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163ーゴブリン討伐 1

 その日のうちに討伐隊が組まれた。リヒトとルシカ、イオスはもちろん、長老とハル、カエデやシュシュも一応参加だ。前衛に出るかどうかはその時の状況次第となった。

 そして、ベースから10人の隊員が参加する。ハルはベースのメンバーと一緒に討伐へ出るのは初めてだ。

 ミーレとアヴィー先生はベースでお留守番をしているそうだ。

 

「あたしだってレディーなのよ! 留守番したいわよ!」

 

 と、ボヤいていたのはシュシュだ。誰がレディーだ?


「カエデ、良い機会だから試しに弓を使ってみるか?」

「イオス兄さん、教えて!」

「おう、裏に行くぞ」


 イオスとカエデが裏に出て行った。


「じーちゃん、おりぇ弓は使えねー」

「ハル、何を言ってるんだ? 魔法があるだろう?」

「あ……しょうらった」


 ハルさん、よく忘れるよね。

 討伐は、翌朝出発する事が決まった。長老は一旦戻って行った。忙しいらしい。



「しゅげ……巣と言うより村じゃん」

「な、そうやんな」

「見て、ゴブリンがうじゃうじゃいるわよ。最悪だわ。1頭見つけたら10頭はいるって言うものね」


 まるで、Gだ。翌日、ゴブリン討伐に来ている。ゴブリンの巣を陰から見てハル達が驚いている。シュシュは相変わらず気が乗らないらしい。

 ゴブリンの巣は、枯れ木や枝を利用して掘っ建て小屋の様な小屋をいくつも建ててあった。小屋と言っても直ぐに倒れそうな不安定な小汚いものだ。中央付近には煮炊きをするのか、竈門の様な物まである。柵のつもりだろうか? 周辺に木を立てぐるりと囲っている。これも、少し力を入れて押すと直ぐに倒れそうだ。だが、ハルが言う様に巣と言うよりは小さな村だ。

 リヒトやハル達、隊員達がいるのは木の上だ。巣からは死角になる様に皆配置している。こちらからは巣が丸見えの位置だ。


「シュシュだって風魔法があるだろう?」

「イオス、そうだけど。そうね、それで近寄らない様にするわ。身体にゴブリンの血液がついたら最悪だもの」

「カエデ、お前も出来る事をすれば良いからな。無理に近寄るな」

「イオス兄さん、分かった」

「イオス、結局カエデは弓を使えたのか?」


 少し前にいるリヒトがイオスに聞いている。


「魔法の矢を出せる様にはなったのですが、まだ数が出せないんですよ」

「そりゃ、昨日今日じゃ無理だ」

「はい、出せただけでも上出来かと」

「そうだな。最初の頃に比べるとカエデの成長は凄いと思うぞ」

「リヒト様! そうやろ! だって自分は魔法を使った事なかったんやからな!」

「おう。だが、今日は無理すんなよ」

「うん、分かったで」

「ハルもだぞ」

「ん、後りょからういんろかったー飛ばしちょく」


 ハルは1番後ろにカエデとシュシュと一緒にいる。先頭はリヒトとルシカだ。


「おう、それでいい。さて、皆準備はいいか!?」

 ――はい

 ――おう


 ルシカとエルフの隊員達が其々返事をする。心無しか隊員達の声にも士気がない。


「俺とルシカとで見張りをやる。その後巣の中心に火矢を射ってくれ」

 ――了解です!


 エルフ達は皆弓を構える。

 巣の入り口らしき場所にゴブリンが2頭立っている。見張りのつもりなのだろう。その2頭目掛けて、リヒトとルシカが同時に矢を放つ。どちらも、確実にゴブリンを倒した。直ぐさま、1人の隊員が火矢を巣の中心目掛けて射る。

 すると、驚き慌てたゴブリン達がバラバラと出てきた。手には簡素な、木に石を括り付けただけの武器らしき物を持っている。小柄な体躯に、粗末な汚れた布切れを腰に巻いている。臭うと言うのが理解できる。


「出来るだけ弓で倒すぞ!」

 ――おう!

 ――はい!

 ――了解!


 リヒトやルシカだけでなく、ベースの隊員達が一斉に矢を射る。バラバラと出てきたゴブリンに次々と命中していく。

 知性もないのだろう。まだどこから矢が射られているのかも分かっていない様だ。


 ――ギャ!

 ――グギャ!


 と、ゴブリンが悲鳴を上げて倒れていく。


「おりぇ、いりゃねーな」

「みんな凄いわ。次から次へと矢を出せるんや」


 そうだ。エルフの隊員達が射ているのは魔法の矢だ。カエデはまだなかなか形にする事ができない。それでも、1本2本と射っている。


「カエデ! 無理すんな! 魔力量を考えろよ!」

「はいな! イオス兄さん!」


 それでもまた1本と矢を射る。


「やった、命中や!」


 狙いは正解らしい。

 ハルがジッとカエデを見ている。


「かえれ、あんま飛ばしたりゃらめ」

「ハルちゃん、そう?」

「ん、らめ。動けなくなったりゃ危ない」

「そうやな。ちょっと見て勉強するわ」

「ん、しょりぇがいい」


 ハルがカエデを止めた。精霊眼でカエデの魔力量を見ていたのだろう。

 既に30頭は倒しただろうか。あと少しだろうと思っていたら、巣の奥から大きな鳴き声が響いた。


 ――グギャオォォ!


 叫びながら、出てきたのは今まで倒したゴブリンの大きさの1.5倍位あるゴブリンだ。


「あれは、ホブゴブリンか」

「リヒト様、そうみたいですね」

「まだ上がいるだろうな」

「ええ、多分」


 ホブゴブリンらしい。普通のゴブリンの上位種だ。しかし、エルフの矢が2本3本と命中すると簡単に倒れた。


「楽勝じゃん」

「ハル、まだ上位種が出てくると思うぞ」

「いおしゅ、しょうなのか?」

「ああ、多分キングかロードがいるだろうな」


 ハルはあまり分かっていない様だ。キョトンとしている。


「さっきの少し大きいのがホブゴブリンだ。その上がキングゴブリン、また上がゴブリンロードだ。他にも魔法を使うマジシャンゴブリンとかもいるんだ」

「ほぉ〜」

「そいつらは少し知性があるからよりウザイ」

「なりゅほろ〜」


 本当に分かっているか?


「ほら、ハル。あれがキングだ」


 イオスが指を指す。巣の奥から普通のゴブリンより大きさが2倍程あるゴブリンが出てきた。その後ろには、もう1回り大きなゴブリンもいる。


「あの後ろにいる1番デカイのがゴブリンロードだ」

「おお、デカイ」


 ルシカが3本同時に矢を射る。ゴブリンキングに命中するが、まだ倒れない。

 どんどん、矢を射る隊員達。ルシカがまた矢を射った。キングの額に命中し、今度は悲鳴を上げながら倒れた。


「おー、りゅしかしゅげー」

「ホンマに、ルシカ兄さん凄いわ!」


 残ったのは、ゴブリンロードだ。


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