166ー北の遺跡
「リヒト、久しぶりだな」
北のベースに着いたリヒト達を管理者のノルテが出迎えてくれた。
北のベースの管理者、ノルテ・テントーリオ。リヒトの祖父の弟の息子だ。
リヒトと同じ髪色と瞳の色で、ブルーブロンドの髪にブルーゴールドの瞳をしている爽やかなイケメンエルフ。
リヒトも黙っていれば、普通にイケメンエルフだ。
「ノルテ、久しぶりだ」
「リヒト、お前3ヶ国を訪問して来たと聞いた。失礼のない様に対応できたのか?」
「失礼だな!」
「お前は直ぐ口調が砕けるから」
「俺だってやる時はやるんだよ」
「ほう、そうだったか? で、このちびっ子が?」
「ああ、ハルだ。宜しく頼む」
「リヒト……お前『頼む』て言える様になったのか!?」
「それ位言えるわ!」
「アハハハ! 相変わらずだなぁ」
「長老、リヒトが世話になって」
「いや、しっかりやっとるぞ」
「ほらみろ」
「アハハハ!」
「じーちゃん?」
「ああ、リヒトより少しだけノルテの方が歳上なんだ。50歳位上だったか」
「ご、50……しょうなのか?」
50歳上で少しと言うのか? 長命種であるエルフ独特の感覚なのだろう。
「君がハルか。会いたかったぞ」
「はじめまして、はりゅれしゅ」
「おう、お利口だ」
そう言ってヒョイとハルを抱き上げる。
「君の仲間はバラエティーに富んでいるな。紹介してくれるか?」
「ネコちゃんは、かえれ。虎がシュシュれしゅ」
「カエデにシュシュか? 宜しくな」
「宜しくお願いします!」
「あら、爽やかなイケメンじゃない」
「ありがとう。シュシュもカッコいいぞ」
「あらぁ、そうでしょう! あたしの良さが分かるなんて……」
「ノルテ、以前魔石を浄化したんだよな?」
「ちょっ、リヒト! また途中から……」
「ああ、シュシュ。悪い」
リヒト、面倒そうだぞ。シュシュの扱いがどんどん雑になっていないか?
以前、長老の指示で大森林にある遺跡が調査され地下に魔石が見つかった。その時にすべて浄化は済んでいる。
「ああ、俺も浄化したからな。確かだ。また再調査するのだろう? 俺が案内する」
「え、いいよ。俺、分かるし」
「俺が任されている範囲にある遺跡だぞ。把握しておくのは当然だろうが。何だ? 俺が一緒だと困るのか?」
「困らねーよ! そんな事言ってねーし」
リヒトとノルテの関係は、面白がって弟をからかう兄の様だ。
「リヒト、管理者が同行するのは当然だ」
「長老、分かってるさ」
「ハル、宜しくな」
「あい、のりゅてしゃん」
「おー、可愛いなぁ。ちびっ子特有の舌足らずな喋り方がなんとも可愛い」
そう言ってハルを離そうとしないノルテ。紛れもなくちびっ子大好きエルフだ。
ノルテの管理するベースからユニコーンで飛び小1時間の距離に遺跡はあった。
「あれだ」
「ああ」
一行は遺跡に降りて行く。地上の建物の保存状態も良い。何万年も前の遺跡だと言うのにしっかりと建物が残っている。
「精霊がいっぱい守ってりゅ」
「ハル、見えるのか?」
「あー、ハルは精霊が見えるし話せるんだ」
「それは、なんとも羨ましい。ハル、精霊達にありがとうと感謝を伝えてほしい」
「ん、ちゃんと言葉は届いてりゅじょ」
「そうか。精霊達のお陰だ」
「しょうなんら。みんな守ってくりぇてりゅ。ありがちょな」
ハルが空を見て話している。精霊がいるのだろう。
「アハハ、くしゅぐったいじょ。らめら。前が見えねー」
また精霊に囲まれたらしい。
「こりぇかりゃ遺跡に入りゅかりゃな。教えてくりぇな」
「ほう。本当に会話をしている」
「ノルテ、入り口はどこだ?」
「長老、こっちだ」
ノルテが長老達を案内する。遺跡の裏側に回ると、地面に入り口はあった。リヒトが管理する遺跡にあったのと同じ模様の蓋がしてある。
「まさか、これが入り口だとは思わなかった。普通に上を歩いていた」
そう言いながらノルテが蓋を開ける。下へと続く階段が現れた。入って行く一行。
「同じだな」
「長老、そうなのか?」
「ああ。リヒトが管理する遺跡にあった地下と作りや壁画も同じだ」
階段を降りたら奥へと通じる通路が延びていた。その通路の壁には同じ壁画が描かれていた。そして通路の先には扉がある。
「この扉の中に魔石がある」
「それも同じだ」
ノルテを先頭に入って行く。広い部屋があり、奥には祭壇の様な場所に透明なクリスタルが輝いていた。
「ふむ。ここからだな。ハル」
「じーちゃん……えっちょこっちか?」
ハルがクリスタルを設置してある横の壁へとトコトコと歩いて行く。
「長老、精霊に聞いているのか?」
「ああ。ハルにしか聞こえない。ハルにしかできないらしいんだ」
「じーちゃん、ここら」
そう言ってハルは壁にペタンと手をついた。すると、まるで蜃気楼の様に壁画が現れた。
「マジか……!?」
その壁画には……
国と言うにはまだ小さいエルフの集落が世界樹の周りに出来ていた。その集落に結界を張っているエルフ達。その向こうでは、魔物を集落に近寄らせまいと戦っているエルフが描かれていた。
倒された魔物からは瘴気の黒い靄が浮き出ている。
長老とリヒトが注意深く見ている。
「長老、ハイエルフだな」
「ああ」
「何だ?」
「ノルテ、壁画をよく見るんだ。ハイエルフしか描かれていない」
「え……? ああ、長老。あの耳と髪色か?」
「そうだ。原初のエルフはハイエルフだけだった可能性がある」
「そうなのか!?」
2番目の遺跡でも壁画が明らかになった。ここでも、ハイエルフ種のみが描かれていた。エルフ種が出てきていない。