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18ーエルフの国へ 2

「りひと、剣が光ってりゅのはなんれら?」

「ああ、これか。剣に魔力を流してんだ。エルフは大体風属性魔法が得意だ」


 魔法だと。ハルにはまだまだ未知のものだ。エルフ族は魔法に長けている。リヒトが言う様に主に風属性魔法を使う。剣に魔法を付与して威力を上げているんだ。


「そろそろ休憩するか、ルシカ」

「はい、リヒト様。もう少し行ったら川辺へ出る筈です。そこで休憩にしましょう」

「わかった!」


 ルシカが言った通り、暫く走ると川辺に出た。川幅はそうないが流れが急で岩もある。まだここは上流と言った感じだ。流れている川の水が太陽の日に反射してキラキラとしている。

 ユニコーン達が嬉しそうに水を飲んでいる。


「この川はテュクス河と言う河の上流になります。我々の国にあるウルルンの泉から流れ出ているんですよ」

「りゅしか、飲んれも大丈夫?」

「大丈夫ですよ。見てください。透明度が高いでしょう?」


 そうルシカに言われてハルは川に近寄り水面を覗き込む。

 深さはそうないようだが、川底が見える。泳いでいる魚も見える。透明度の高い水面に、小さなハルの顔も写っている。本当に幼児になったんだと今更再認識するハル。


「本当ら。めちゃきれいら」


 ハルは、川の水を小さな両手ですくい飲んでみる。


「ちめたい!」

「アハハハ、冷たかったですか?」

「うん、れも美味い!」

「でしょう? 世界樹のあるウルルンの泉から流れ出ている川ですからね。ウルルンの泉は浄化作用と癒しの作用があるのです。ここまで流れてくる間にエルフや森の獣達にとっては丁度良い具合の濃度になっています。もっと下流にいく頃にはヒューマンにとっても丁度良い濃度になります。森に住む獣にとっても、もっと下流に住む者達にとっても恵の河です」


 ほう~、世界樹だと。またまたハルにとっては未知のものだ。そう言えば……エルフの国の中央に世界樹があるといっていたか。是非、見てみたいもんだ。


「陽が暮れるまでにもう少し距離を稼ぎたい。ハル、いけるか?」

「おう、大丈夫ら」


 前世は普通に歩くのもきつかった。すぐに息切れがして眩暈もして動けなくなった。毎日の通学が苦痛だった。よく電車で気分が悪くなって途中で降りたりしていた。それで帰るのが遅くなって母親からヒステリックに叱られた。毎日そんな事の繰り返しだった。

 なのに今は……確かに体は幼児になってしまったが、疲れない……どころか、力が湧いてくる。

 幼児なのだから、まだまだ体力は無い方だろう。普段は昼寝もする。なのに、前世に比べれば夢の様だ。

 ハルは嬉しかった。幼児になった事はムカつくが、頭痛や発熱で目が覚める事もないんだ。薬で誤魔化さなくても動ける。

 自分の思うように動く身体、すぐに疲れたりしない身体が心から嬉しかった。生まれ変わったみたいだ……て、生まれ変わったんだった。

 でも、前世の小さい頃のまんまの顔つき。瞳の虹彩の色。自分は本当にこの世界に生まれるはずだったのか……と、どうしても考えてしまう。

 じゃあ、あの神が言っていた自分の祖父母は一体……?


「ハル、どうした? 疲れたか?」

「りひと大丈夫ら。なんれもない」

「そうか? もう少し走ったら野営する場所につくからな」

「おぅ」


 野営か……それもハルは初体験だ。ワクワクしてしまう。魔物が出る大森林の中なのに。


 野営地について食事を済ませると流石にハルはすぐにコテンと寝てしまった。

 いくら疲れないと言っても幼児だ。お昼寝もしないでよく頑張った。

 小さな身体をより小さく丸くしてスヤスヤと寝息をたてて熟睡しているハル。


「疲れたのでしょうね」

「まだ3歳にもなってないのですよ。お昼寝だって必要な歳なのに」

「ミーレ、そうでしたね」

「リヒト様、ハルの事考えてますか?」

「ミーレ、何言ってんだ。考えてるに決まってるだろう!」

「リヒト様、ハルはまだ幼児なんです。身体も小さいでしょう? お昼寝だって必要なんですよ」

「え……」

「気付いてなかったですよね? ベースではお昼を食べた後にいつもお昼寝していましたよ」

「あ……いや、その……すまん」

「せめてリヒト様にもたれて寝られるなら寝るように位は言ってあげないと。ハルは絶対に無理しますよ」

「あ、ああ。ミーレ、すまん」


 どんどんリヒトが小さくなっていく。ミーレは容赦ない。


「まあ、明日は声をかけるさ。昼食べてから寝かせてもいいしな」

「そうですね。急ぎませんし、ハルのペースで移動しましょう」

「ああ、ルシカ。そうだな」

「そういえば、リヒト様のご家族は何と仰っているのですか?」

「あ? ハルの事か? 父上や母上も会いたがっておられる。早く連れて来いと煩い位だ」

「そうですか。良かったです」



 翌朝、ハルが起きると既にルシカが朝食の用意をしてくれていた。


「ハル、おはようございます。よく眠れましたか?」

「りゅしか。腹ぺこら」

「昨日は1日中移動してましたからね、疲れたでしょう」

「大丈夫ら」

「無理してはいけませんよ」


 そう言いながら食事をくれた。ハルはルシカの作る食事が大好きだ。超美味いんだそうだ。


「ピルルル」

「コハルの分もありますよ」

「りゅしか、ありがちょ」


 ハルは自分の手には大きくて重いスプーンを持ってルシカにもらった具沢山スープをすくって食べ始めた。

 ハルはいつも、大きな口を開けて美味しそうに食べる。もっきゅもっきゅとよーく噛んで食べる。


「りゅしか、美味い!」

「それはよかったです」

「ハル、おはよう。大丈夫? 疲れてないかしら?」

「みーりぇ、大丈夫ら」

「そう? リヒト様は気付かないから言わなきゃ駄目よ」

「うん」

「コハルもおはよう」

「ピルルル」


 コハルもほっぺを膨らませて食べている。



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