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17ーエルフの国へ 1

「大森林は強い魔物が多いのですよ。それでエルフを護衛代わりに使おうとする者もいるんです」

「え、じゅりーな」

「商売人や薬師等は仕方ないので、護衛依頼自体は可能なんですが、冒険者の護衛までやっていられませんからね」

「しょんな事をしゅりゅのも、ひゅーまん?」

「そうですよ。弱い者が多いので仕方ないのですが。なら冒険者にならなければ良いだけの事です」


 なるほど……と、ハルは黙って聞いている。


「ハル、冒険者にはランクがあります」

「らんく?」

「ええ、FからSSです。Fが1番弱いです。この大森林に入るなら最低でもCランクは欲しいですね。それも単独では無理です。チームで全員がCランク以上ですね」


 ほぉ~と、感心しながら聞いているハル。


「おりぇも冒険者になりぇりゅのか?」

「いえ。10歳からしか登録できません」


 それでも10歳か……子供に働かせるのか。しかも冒険者なんて危険だろう。


「ヒューマンにはそうしないと食べていけない者達がいるのです。エルフの国だと有り得ませんけどね」

「ああ。時々小さい子供を連れてくる奴がいるだろう。あれは絶対に通さないがな」

「奴隷でしょうね」


 なんだと!? 子供の奴隷だと?


「口減らしで親に売られたり、人攫いにあったり、孤児だったりするんです。そんな子供達が荷物持ちで連れて来られたりするんですよ。可哀想に」


 ハルはこの世界に来てヒューマン族の悪い話しか聞かないなと思っていた。

 自分は、たまたまリヒト達に助けられた。もしかして、それはとても幸運な事だったのかも知れない。

 そう言えば、あの『神』が保護者を見繕ったとか何とか言っていたな。

 ハルは少しそんな事を思い出していた。


 さて、数日後。そろそろエルフ族の国へと出発するようだ。


「リヒト様、ゆっくりですよ。ハルは初めてなのですから」


 白いユニコーンに乗ったルシカがリヒトに向かって注意をしている。

 リヒトは先頭にいる。2人用の鞍がつけられ、リヒトの前にちょこんと小さなハルが乗っている。リヒトの剣帯とハルの腰とをベルトの様なもので身体を繋げているらしい。万が一の落下防止の安全ベルトの様なものだ。


「ルシカ、分かってる!」

「リヒト様、いいですよ」


 ミーレも準備ができたようだ。


 ――ハル! 気をつけてな!

 ――無理すんなよ!

 ――行ってこい!


 ベースの皆が見送りに出ているようだ。


「皆、後は頼んだぞ!」


 ――はい! リヒト様!

 ――お気をつけて!

 ――ハル、リヒト様をよろしく頼むな!


 もうすぐ3歳児によろしく頼まれる225歳。


「みんな、いってくりゅ!」


 ハルが小さな手をフルフルと振っている。

 3頭の白いユニコーンはフワリと飛び立った。


「うわ……ほんちょに飛んら!」

「ハル、怖いか?」

「りひと、怖くない! しゅげー!」


 大森林の樹々の中を進むユニコーン。そう大した高さではない。と、言うよりも大森林の樹々が高すぎるのか?


「もう少し上がるぞ」

 

 リヒトがそう言うと、ユニコーンはその高い樹々の上まで高さを上げた。

 ハルの足元に広がる一面の緑。大森林の樹々のすぐ上を飛ぶユニコーン。


「どうだ。『ヘーネの大森林』は広いだろ?」

「ひりょい。ひりょしゅぎりゅ。こんな中におりぇは落としゃりぇたんら。あのクショジジイ!」

「アハハハ! まだ言ってんのか」

「らって、おりぇは死ぬとこらった!」

「そうだな。しかし、コハルがしっかり守っているからな」

「しょーゆーもんらいじゃねー!」

「アハハハ! そりゃそーだ!」


 3頭の白いユニコーンが大森林の最奥を目指し、悠々と樹々の上を飛んで行く。

 既に半日近く移動しているが、まだまだ大森林の中央付近は見えてこない。


「リヒト様、お昼休憩にしましょう!」

「おう!」


 少し開けた場所に揃って降り立つ。

 ルシカはいそいそと昼食の用意をしている。


「ハル、大丈夫?」

「みーりぇ、らいじょぶ。なんちょもねー」

「そう? 無理しちゃ駄目よ。まだまだ先は長いんだから」

「おー、ありがちょな」


 相変わらず、言い方だけは一人前だ。


「午後からは飛ばずに行きましょう」

「りゅしか、なんれら?」


 ルシカの焼いた肉にかぶりついている。自分の顔半分程もある。ハルはまだちびっ子だから。


「大森林の様子も見ておきたいのですよ」


 ルシカの返答に、まだ頭の上に『?』が浮いているハル。


「大森林の樹々や植物、それに魔物の様子を見ておきたいのです」


 ほぉ、なるほど……と、思ったのか? 無言で頷きながら肉と格闘しているハル。


 パッカパッカと軽く走りながら進むリヒト達。

 途中、ザコの魔物が数頭出てきた。先頭を行くリヒトが難なく倒して行く。

 後ろを走るルシカやミーレがマジックバッグに走りながら収納していく。


「まだザコばっかだけどな、大森林の奥に行くにつれ魔物が強くなるんだ」

「りひとは平気なのか?」

「おう、大したことないな! アッハッハッハ!」


 ちょっぴり癪に障るハル。


「ピリュリュリュ」


 コハルがハルの服の中から顔を出す。


「りひと、でっけーのがいりゅって」

「お? コハルは分かるのか?」

「うん、みたいら」


 暫く走ると、コハルが注意した通りちょっと大きいそれでもまだ中型の魔物が現れた。

 

「ハル、大森林の中にはな貴重な薬草も生息しているんだ。だからな……」


 ハルに説明しながら軽く剣を振るリヒト。よく見れば剣が薄いグリーンに光っている。一振りで中型の魔物を倒すリヒト。


「魔物を討伐する時にも周りに気を付けないとな。貴重な薬草をダメにしてしまったらいかん」


 ほぉ~……伊達にベースの責任者をしている訳ではないようだ。


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