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133ーハルは好かれる

「今は、じーちゃんもいりゅ。りひと達らっていりゅ。そりぇに、体も元気ら。楽しいんら。嬉しいんら。幸せなんら」

「やだよぉ。もう、泣かせるんじゃないよぉ。長老、なんだい? この可愛い健気な子は」

「アハハハ! 可愛いだろうが。ワシの可愛い曽孫だ」

「ああ、ああ。大事にしなきゃねぇ」

「もちろんだ」

「おばば様、俺たちにとってもハルは大切な仲間だ。弟なんだ」

「リヒト、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。気に入ったよ! 今日は皆ここに泊まっておいき!」

「おばばしゃま、いいのか?」

「ハル、もちろんだとも!」

「りゅしか、りゅしか、腹へったじょ」

「アハハハ。ハル、分かりましたよ。おばば様、キッチンをお借りしても?」

「ああ、構わないよ。そこにシチューを温めてあるからそれも出しておくれ」

「ありがとうございます。カエデ、手伝ってください」

「はいにゃ、ルシカ兄さん」


 ルシカとカエデがキッチンへ向かった。


「なんだい? 料理ができるのかい?」

「ルシカは俺の従者なんだが料理が上手いんだ。猫獣人はカエデだ。カエデも料理をする」

「ほう、ハイエルフと……エルフに猫獣人と聖獣かい?」

「エルフはミーレだ。俺の侍女だ。それからハイダークエルフで執事見習いのイオスだ」


 ミーレとイオスが頭を下げる。


「この子はこはりゅ、おりぇの友達ら。しゅしゅはここへ来る前、仲間になったんら」

「長老じゃなくて、ハルが聖獣に名付けをしたのかい?」

「ん」

「長老……」

「それでおばば様に話を聞きたくて来たんだ」

「なるほど……それだけじゃないね。精霊かい」

「そうだ。黄龍王の里の遺跡を調査した時にハルが精霊の声を聞いている」

「声をかい? ハイエルフには聞こえないはずだよね?」

「だが、ハルはハイエルフとハイヒューマンのクオーターだ」

「長老、そうだったわ。コハルと言ったかね?」

「コハルなのれす」

「コハルは只の聖獣じゃあないね?」

「あたちは神使なのれす」

「そっちはシュシュだったかね?」

「ええ、そうよ。グスッ……ハルちゃんに名前をもらったの。あたしも一緒にハルちゃんを守るの」

「おや、泣いているのかい? お前さんは白虎だね?」

「そうよ、白虎よ。自由に風の様に走るのが好きな白虎なの。でもハルちゃんが大好きで一緒にいるの。ハルちゃんのあんな話を涙なしでは聞けないわよ」


 シュシュが大きな身体を丸くして泣いていた。おばば様が頭を抱えている。


「おばば様?」

「長老、これはとんでもなく規格外の曽孫だね。アハハハハ!」

「おばばしゃま?」

「ハル。あたしが知っていることは全部ハルに教えてあげるよ。ハル、よく帰って来たね。あたしは嬉しいよ」

「おばばしゃま、ありがちょ」


 キッチンから良い匂いがしてきた。


「りゅしかの飯は美味い!」

「アハハハ。ハル、ありがとう」

「本当に美味しいわ! ルシカ天才よ!」

「今日のお肉は昨日のヒュージラビットのお肉ですよ」

「ん、超美味い。やわりゃかい」

「本当、柔らかくて美味しいわ!」

 

 さっき泣いていた白虎がもう肉にがっついている。


「美味しいねぇ。嬉しいねぇ……ホンロン、大人しいじゃないか」

「おばば様、ハルの話……」

「ああ、あたしが皆に話すさね。考え込むんじゃないよ。長老、構わないね?」

「ああ、おばば様に任せるさ」

「そうか。じゃあいい。ルシカ、おかわりくれ!」


 紅龍王だ。ハルの話を聞いて考えていたらしい。自分1人、先に聞いてしまったから。他の皆にどう話せば良いのか、話しても良いのか? と考えていたみたいだ。


「おばばしゃまのシチューも美味いじょ」

「そうかい、そりゃ良かった。ハル、沢山お食べ」

「ん、ありがちょ」


 ハルはいつもの様にぷくぷくのほっぺにシチューが付いている。そして、いつもの様にルシカが拭いている。

 どうやら竜族は気の良いものが多いらしい。ドラゴンとエルフ族はどちらも長命種だ。通じるものがあるのかも知れない。

 さて、お昼を食べたら寝てしまうのがハルだ。例外なく、おばば様の家でもミーレに抱っこされてスヤスヤと寝ている。


「ミーレ、ハルをあたしのベッドで寝かせてやってくれるかい?」

「はい、おばば様」


 もう、皆おばば様と馴染んでいる。ミーレがおばば様の指さす部屋へとハルを抱いて連れて行く。


「ハルが寝ている間は、コハルは出てこないのかい?」

「そんな事はないぞ。コハル」

 

 長老が呼ぶと、亜空間からコハルがポンと出てきた。


「はいなのれす」

「コハル、ちょっと話を聞かせてくれるかい?」

「おばば様、わかったなのれす」


 おばば様は何を聞くつもりなのだろう。


「コハル、神使と言ったね?」

「そうなのれす」

「と、言うことはだ。神が直接ハルに遣わしたと言うことかい?」

「当然なのれす」

「それは、どうしてなんだい?」

「突然飛ばされたハルの祖父母、マイオル・ラートスとランリア・エタンフレ、それに沢山我慢していたハルへの詫びなのれす。神は2人に言われてハルを気にかけていたなのれす。でも、ハルを救済するのが遅くなってそれを申し訳なく思っているなのれす」

「それは、2人が本当に神にハルの事を頼んだって事なのかい?」

「そうなのれす。2人が神に頼み込んだなのれす」

「そうかい、2人はよっぽど気になっていたんだろうね。で、どうしてハルは精霊の声が聞こえるんだい?」

「ハルは愛されているなのれす」

「精霊にかい?」

「そうなのれす。精霊や聖獣にもなのれす。歪まずにずっと黙って我慢してた、ハルは可愛い良い子なのれす」

「アハハハ! 違いない!」

「リヒト様、確かにハルは可愛いですし良い子ですね」

「ほんまや、ハルちゃんは可愛い」

「ええ、ハルちゃんは可愛い良い子だわ」


 全員一致の意見らしいぞ。


「それだけじゃない様な気もするが……まあ今のところはそれで良しとしておこうかい」

「そうなのれす」

「分かったよ。詳しくは聞かないよ」

「はいなのれす。おばば様、ハルに精霊の事を教えてやってほしいなのれす」

「ああ、分かっているよ。安心しな、ちゃんと教えるよ」

「ありがとうなのれす」


 コハルがポンッと消えた。もうこれ以上は話す気がないらしい。コハルはまだまだ何かを知っていそうだ。おばば様も気が付いている。もちろん、長老達もだ。

 だが、コハルが消えたという事は、今は此処までなのだろう。


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