュシュの言う通りやな」
「しょう?」
「ハルちゃん、そうやで」
「しょうなのか……!?」
ハルちゃん、大丈夫か? 1度剣を使って、めちゃいい! とか言っていただろうに。
「しょうか……」
と、言いながら1度出した剣をまた無限収納に仕舞っている。
「ハルちゃん、仕舞うの?」
「ん、ちゅかう時に出しゅ」
「そう」
まさかこんな場面で天然が炸裂するとは。ハルちゃん、こんなに天然だとは思わなかった。しっかり者だと思っていたぞ。
もう、好きにしてくれ。と、カエデとシュシュは思っているだろう。