155ー青龍王に乗った!
翌日から早速、遺跡調査へ出る事になった。
「りゅしか、りゅしか、弁当持ってくじょ」
「ハル、お弁当ですか?」
「ん、らって腹が減ったらどーすんら?」
「アハハハ! ハル、食う事かよ」
「りひと、らって腹ペコはよくない。力が出ねー」
「ハル、分かりましたよ。お弁当を作っておきましょう」
と、前日のハルの要望があって朝早くからルシカとカエデは皆のお弁当を作った。
まるでピクニックだ。
「りゅしか、ちょっと食べてみようかな?」
「ハル、それは駄目です。朝はちゃんと食べたでしょう? お弁当はお昼ですよ」
「ん、しゃーねー」
「プププ」
「かえれ、何ら?」
「いや、ハルちゃんて食いしん坊やんな?」
「おりぇはふちゅーら」
「はいはい。ふちゅーやな」
カエデに揶揄われながら外に出る。
「あ! おばばしゃま! りゃんりょんしゃま!」
「ハル、おはよう!」
「おお、ハル。おはよう」
2人はもう長老やゲレールと話していた。
「おはようごじゃましゅ! おりぇ、おしょかったか?」
「ハル、そんな事はない。大丈夫だ」
「じーちゃんも早いんらな」
「年寄りは早く目が覚めるんだ」
「しょんな事ねー。おりぇ、ばーちゃんより早く起きたじょ」
おやおや、アヴィー先生。お寝坊さんか?
「嫌だわ、一緒に起きたでしょ?」
アヴィー先生だ。今日はアヴィー先生も一緒に行くらしい。
「長老、アヴィー先生。私達はご一緒できませんが、どうかお気をつけて」
「ロマーティ、シオーレ大丈夫だ。待っていてくれ」
「おばば様、ランロン様、エルフの皆さん、今日は宜しく頼みます!」
ドワーフの学者ゲレールだ。
「私は何もできませんが、同行させて頂きます。どうか、宜しく頼みます!」
ゲレールがガバッと頭を下げた。自分の国の事なのに自分達は何もできないと、気に病んでいるらしい。
「出来る者が出来る事をすれば良いんだよ。ゲレール殿はゲレール殿が出来る事をすれば良いんだ。ドラゴシオンだって遺跡はエルフに丸投げなんだ。気に病む必要はないよ」
「おばば様! 有難うございます!」
そして、一行は1度国の防御壁から出て広い場所に移動する。
「さ、ランロン」
「ああ、おばば様」
青龍王がドラゴンの形態になった。陽の光に淡いグリーンの鱗がキラキラと光っている。ハルが言っていた様に綺麗だ。神秘的とでも言うのか。一言では表現できない鱗の色だ。
今日は青龍王の背中に乗るらしい。尻尾から順に背中に移動するみたいだぞ。そうやって乗っていたんだ。
「うわ、なんか申し訳なさすぎて足が竦むぜ」
「ゲレールしゃん、らいじょぶら」
ハルが長老と手を繋いでスタスタと登っていく。
「ハルくん、慣れてないか?」
「らって紅龍王にも乗せてもりゃったじょ」
「な、な、なんだってぇ!!」
「アハハハ! 乗ったな」
「リヒト様、早く行って下さい」
「お、おう。ルシカ、すまん」
「青龍王の鱗、綺麗よねー! これ何色って言えば良いのかしら。ウットリしちゃうわ」
「シュシュ、お前早く行けよ」
「やだ、イオス。美しいものを楽しむ気持ちがないの?」
「いいから、シュシュ。どいてちょうだい」
「やだ! ミーレまで!」
「にゃあ……」
「なんなのよ! カエデ!」
「な、なんでもないにゃ」
「シュシュ、さっさと行くわよ」
カエデとシュシュの力バランスはまだシュシュが優勢らしい。アヴィー先生はマイペースだ。
「皆乗ったかい!?」
「おー!」
おや、ハルさんテンションややあげ。
「ランロン、いいよ」
おばば様の声で、青龍王は2対の翼をゆっくりと動かすと一気に宙に浮いた。ゆっくりと1度ツヴェルカーン王国の上空を旋回し、火山地帯に入って行く。
「しゅげー! 気持ちいいじょー! こはりゅー!」
「はいなのれす! 高いなのれす! 凄いなのれす!」
「な、な、何だそれはー!? どこから出て来たー!? てか、たけーよ!」
賑やかなドワーフだ。高いのが怖いのか?
「アハハハ! ゲレール殿、ハルの聖獣だ。なんだ、怖いのか?」
「リ、リ、リヒト様! こんな高いの生まれて初めてで!」
「ゲレール殿、2つの山はあれか?」
「ち、長老様、そうです! あれです!」
どうやら本当に怖いらしい。
「ランロン様、あの2つ並んだ山の近くに行ったら少し低く飛べますか?」
「ああ、長老。大丈夫だ」
お、飛んでいても話せるんだ。ドワーフの足だと、険しくて行く事が難しい場所だとしても、ドラゴンならひとっ飛びだ。目印にしていた並んだ2つの山が直ぐに目の前に見えてくる。
すると、スピードを落とし低空飛行する青龍王。
「ハル、精霊の声が聞こえるかい?」
「おばばしゃま、あの2ちゅある山の間ら」
「ランロン、分かったかい?」
「ああ、おばば様。ゆっくり飛ぶぞ」
ゆっくりゆっくりと山と山の間に向かって飛ぶ青龍王。
「じーちゃん、見えねーな」
「ハル、それは目印が何かに隠れて見えないと言う事か?」
「ん、しょうら。あしょこらへんにありゅはじゅらって言ってりゅ」
「ランロン様、山と山の間で止まれますか?」
「ああ。任せろ」
長老が言った場所の上空で止まる。眼下には火山地帯特有の地面が広がる。マグマ活動があったのだろう、様々な時代の火成岩が残されている。
確かに普通に考えてこれだけの火山地帯が噴火もしないのは不自然な感じもする。
「ウインドインパルス」
長老が、風属性魔法で地面の表面を狙った。地表に長年積もった火山灰や軽石、枯れ木や土砂等が吹き飛ばされたり切り刻まれたり。
その瓦礫を青龍王がフゥッと一息で吹き飛ばす。規格外にも程がある。