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165ーカエデの努力

「りゅしか、腹減った」

「そうですね、お昼にしましょう」


 風呂に入ってホコホコになった皆がゾロゾロと食堂に向かう。

 シュシュも毛並みが良くなってサラサラのツヤツヤだ。良い匂いまでする。


「やだわ、あたしの魅力が倍増しちゃったわ」

「なんだそれ?」

「イオス、分かんないの? あたしのこの美しい毛並みが。しかも良い匂いもするでしょう?」

「洗うの大変だな、デカイから」

「そうですね、大きいから」

「ちょっと、イオス、ルシカ。それどう言う意味よ」

「まんまじゃねーか」

「あたしは毛並みの話をしてんの。見て。見惚れてしまうでしょ」

「お、おう」

「ゴブリンの臭いがつかなくて良かったですね」

「もう、ホント失礼しちゃうわ」


 皆が昼食を食べ終え、ハルがお昼寝をし、ルシカのおやつを食べている時に長老がまたやってきた。


「お、ルシカのおやつか」

「じーちゃん、仕事はもういいのか?」

「いや、また直ぐに戻る。アヴィーもだ」

「私はいいわよ。まだハルちゃんと一緒にいるわ」

「陛下がお呼びだ」

「えぇー……」

「アンスティノス大公国の件もある」

「分かったわよ」

「それよりも、カエデ。ステータスを確認しているか?」


 長老の眼がゴールドに一瞬光っていた。


「長老、見てへんけど」

「マメに確認しなさい」

「あ、リヒト様にも言われたんや」

「カエデは凄いな。イオスがずっと訓練してんのか?」

「はい、長老。今日は弓を教えましたよ」

「ああ、だからか。弓術が増えているな。魔力量も倍になっている」

「ホンマ!? やった! マジックアロー使えるようになってん! イオス兄さんのお陰やねん!」

「カエデの進歩は目を見張るものがあるな。元々身体能力が高い獣人だって事だけではないだろう。努力の結果だ」

「ふふん。ミーレ姉さん、どうよ。褒めて! 千里の道も一歩からやで!」

「メイドの仕事も覚えなきゃ」

「あー、あぁ……そっちな」

「そうよ。ハルがこっちにいる間は勉強しましょう」

「はいな! ミーレ姉さん、頼むわ」

「よく頑張っているな。カエデは偉いぞ」

「長老、ありがとうにゃ〜! 照れるにゃ〜! 嬉しいにゃ〜!」

「アハハハ」

「何それ、カエデ。にゃ〜は3回続けなきゃ駄目な法則でもあんの? 可愛いじゃない」

「え? シュシュ」

「あたしも使おうかしら?」


 いやいや、シュシュはネコ科だが猫じゃない。ネコ科ヒョウ属の虎だ。


「さて、リヒト。残りの遺跡も任せたいそうだ」

「長老、もちろんだ」

「またハルを連れて行く事になるが」

「じーちゃん、いいじょ」

「良い機会だから各ベースの人間にも顔繋ぎをするといい」

「ああ、分かっている」

「次は北のベースだな」

「長老、いつ行く?」

「さっさと済ませてしまいたいんだ。早速、2日後にでもどうだ?」

「分かった、じゃあ明日出る」

「ワシは北で待つ」

「朝イチで出るよ」


 そんな打ち合わせをして長老はアヴィー先生と戻って行った。


「じーちゃん、忙ししょうらな」

「長い期間外に出ていたからな」

「ん、楽しかっちゃ」

「そうか? ハルはまだちびっ子だから辛くなかったか?」

「辛くはないじょ」

「そうか」

「ん、旅は楽しい」

「そうか。あんな事はそうないけどな。ベースが中心だ」

「ん」


 ハルはアンスティノス大公国、ツヴェルカーン王国、ドラゴシオン王国と3ヶ国を回った。大陸にある国全部へ行った事になる。まだ3歳のハルには体力的に辛いものだったのではないかと、リヒトは気にしていた様だ。

 だが、ハルは楽しかったと言った。旅は楽しいと。3ヶ国を回るなど滅多にない事だろうが、頼もしいハルの発言だ。リヒトも安心した事だろう。


「けろ、いい加減もう遺跡はいいな」


 ハルさん、飽きちゃったみたいだ。だが、大森林の遺跡調査は始まったばかりだ。頑張ってやり遂げて欲しいものだ。


 翌朝、リヒト達いつものメンバーは北のベースに向かって出発した。リヒトが管理するベースからは2日かかる。


「りひと、北のべーしゅの管理者も親戚なんらろ?」

「おう、知ってんのか?」

「管理者はみんな親戚らってりゅしかに聞いた」

「そうだ。父上の家系や母上の家系の親戚とかもだな。ハイリョースエルフは皇族だから大きい意味で皆親戚になるな」

「おりぇはどうなんらろ?」

「ハルも大きい意味で親戚だろ。長老の曽孫なんだから」

「しょっか」

「ああ。ハイリョースエルフは皆先祖が同じだと言われている。原初のエルフに繋がる血統だ」


 原初のエルフ。何度も遺跡調査で出てきた。この世界へ最初に現れたエルフ族の事だ。始まりは男女2人のエルフだったと言い伝えられている。が、定かではない。

 エルヒューレ皇国を建国したのが、原初のエルフでハイリョースエルフの皇族だ。

 ハイリョースエルフを補助するのがハイダークエルフ。対外大使だったり官僚だったりの役職に就いているのがリョースエルフ。それを補佐する事務官にダークエルフ。現在はそんな感じになっている。

 それは、ダークエルフ種を差別している訳ではなく適材適所で自然とそうなった。ダークエルフ種は表に出るのが苦手な者も多い。だが、細かな事に気付いてフォロー出来るのもダークエルフだ。それを活かせるのが、補佐という職だ。

 エルフ属はハイエルフ属よりも耳が尖っている。一般的にエルヒューレ以外の国で、エルフと呼ばれているのはエルフ属の事だ。ハイエルフ属がエルヒューレ以外の国に住む事は滅多にない事だ。その滅多にない事をしていたのが、アヴィー先生だ。しかも、多種族の子供を育てていた。どれだけ突拍子の無い事をしていたのかよく分かる。

 今回の遺跡調査では、ハイヒューマンとヒューマンの分岐原因が明らかになった。

 ハイエルフとエルフの分岐原因も分かるかも知れない。長老だけでなく、リヒトやルシカもそう思っている。もちろん、皇帝もだ。だから、大切な調査になる。


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