168ーハルちゃんスパルタ?
「いおしゅ、しょろしょろあれら」
「ハル、何だ?」
「身体強化ら」
「ああ、カエデに教えるのか?」
「ん」
「何、何? 身体強化って何なん? 強そうやな」
「それはだな、ハルが早く動ける理由だ」
「イオス兄さん、全然分からんで」
「アハハハ、カエデ。だからな、魔法で自分の身体を強化するんだ。そうしたら普通はできない事もできる。ハルがあれだけ高くジャンプできるのも、早く動けるのも身体強化をしているからだ」
「え、そうなん!?」
「しょう。じゃないとおりぇ、あんなに飛べねーし」
「マジか!? それ、どーすんの!?」
「気合ら。とぉッ! て、思うんら」
「あかんわ、全然分からへん」
「アハハハ! ハルはいつもそうしてたのか?」
「え? じーちゃん、違う?」
「まあ、人其々だな。イオス、カエデもそろそろ良いんじゃないか?」
「そうっスね。じゃあカエデ。身体強化とはだな……」
カエデに身体強化を教えるイオス。マスター出来れば戦い方も変わってくる。
「いつも教えてくれる時は、イオス兄さん身体強化してんの?」
「してる訳ねーじゃん。カエデ相手に身体強化はいらねーよ」
「うわ、マジなん!?」
「さっきのハルもジャンプ以外は使ってないだろう?」
「ん、ちゅかってねーじょ」
「なんやの!? 2人共、素で強いんやん! 鬼に金棒やん!」
「カエデ、それは種族の違いだ。ハイエルフは身体能力が高い」
「長老、そうなん?」
「ああ。だけどな、猫獣人だって身体能力は高いんだ」
「そっか。頑張るわ。千里の道も一歩からや」
またイオスと訓練を始めたカエデ。
「じーちゃん、今日は何なんら?」
「また、遺跡調査の事だ」
「行くのか?」
「ああ。明日から北西のベースにな」
「りりぇいしゃんのとこか?」
「そうだ。北西までは少し距離がある」
「しょっか」
長老と一緒にベースの建物に戻るハル。カエデはまだイオスと訓練を続けている。
中に入ると、リヒトとルシカが呼びに来ていた。
「ハル、お昼ですよ」
「あ、しょうら。腹ペコら」
「珍しい。ハルが昼食を忘れるなんて、どうかしましたか?」
「かえれと対戦してたんら」
「ほう」
「カエデとか? まだ無理だろう?」
「かえれも強くなったじょ」
「そりゃ、イオスが直々に教えてるんだしな。奴隷紋で抑え込まれていたが、元々身体能力は高いだろう。なんせ、純血種だ」
「りひと、しょう?」
「ああ、そうだ。それにカエデは強化魔法を持っていただろう?」
「え……」
「そうでしたね。確か持ってましたね」
「なのに、ちゅかってなかったのか?」
「無意識だろう?」
「え……」
「いや、だからさ。あいつの瞬発力とかはそうだろう」
「ありゃりゃ」
「ハル、どうした?」
「身体強化を教えてんら」
「いいんじゃねーか?」
「らって、りひと。もうかえれは出来りゅんらろ?」
「無意識と、意識して使うのとは違うさ。覚えとくのはいい事だぞ」
「しょっか」
「それで思い出したけど、ハル。無限収納持ってなかったか?」
「みゅ、みゅげんしゅう……う?」
「無限収納だよ。マジックバッグの上位版て感じか」
「リヒト、そうだな。ハルは持っていたな」
「長老、だろ? もしかして、ハルは分かってないか?」
「分かりゃん」
「マジ、宝の持ち腐れ」
カエデか! て、リヒトに突っ込みたくなる。カエデはよくことわざを使うからな。が、そうです。ハルさん無限収納をもっています。本人理解していないのでコロッと忘れてました。カエデのスキルの話からリヒトが思い出したらしい。
「無限収納は容量がないんだよ」
「りひと、まじ!?」
「ああ、マジだ」
「じゃあもっちょヒュージラビット持って帰ってこりぇたじゃん!」
「食い気かよ!」
はい。リヒト、いつも突っ込み有難う。
「亜空間はコハルの寝床になっているからなぁ。無限収納は便利だぞ」
「じーちゃんもありゅのか?」
「持ってるぞ」
そういえば、長老は何処からかポーションを出していた。
「なんだ! じーちゃん早く言ってくりぇよ! ヒュージラビットが!」
「アハハハ! ハル、またいつでも行けば良い」
「しょうらな。おばばしゃまにも会いたいし」
「おばば様も喜ぶぞ」
「しょっか?」
「ああ、もちろんだ」
「しょっか。うりぇしいじょ」
長老やリヒトから見れば当たり前の事なのだろうが、ハルにとっては嬉しい事なんだ。
前世の事があるからだ。下心なく望んでもらえる事がハルにとってはとても嬉しい事なんだ。
「さっさと調査を終えてまた会いに行こうな」
「ん、りひと。ありがちょ」
と、言ってもまだ調査を始めたばかりなのだが……
ドラゴシオン王国からずっと遺跡調査をしているハルはもう既に飽きている。
「で、その調査だが。明日、北西のベースに向かってくれ」
「長老、分かった」
「そうだな、3日後にベースへ到着するように移動してくれるか? 調査は翌日の朝からにしよう」
「長老、分かった」
「りりぇいしゃんのとこにお泊りか?」
「ああ。今度はベースまでちょっと距離があるからな。ゆっくり行こう」
「りひと、行きは少しユニコーンれ飛ばじゅに行こう」
「どうした?」
「かえれの訓練も兼ねて」
「おぉ、スパルタだな」
「しょんなことはないじょ」
もうカエデなら大抵は大丈夫だとハルは判断したのだろう。
翌日、一行は朝から北西のベースに向かって出発した。
「ありえへん! こんなん自分だけで無理やって!」
「カエデ、なんでだよ。いつもリヒト様が軽く討伐しているだろう! ほら! 手を動かせ!」
「イオス兄さん! 手伝ってや!」
「アハハハ! 頑張れー!」
この日に限って中型以上あるベア種の魔物がよく出てきた。まあ、カエデには良い訓練だ。文句を言いながらも、しっかりと倒している。