144ー待機だ
「うわ……超豪華ら」
「な、ハルちゃん。ここはなんかなんでも豪華すぎるな」
ハルとカエデがまた部屋の中を見て歩いている。
「あれでしょ? お貴族様が泊まったりするからじゃないの?」
「シュシュ、お前よく分かってんなぁ」
「イオス、なあに? あたしは聖獣よ。賢いのよ」
「アハハハ、悪りぃ」
「お貴族様がなんだってんのよ。ヒューマンの貴族なんて大した事ないわ」
「シュシュ、お前ヒューマンの貴族と何かあったのか?」
「イオス、昔の話よ。まだ聖獣になる前よ。白い虎が珍しいとかで追いかけ回された事があったの。ほんとヒューマンて欲の皮が張ってんだから」
「なるほどね」
「ヒューマンが虎に勝てる訳ないじゃない」
「カエデはなんも思わないのか?」
「え? イオス兄さんなんで?」
「いや、だってカエデはヒューマンの奴隷にされてたんだからさ」
「カエデ、そうなの!?」
「ん~、そんなヒューマンばっかじゃないって知ってるからな。ほら、アヴィー先生の周りのヒューマンはみんな良い人達やったやん」
「カエデ、偉いぞ」
「ん、えりゃい」
「せやろぉ~、カエデちゃんは日々成長してんねん。日進月歩や」
「カエデ、たしかルシカに同じこと言われてなかった?」
「ミーレ姉さん、それ言うたらあかんやん!」
「なんだよ、ルシカの受け売りかよ」
「ちゃうやん。ルシカ兄さんには教えてもらったけどな、ちゃんと理解してるっちゅうねん。打てば響くカエデちゃんなんや」
「カエデも苦労したのね。あたし泣けちゃうわ」
どうやら、涙もろい聖獣だ。
「リヒト様とハルちゃんに助けてもらって今は平気や。毎日楽しいねん」
「カエデ、あんた良い子ね。ホント泣けちゃう」
「て、さっきから全然涙出てへんで」
「あたしの涙は高いのよ。そう簡単に見られると思わないで」
意味不明。誰も見たいとは思っていない……とは、言えないが。
「りゅしか、りゅしか」
「ハル、どうしました?」
「腹へったじょ」
「そうですね、お昼にしましょう。どうします? 下に食堂がありましたね」
「ルシカ、部屋に持ってきてもらいましょうよ」
「ミーレ、そうですね」
「ルシカ、注文しにいきましょう」
「はいはい」
ルシカとミーレが部屋を出て行った。
「ねえ、部屋では普通のサイズになってもいいわよね?」
「おう、いいぞ」
「しゅしゅは亜空間に入んねーのか?」
「ハルちゃん。あたしも入れるけど、入んないわ」
「なんれ?」
「だって入っちゃうと周りが見られなくなるじゃない。あたしは色んなとこを見たいのよ」
そうか。そう言えば色々見たくて色んな所へ行ったと言っていた。
「長老。で、どうすんだ?」
「ああ、リヒト。アヴィーと連絡を取っている。その状況で考えるさ」
「アヴィー先生は無事なんだな?」
「ああ、ピンピンしているぞ。もう少し大人しくしてほしいもんだ」
ああ、長老が言ってしまった。みんな同じ事を思っているぞ。だが、アヴィー先生の気持ちも理解できる。大元を捕らえたいのだろう。
「ありぇらな。豪華らからって美味いとは限りゃないんらな」
「そうね、ハルちゃん」
「ほんまやな」
「ハル、どうしました?」
「りゅしかの飯の方が上手い。じゅっと美味い」
「うん、自分もそう思うわ」
「ルシカの料理は絶品だもの」
部屋に持ってきてもらった料理を皆で食べていた。その感想だ。
この、賑やかし担当でおとぼけチームの3人。時にはシビアな事を言う。
「それは、嬉しいですね。ありがとう」
「だよな、これそんなに美味いか?」
「リヒト、ルシカの飯の方が数倍美味いな。見た目だけだな」
「長老、ですよね。俺もそう思いますよ」
「私も」
「嘘つけ、ミーレ」
「イオス、何よ」
「ミーレは味音痴だから分かんねーだろ?」
「やだ、ルシカの料理の方が美味しい事位は分かるわよ」
「そうなのか!?」
「リヒト様まで何ですか?」
「アハハハ、まぁいいじゃねーか。長老、パーピが来るまで待機か?」
「いや、コッソリと1度ニークに会いに行く。心配しているだろうからな」
「あぁ、そうだな」
「本当にアヴィーは変わらんな」
「変われって方が無理だろう? そこがアヴィー先生の良いとこでもあるんだから」
「リヒト、なぁに? どんな人なのか楽しみだわ。あたしがちょっと会いに行って来ようかしら?」
「馬鹿、いきなり虎が行ったらそれこそパニックだろう?」
「リヒトの方が馬鹿よ。小さくなっていったら誰も虎だとは思わないわよ。そこら辺にいる野良猫だと思うわ」
「しゅしゅ、そりぇはらめ」
「あら、ハルちゃんどうして?」
「らって、しゅしゅは綺麗らから野良猫に見えねーもん」
「そうでしょうぅ? あたしのこの溢れ出す気品がねぇ、か……」
「いや、良い案じゃねーか?」
「だからリヒト、最後まで喋らせてよ」
「シュシュにアヴィー先生のとこに行ってもらってさ、俺たちはこっちで動いてさ。良い案じゃね?」
「ふむ……」
「え? えぇ? あたし冗談で言ったんだけど」
「なんだ、シュシュ。怖いのか?」
「本当、リヒトは失礼ね。あたしに怖いものなんてないわよ!」
えぇー、ドラゴン怖いって言っていなかったか?
「シュシュ、潜り込めそうか?」
「長老、そんなの楽勝よ? あたしに不可能はないわ」
「いや、シュシュ。マジだぞ?」
「だから、リヒト。マジよ、大マジだわよ」
「シュシュ、頼めるか? で、アヴィーが無茶をしそうなら止めて欲しいんだ」
「えッ!? 長老、そっち!? そっちなの!?」
「そっちなんだ。あれは何を仕出かすか分からんからな」
「アヴィー先生って、長老の奥さんなんでしょ?」
「ああ、そうだ」
「まあ、長老。苦労するわね」
「アハハハ! もう慣れっこだ」
「やだ、良い旦那じゃないのー! 羨ましいわ」
シュシュはどこまで本気だか分からない。
「いいわよ、あたしが行ってあげるわ。で、どこにいるの?」
「前大公の邸の客間にいるらしい」
「客間なの!? 牢屋とかじゃなくて?」
「ああ、2階の奥にあるらしいんだが。何故か客間らしい。ただ、監視が付いているから自由はないそうなんだ」
「そりゃそうよね。分かったわ。でもあたし、前大公のお邸ってどこか知らないわよ」
「俺が連れて行きますよ」
「イオス、知ってんの?」
「ああ、分かる」
イオス、侮るなかれ。なんでそんな事を知っているんだ?
アヴィー先生の無謀な行動が!
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