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158ーヤバかった

「「ハルちゃん!」」


 シュシュが滑り込み身体で受け止め、カエデが慌てて抱き寄せる。


「コハル、いけるか!?」

「長老、任せるなのれす!」


 長老も、杖を支えに立っているのが精一杯という様子だ。

 ポンッとコハルがハルのそばまで転移してきた。そして、ハルの額に小さな手を置く。コハルの身体が光り、ハルの身体も仄かに光った。


「これで大丈夫なのれす!」


 またポンッと消えたと思ったら、アヴィー先生の側に出てきた。同じ様にアヴィー先生の額に手を置く。


「大丈夫なのれす! 安心するなのれす! 長老とリヒトはポーション飲んれ休むなのれす!」

「アハハハ、そうだな。そうしよう」


 長老が杖で身体を支えながらハルの側まで移動し、その場にどっこいしょと腰を下ろした。何処からかポーションを出して飲む。

 イオスがアヴィー先生をお姫様抱っこしてやってきた。リヒトもルシカに支えられながらやってきてその場に座りルシカからポーションを貰っている。


「はぁ……まいったな。こんなに魔力を持っていかれるとは思わなんだ」

「長老、ヤバかったよ」

「長老、ハルちゃんは目を覚ますんか!?」

「カエデ、安心しろ。コハルが処置してくれているから大丈夫だ」

「こんな小さい身体で……ハルちゃんたら……もう、無茶するんだから」

「長老様、エルフの皆様! 何と言っていいか! 感謝の言葉もありません!」


 ゲレールがその場で手をつき頭を下げた。皆、座り込んでいるから土下座の様になってしまっている。


「いや、ゲレール。エルフも退化しているんだと思い知った」

「長老様、何を仰います!」

「いや、俺も思ったよ」

「リヒト様……」

「原初のエルフがやった事に比べるとこの程度の浄化ができんでどうする、て感じだ」

「長老、そう悲観しなくても良いと思うが? 実際、出来る者は他にはいないんだ」

「そうだよ。浄化はできた。これで一国が救われたんだ。いや、もしかしたらそれ以上かも知れないね」

「おばば様、そうだな」


 おばば様と青龍王も感心している。


「もし、浄化できなくて……いや、遺跡自体を発見できていなかったら、何年後かは分からんが近い将来にこの火山地帯が噴火していたかも知れないんだ。そうなったら、この国だけの被害ではすまないだろう」


 確かに、青龍王の言う通りだ。噴火してマグマが噴き出すと、ツヴェルカーン王国だけでなくアンスティノス大公国にも被害が及んでいたかも知れない。

 もしも、ヘーネの大森林にまで被害が及んだりすると大陸の地形だけでなく、生態系も変化してしまう可能性がある。文明が壊滅してしまうかも知れない。

 そうなると、ツヴェルカーン王国だけの問題ではなくなる。

 太古の昔もそうだったのだろう。だからこそ、種族を超えて皆で協力したのだろう。


「それでもです! それでも国を救って頂いた事には変わりない! 感謝します!」


 ゲレール、熱い男だ。学者と言う事もあり、それ程ドワーフの暑苦しさはなかったのだがやはりドワーフだ。


「いや、なんとかなって良かった」

「長老、本当に。俺マジで途中からヤバかった」

「アハハハ、リヒトもまだまだだな!」

「えぇー」

「アハハハ! 精霊達も喜んでいるよ。ありがとうと言っているよ」

「おばば様、そうか。それは良かった。精霊達も力を貸してくれていたからな」

「ああ、そうだね。この部屋にいる精霊みんなが力を貸してくれていたね」

「そうか。それであの光か」

「そうなるね」


 長老達が浄化をしている時に部屋の中にいる沢山の精霊が皆長老達に力を貸していた。

 エルフ族の使う魔法は精霊魔法だ。精霊達の力を少し借りる。だが、今回は部屋中の精霊達が一斉に力を貸した。その結果、部屋中に光が満ちたと言う事らしい。


「はぁ……なんとかなって良かった」

「リヒト様、大丈夫ですか?」

「ああ、ルシカ。ポーション飲んだからな、もう大分いいぞ」

「ハルとアヴィーをどうするかだな」


 そうだ。あの長い螺旋階段を登らなくてはならない。


「長老、あたしが転移させるわ!」

「「えぇーッ!!」」

「俺、動けるからいいぞ」

「自分もいいわ」

「何よ、イオス! カエデ!」

「なんだ? どうしたんだ?」

「リヒト、シュシュはまだ下手なのれす! あたちが転移させるなのれす!」


 おぉ! コハルがいた! いてくれて良かった!


「コハル、さすが聖獣だな。全然平気か?」

「平気なのれす! どうって事ないなのれす! なんなら2つ3つできるなのれす!」

「えぇ……!?」


 それ、早く言ってほしかったよね……。うん、ならみんなこんなに消耗しなくても済んだよね。コハル、まだまだちびっ子だ。


「じゃあ、コハル。取り敢えず、上まで転移できるか?」

「長老、あたしとランロンは残って閉めていくよ」

「おばば様、あの階段は長いぞ?」

「長老、大丈夫だ。ドラゴンになる」


 ああ、その手もあった。てか、もっと考えたら良かったのではないか? そうしたら……と言うのは止めておこう。ハルさん、ノリノリで浄化する気だったからな。

 そして、コハルの転移で一行は外に出た。地表に蓋のあった場所だ。

 おばば様と青龍王はシェルターの様な部屋の扉をしっかりと閉め、最初の部屋で青龍王がドラゴン化しおばば様を背中に乗せて地表に上がってきた。


「本当に、余裕でドラゴンが通れるんだ」

「ああ、リヒト。そう作ってあるのだろうな」


 ゲレールとイオスが地表の扉を閉める。


「乗りな! さっさと戻ろう」


 青龍王の背中からおばば様が叫ぶ。


 まさか、こんなに巨大な遺跡がツヴェルカーン王国にあるとは思いもしなかった。

 とにかく、浄化は終えた。そして次回からは長老の転移で来る事ができる。一行は青龍王の背中に乗り、ツヴェルカーン王国へと戻って行った。


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