159ー3ヶ国協定
「……しゃけ!」
「あ、ハルちゃん起きた」
「ハル」
「ハルちゃん!」
「ありぇ……? おりぇ、寝てた?」
「ハルちゃん、浄化の後倒れたんや」
「あ、ばーちゃんは!?」
「アヴィー先生も大丈夫よ。お水飲む?」
「みーりぇ、果実水がいい」
「起きられるかしら?」
「ん、平気ら」
ハルはゆっくりと身体を起こす。ググーッと伸びをする。ベッドから下りてソファーに座る。ミーレから果実水を貰ってコクコクコクと飲んだ。大丈夫そうだ。
「ふぅ……よく寝たじょ。次はりゅしかのおやちゅら……おやちゅ? ありぇ? おりぇ、昼飯食べちゃ? りゅしかの弁当は!?」
「ハルちゃん、食べてないなぁ」
「そうね、ハルちゃん眠っていたから」
「え……おりぇ、1回損してりゅ?」
損てなんだ、損て。1食食べなかったら損なのか?
実は、ハルが目を覚ましたのは翌日だった。丸1日眠っていたんだ。だからハルさん、1食どころじゃないんだよ。
「まじ……!?」
「そうやで。ハルちゃん丸1日眠ってたんや。心配したわ」
「本当よ。コハル先輩が大丈夫だって言ってたけど、それでも心配だったわ」
「こはりゅ」
「はいなのれす!」
「こはりゅ、ありがちょ」
「どうってことないなのれす!」
「コハルの転移は平気やったわ。身体に優しい転移やった」
「え? カエデ、それどう言う意味よ? あたしの転移は優しくないの?」
「シュシュの転移は胃がひっくり返るからなぁ。もう嫌やわ」
おや、カエデ。言うようになっている。シュシュの事を怖がっていたのに。
「じゃあ、ちゅぎの飯は何ら?」
「ハルちゃん、食い気なのね」
「ん、飯はらいじ」
ハルさん、寝起きだからかカミカミだ。
「ハル、起きたか」
「じーちゃん」
「大丈夫か? なんともないか?」
「ん、平気ら。ばーちゃんは?」
「おう、起きてるぞ。大丈夫、元気だ」
「よかっちゃ。ばーちゃんが倒りぇりゅのが見えて超焦った」
「アヴィーは1番魔力量が少なかったからな。無理をさせてしもうた」
「ん、れも浄化れきたのか?」
「ああ、終わったぞ」
「しょっか。良かっちゃ」
ハルは自分が倒れる前に、アヴィー先生が倒れるのを見たらしい。
それにしても、アヴィー先生が1番魔力量が少ないとは。僅差らしいがハルよりも少ない。
長老は1番余裕があったから魔力量も1番多いのだろう。次がリヒト。そして、ハル、アヴィー先生という順らしい。
ちょっと意外だ。ハルよりアヴィー先生の方が少ないとは思わなかった。
「ハルは、ハイエルフとハイヒューマンの能力をそのまま継いでいるからだ。だから、魔力量も多い。普通はその歳ではあり得んな」
だ、そうだ。長老はタグを渡す時に皆のステータスを見ているから分かるのだろう。
「だが、魔力量は増えるからな。ハルはまだまだ増えるだろう」
おう、そのうち長老と同じ位にはなるかも知れない。ハルはまだ3歳だ。ちびっ子だ。魔力量だけでなく、色んなものがまだまだ成長するだろう。
ハルが眠っている間に、長老とリヒトはツヴェルカーン王国の王に報告を済ませていた。
おばば様と青龍王が同席している事もあり、本格的にドラゴシオン王国とツヴェルカーン王国、エルヒューレ皇国の3ヶ国協定の協議に入った。
長老の魔道具によって、ドラゴシオン王国の竜王と、エルヒューレ皇国の皇帝も参加した。
3ヶ国の間に相互協力及び安全保障協定が締結される運びとなった。
3ヶ国間は対等であり、平時は過度な介入をお互いにしない。
何れかの国が有事の際はお互いに協力を惜しまないというものだ。
ツヴェルカーン王国は両国へ技術提供と武器や防具等の販売を。
ドラゴシオン王国は精霊の知識の提供と、遺跡調査の協力を。
エルヒューレ皇国は遺跡全般の調査と管理をする事となった。
「では以上の内容で相互協力及び安全保障協定と言う事で」
「ああ、異存はない」
「私も異存はない」
「有事の際我々はエルヒューレ皇国やツヴェルカーン王国を共に守ると約束しよう」
「我々も技術提供を惜しまない事を約束する」
「我々は責任を持って遺跡の調査と管理をしよう」
「では、書類の作成に入る」
エルヒューレ皇国の皇帝が長老に聞いた。
「長老、ツヴェルカーン王国の遺跡調査は大変だったな。よく浄化を済ませてくれた」
「はい、次はもっと早く浄化しますよ。でないと、我々の魔力が保たない」
「そんなにであったか」
「はい。今回は青龍王様とおばば様にも助けて頂きました」
「いや、あの壁画の様に皆が協力して平和を保てるのならば協力は惜しまない」
「壁画は壮大な物語の様だったと、同行した学者が申しておった」
「王よ、そんなにか?」
「はい、皇帝。原初のエルフ族、ドラゴン、ドワーフ、そして絶滅したハイヒューマンが協力して1つの遺跡を作ったのだそうです」
「ドラゴシオンにあったハイヒューマンの壁画も興味深いな」
「エルフの遺跡も再調査すれば何か出てくるのではないか?」
「かも知れんが、暫くは休ませたい。ハルはまだ小さいのに無理をする。ゆっくりと休ませてやりたい」
「皇帝、ありがとうございます」
「長老、ハルを可愛く思うのは長老だけではない」
「ああ、五大龍王も皆ハルの事は可愛く思っている」
「今回の調査で無理をさせてしまいました。申し訳ない」
「いえ、陛下。あれはハルの性分もあります故」
「そうなのか? 長老」
「はい。ハルはそういう子です」
「可愛いのぉ。早く帰って来んか?」
「ハルが回復したら帰りますよ。さすがに今回は長くなりましたから」
「長老、またゆっくりドラゴシオンにも来るといい」
「ツヴェルカーンにも是非ゆっくりと」
「ありがとうございます」
こうして、3ヶ国間の協定はスムーズに締結された。