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132ーおばば様

「長老の曽孫という事は、お前はランの孫なのかい?」

「あい。蘭ばーちゃんと伊織じーちゃんの孫れ、はりゅれしゅ」

「長老、イオってまさか!?」

「ああ、マイオルだ。2人同じところに飛ばされていたんだ。2人ずっと一緒にいたんだ」

「なんて……なんて事だい!!」

「別の世界だったんだ。そこからハルは戻ってきたんだ」

「そんな事があるのかい!? 奇跡じゃないか!? で、ランリアは? マイオルはどうしたんだい?」

「じーちゃんとばーちゃんはもう死んらんら。死んれ、おりぇの事を神に頼んれくりぇたんら。だかりゃおりぇはこの世界にこりぇた。伊織じーちゃんと蘭ばーちゃんのお陰なんら」

「あぁ……信じられない……よく……よく帰ってきたね……!!」


 どうして知り合いだったのかはまだ分からないが、このおばば様と呼ばれている人は、ハルの祖父母を可愛がっていたのだろう。

 ハルを抱き締めて、言葉が出ずに涙を流している。震えながら、ハルを抱き締めている。本当に大事なものを扱うように、優しく。


「ああ、悪いね。取り乱してしまったよ。この歳でこんなに嬉しい事があるとはね。おばばと言われながら、長生きした甲斐があったよ。さあ、みんな入りな。ホンロン、いつまでドラゴンでいるんだい? さっさと人化して入りなさい」

「おばば様、俺もいいのか?」

「当たり前じゃないか。柄にもなく遠慮してんじゃないよ」


 うん、『おばば様』と龍王達に呼ばれるのも分かる気がする。さっきから、圧倒されてリヒト達は一言も話していない。あの賑やかなネコ科の2人でさえもだ。


 おばば様の家の中はほんのり暖かかった。暖炉に小さな火が入れられ、台所には湯気の上がった鍋がある。広いテーブルには手作りだろうテーブルクロスが掛けられていて、イスにもお揃いのカバーの掛かったクッションがある。

 家の外観は、何かの鉱石を同じ形に切り出した煉瓦の様な物を積み重ねて出来ているが、中に入ると木が多かった。家具だけでなく壁や床もそうだが、天井は梁がむき出しで架け渡されている。

 室温が暖かい事もあるが、家の持つ雰囲気が温かいのだ。


「おちちゅく……」

「ハル、そうだな。この家は良いな」

「リヒト様、木が多いですからね」

「ホント、落ち着くわね」

「ああ、いいな」


 ハル、リヒト、ルシカ、ミーレ、イオスまで気に入った様だ。


「さあさあ、座っとくれ! ハル、おばばにちゃんと顔を見せておくれ」


 ハルが、おばば様に呼ばれてトコトコと側に行く。

 鬼婆……ではなく。おばば様はハルを膝に座らせる。


「ああ、本当に……言われて見ればちょっと垂れ気味の目元がランにそっくりじゃないか。髪色はイオなんだね」

「じーちゃんとばーちゃんを知ってんのか?」

「ああ、よく知っているよ。イオは悪ガキの頃から知っている。ランも、長老に付いてよく来ていた。2人共あたしの子同然だよ」

「ワシがまだ若い頃にな、この国に大使として駐在していた時期が少しだけあったんだ。その時の縁で、ちょくちょく邪魔している」


 だから、竜王や青龍王が長老に気安かったのか。


「よく戻ってきたね。ハルに会えて嬉しいよ」

「ありがちょ、おにばば」

「鬼婆じゃないよ! おばあさまだ!」

「アハハハ! ハル、そこは間違えたら駄目だろう!」

「お前さんは?」

「俺はベースの管理者をやっているリヒト・シュテラリールだ。ハルの保護者でもある」

「ベースの管理者って事は5強の1人だね。皇族かい。凄いじゃないか。保護者は長老じゃないのかい?」

「もちろん、ワシも保護者だ。ハルがこの世界へやって来た時、1番最初にハルを保護したのがリヒトなんだ」

「そうなのかい。よく保護してくれた。万が一にでもヒューマン族に保護されていたらと思うとゾッとするよ」


 また、同じ事を言われた。分かってはいたが、ヒューマン族の印象が悪い。

 ハルとの最初の出会いを知らないカエデとシュシュはジッと話を聞いている。

 おばば様がハルの頭を優しく撫でながら言う。


「こんな可愛い子、おまけにこの髪色と瞳の虹彩だよ。長老、同じだね」

「ワシと虹彩が同じだろう。ハルは精霊眼を持っている。リヒトは鑑定眼だ」

「リヒトもかい!? そりゃあ凄いじゃないか! ランにはなかったのに」

「蘭ばーちゃんと伊織じーちゃんも、目にグリーンがあったんら」

「どういう事だい?」

「ハルがいた世界、ランとイオが飛ばされた世界では2人にも虹彩にグリーンがあったそうなんだ」

「長老、それは……不思議なことだね」

「世界を渡った時にでも入ったんだろう。神の慈悲かも知れんな。世界を渡っても2人は優秀だったらしい」

「なるほど……世界はまだまだ不思議な事がいっぱいあるさね」

「じーちゃんとばーちゃんは優しかった。大好きらった!」

「そうかい、そうかい。ハルの親はどうなんだい?」

「息子の父親より、孫のおりぇの方がじーちゃんとばーちゃんに似てたんら」

「ハル、両親や家族と離れて寂しくはないのかい?」

「おりぇは……えっちょ、じーちゃん?」


 ハルが長老を見る。話しても良いのかと。この場には何もしらないカエデやシュシュもいる。紅龍王もいる。


「ハル、かまわんぞ。おばば様も龍王も信頼できるからな」

「ん……おりぇが生まりぇた世界は、ヒューマンしかいない世界らったんら。魔物もいない平和な国らったけろ……おりぇは、前の世界でじゅっと辛かったんら。身体もしょの世界に合わなくて弱くて、父親よりじーちゃんとばーちゃんに似てりゅおりぇは両親からきりゃわりぇてた。らから、おりぇはいつも1人らった。おりぇに優しくしてくりぇりゅのは、じーちゃんとばーちゃんらけらった」

「何てことだい……どの世界でもヒューマンは」


 この世界でのヒューマンの印象は悪い。どうしてもおばば様が言ったような感情になってしまう。


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