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169ーベア種の群れ

 リヒト達は、数日かけて北西のベースに到着した。


「よく来たな! ハル、久しぶりだ!」

「りりぇいしゃん! おしぇわになりましゅ!」

「おう! ゆっくりして行っていいんだぞ! おぉッ!? 虎か!?」

「リレイ、虎の聖獣でシュシュだ」

「あら、またイケメンだわ。エルフって本当に見目麗しいのね!」

「おい、話せるのか!?」

「やだわ、だから聖獣だって言ってるじゃない。シュシュよ、よろしくね」

「おう! 超カッケーな!」

「よく分かってるじゃない!」

「さ、とにかく昼食にしましょう。ハル、お腹空いたでしょう?」

「腹ペコら」


 カエデが疲れている。ゲッソリと。


「どうした? カエデだったか?」

「アハハハ、気にしないでください」

「イオス、何だ?」

「ここへ来るまでに遭遇した魔物の討伐で疲れてるんっスよ」

「お? そんなにか?」

「ベア種ばかりでしたけどね」

「ベア種だったけど大型じゃあなかったわよ」

「そうか? だが、それが問題なんだよ」

「リレイ、どうした?」

「最近、ベア種が妙に多いんだよ。それで念の為、調査を出したところだ」

「ほら、イオス兄さん! やっぱ多かったんやで!」

「いいじゃねーか。良い訓練になっただろう?」

「まあ、そうやけど」


 イオスはそう言っているが確かに多かった。カエデは北西のベースに着くまでに20頭近くのベア種の魔物を討伐していた。これは少し酷だったかも知れないぞ。


「それは確かに多いな」

「やろ? そうやろ? リレイ様、そう思うやろ?」

「調査隊が戻ってきたらもう少し何か分かるだろう。カエデ、お疲れだったな」


 さあ、昼食だと皆で食堂へ向かう。今日はこのベースに1泊して明日の朝からまた遺跡調査だ。……の、筈だった。


「リヒト、ちょっといいか?」


 リレイがリヒト達の休憩している部屋に入ってきた。


「ああ、どうした?」

「お、ハル起きていたか」

「ん、りゅしかのおやちゅの時間ら」

「アハハハ、おやちゅか!」


 さて、リレイの話だ。念の為と言っていた調査隊が戻ってきた。しかも、深刻な情報を持ってだ。


「出ていた調査隊の話だと、最低50頭のベア種の群れを発見したんだ」

「最低50だと!?」

「ああ。しかもベアウルフがいる。気付かれない様に遠巻きで確認した範囲だけで最低50だ。だから、もっといると考えてもいい。大森林の中を移動しているそうだ」

「マズイな」


 ベアウルフ。その名の通り熊と狼のハイブリッドだ。

 歯を含む頭部は熊で手足と胴体はウルフ。力が非常に強く、猿などは掌で押しただけで殺してしまう。噛み付く力も強いが、ウルフの様に俊敏に走る。

 体長200〜250センチメートル、体重300〜800キログラム。密に生えた毛皮と短い尾・太くて短い四肢と大きな体を持つ。超大型ではないが、魔物の中では凶暴な方だ。

 そんな、ベアウルフを含めたベア種の魔物が最低50頭。何故そんなに集まって移動しているのか? 何かを目指しているのだろうか?


「とにかく、放ってはおけない。討伐する。もちろん、俺も出るがリヒト達も手伝ってくれないか?」

「もちろんだ。長老、いいよな?」

「ああ。ワシも出るぞ」

「じーちゃん、おりぇもら!」

「ハル、危険だぞ?」

「りりぇいしゃん、分かってりゅ。けろ、ベアて美味いのか?」

「アハハハ! ハル、また食い気かよ!」

「らって、りひと。大事らじょ?」

「ハル、ベア種は美味いぞ。鍋にして食ってみるか?」

「おぉ! ちょっとヤル気れた」


 リレイのベースから討伐を得意とする隊員15名、リヒト達は結局全員で参加する事になった。

 ハルにミーレが注意していた。でないとハルは先走ってしまう。


「ハル、最初から出るのは駄目よ。最初は私と一緒に見ていなさいね」

「何れら?」

「最初は皆マジックアローで討伐する筈だわ。そこに1人突っ込んで行ったら邪魔よ」

「しょうなのか? 分かっちゃ」


 ミーレに言い聞かされたハル。ちゃんと覚えておくんだぞ。君はよく忘れるからな。

 エルフは弓の扱いに長けている。初手は大概弓だ。皆、マジックアローが得意だ。だから、カエデもマジックアローを覚えた。ハルも大きくなったら覚えるといい。


「おりぇ、弓れまじっくありょーちゅかえねー?」

「まだちびっ子だから、弓は無理だろう?」

「じーちゃん、しょお?」

「ああ。多分な」


 そうだよ、ハル。長老の言う通りだぞ……多分な。

 バタバタと準備が進み、ハルがおやつを食べ終わる頃には準備万端ベースの前に整列していた。皆、弓を背中に背負っている。


「大型のベア種だ。ベアウルフも確認されている。皆、油断しない様に! 負傷したら迷わずポーションを使う事! 全員無事に戻ってくるぞ!」


 ――ハイッ!!


 リレイの言葉で奮起する隊員達。さあ、出発だ。


 先頭はリレイを含めて5名。偵察も含めて先を行く。その後から15名、ベースの隊員達が続く。リヒト達は最後尾だ。


「カエデ、最初はマジックアローだぞ」

「うん、イオス兄さん」

「人数がいるからな。無理する事ないぞ。魔力切れになる方が足手纏いになる」

「うん、分かってる」

「まじっくありょーな」

「なんだ? ハル」

「なんれもねー」


 ハルさんも射たいらしいんだよ、マジックアローをね。でも、弓自体を持っていないから無理だ。


「ハル、時間がある時にじーちゃんが弓を作ってやろうか?」

「んー。じーちゃん、やっぱ弓いりゅよな?」

「マジックアローを射たければ、弓は必要だな」

「しょうらよな」

「今日はウインドカッターを飛ばしていれば良いぞ」

「しょうらな」

「ハルちゃん、あたしと一緒にいましょう」

「ん、シュシュ」


 なんだかスッキリしないハル。何か考えている様だ。リヒトのユニコーンの前にちょこんと大人しく乗っている。

 また、とんでもない事をしなければ良いのだが。ハルは予測ができない。


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