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115ードラゴシオン王国へ出発

 暫くして、ハルがお昼寝から目を覚そうとしている時だ。ハルは、何か視線を感じていた。お昼寝中、側にいるとしたら……ミーレかカエデだ。でも、その2人ではない。この視線はなんだ?

 ハルはゆっくりと目を開けた。大きくてつぶらな瞳と目が合う。

 眠っていたはずのドラゴンの幼体が目を覚ましていた。大人しくハルをジッと見つめている。その瞳にはしっかりと知性が感じられる。


「ん……目を覚ましたんら……」

「キュル……」

「よかったな……腹減ってねーか?」

「キュルルル」


 パタパタと羽を動かしている。ハルは寝起きで、テンションが低い。クッションの上でゴロンと横になったまま話しかける。


「まら無理に動いたりゃ駄目らじょ」

「キュル……」

「ひーりゅしゅりゅか?」

「キュルル」

「ん……ひーりゅ」


 横になったまま、片手を上げドラゴンの幼体へ向ける。ドラゴンの幼体を白い光が包み込み消えていく。気持ち良さそうに目を細めるドラゴンの幼体。


「キュルル」

「ん、もうちょっと寝な」

「キュル……」


 ハルに言われた通り、ドラゴンの幼体は再び瞼を閉じる。


「ん……らいじょぶら。ちゃんと国に帰してやりゅかりゃな。よく頑張ったな。えりゃいじょ、いいこいいこ」


 ハルが手を伸ばしそっと撫でる。ハルの手に擦り寄る様な仕草をする。ハルの言う事を理解している様だ。

 ハルは暫く微睡んでいたが、やっと起き出して馬車のドアを開けた。


「じーちゃん」

「ハル、起きたか」


 ミーレがハルを馬車から下ろす。トコトコと長老の側へ行き膝にのる。長老もハルを抱き寄せる。


「ん、ドラゴンの幼体が目を覚ましたじょ」

「そうか。で、どうした?」

「ん、まら無理に起きたら駄目らじょ、て言ってひーりゅしちゃりゃまた寝た」

「ほう、じゃあ次に目を覚ましたら教えてくれるか?」

「ん。元気になってきた」

「そうだな。良かった」

「ん、良かっちゃ。みーりぇ、のろ渇いた」

「果実水でいい?」

「ん」


 ミーレに果実水を貰いコクコクと飲む。

 寝起きのハルはいつも以上にテンションが低い。


「ありぇ、かえれは?」

「リヒト様と一緒だ」

「いおしゅ、かえれもう剣に付与れきしょうりゃじょ」

「ハル、そうか?」

「ん、れきりゅちょ思う」


 ハルさん、寝起きだからいつも以上にカミカミだ。


「そうか、試してみるか」

「りゅしかも一緒にがいい」

「そうだな」


 そんな話をしているところにリヒトとルシカとカエデが戻ってきた。


「たっだいまー! ハルちゃん起きたかー!?」

「ん……いおしゅ」

「ああ。ルシカ、カエデはどうだった?」

「ええ。この辺に出る魔物なら問題ないですね。楽勝でした」

「へへん! カエデちゃんはなぁ、日々進歩してるんやでぇ」

「ルシカ、付与教えてやってくれよ」

「そうですね。出来そうですね」

「ん」

「え? 何? 何かなぁ?」

「カエデ、魔力操作を教えましたね?」

「うん、覚えてるで。毎日寝る前に練習してるで」

「その要領で魔力を手に持ってこれますか?」

「手にか……うん、出来そうや」

「剣を持ってそのまま流してみましょう」

「剣にか……えぇー……」

「前にタグへ流したでしょう? あれと同じ要領ですよ」

「あぁ、そっか。剣にな……剣に……」


 カエデが両手に剣を持ち集中する。すると徐々にだが、剣が淡いグリーンに光り出した。


「おッ! 出来た!」

「おや、グリーンですか。長老、風属性ですよね?」

「ルシカ、そうだな」

「カエデは無属性だと思ってました」


 以前タグを確認した時には、カエデは属性魔法を持っていなかった。なのに風属性を示すグリーンに剣が光った。

 カエデを見る長老の瞳がゴールドに光る。


「リヒトが風属性を付与した剣を見ていたから意識したのか? カエデ、風属性を使えるようになっているぞ。魔力量も以前より増えている」

「えッ!? 長老、そうなん!?」

「ああ、カエデは属性魔法を持っていなかったのに風属性が増えているな。だがまだまだ弱い。リヒト、手本を見せてやってくれ」

「おう。カエデ、見ていろよ」

「うん」


 リヒトが剣を抜くと一瞬でグリーンに変わる。


「えッ!? はや!」

「ワハハハ! どーよ!」

「うわ。リヒト様、めちゃ自慢気やん」


 確かに、10歳の猫獣人相手に自慢気なリヒトだ。大人気ない。


「カエデ、自分が付与した剣とリヒトが付与した剣と比べてみなさい」

「はい、長老」


 カエデがリヒトの横に行って剣を比べる。


「全然違うやん! リヒト様の方が色も濃いし光ってるし、元の剣より長いやん。なんで?」

「単純に魔力量の違いもあるし、属性の適正もあるがな。剣に付与する程度なら大して魔力は必要ないんだ。リヒトは魔力操作が上手い。慣れだな」

「そっか……そうやんな。だってリヒト様は剣を抜いて速攻やったもんな。自分はまだ集中しやなでけへん」

「そうだ。カエデ、偉いぞ。よく見て気付いて考えている」

「そんな褒めたら恥ずかしいにゃ〜ん!」

「かえれ、えりゃい。短い間りぇよく考えりゅようになっちゃ」

「ハルちゃん、もしかして寝起きか? カミカミやな」

「ん……」

「カエデ、魔力操作の練習ですね。道中剣に付与する練習をすれば良いですよ」

「うん、ルシカ兄さん。頑張るで」

「あまり張り切り過ぎない様にですよ」

「うん、大丈夫や。楽しいねん。新しい事を覚えて出来る様になって、もっと出来るっていうのが楽しいねん」

「ほう……カエデ、偉いですね」

「ん、カエデはもちょもちょ賢い」

「ハルちゃん、カミカミやけどありがとう!」

「ああ、それとだ。さっきハルが目を覚ました時にな、ドラゴンの幼体が目を覚ましたそうだ」

「長老、それで?」

「いや、リヒト。ワシもまだ見ていないんだ。直ぐにまた寝たらしい」

「でも、良かった」

「ああ。取り敢えず一安心だ」

「そうですね。早く国に帰してやりたいですね」

「りゅしか、しょうなんら。ちゃんと元気に帰してやりたい」

「ハル、そうですね」

「さあ、出発しよう」

「はい、リヒト様」


 ドラゴシオン王国までまだもう少しある。


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