112ーエルダードワーフの親方
「長老、こちらの工房です」
シオーレが案内して、ドワーフの2人が働いている工房までやってきた。
「入りましょう」
ロマーティが入って行く。工房の中には、ずらりと並んでいる沢山の刀剣類。様々な形や大きさがあり、色んな人達の使い勝手で選べるように、多種多様に作り出されたものだ。
「あ! いらっしゃい! よく来て下さいました!」
ジャーノと言う少女が工房の番をしていて、直ぐに気付いて声を掛けてくる。
「おう、元気でやっている様だな」
「はい! ありがとうございます! 言ってらした剣ですね?」
「ああ、ちびっ子2人の分なんだが」
「はい! お伺いしてます! 親方を呼んできますのでお待ち下さい」
ジャーノと入れ替わりにヴォルノがやってきた。
「よく来て下さいました! ご迷惑お掛けしてすみませんでした!」
「おう、頑張っとるな」
「はい! また1からやり直しです!」
「アハハハ! そうか。だが、腐らずやっている様だな」
「はい! 罪に問われて辞めさせられても仕方なかったのを許して頂けたのですから、腐っている場合じゃありません」
おお、なかなか良い感じだな。工房の奥から、ドタドタと騒がしい足音がした。
「わざわざ来てもらってすまねー! なんて詫びればいいか! 本当に申し訳ない事をした!!」
2人の親方なのだろう。見るからにドワーフといった見た目の小さいおじさんが、出て来るなりそう言ってガバッと頭を下げた。赤茶色で量の多い髪と長い髭。目を保護する為であろうゴーグルを頭につけている。いかにも鍛治職人だ。
「いや、頭を上げて下さい。親方さんか? ワシはエルヒューレ皇国の長老でラスターと言う。こっちは、あの2人を保護したベースの管理者でリヒトだ」
「長老さんに、兄さんがベースの管理者か!? ワシはヴェルカーだ! うちの馬鹿弟子が、えらい迷惑をかけちまって! 本当に申し訳ねー!」
「親方さん、今日は剣をだな……」
「ああ! 聞いてるぞ! ワシが責任を持って作らせてもらうからよ! けど兄さん良い剣持ってるじゃねーか! 長剣がいいのか?」
「いや、俺じゃなくてだな……」
「親方、違うんだ。ワシの曽孫とそこの猫獣人が使うんだ」
「はぁ!? 待て、待ってくれ! ちびっ子じゃねーか!?」
「おっしゃん、ちびっ子れもちゅかうんらじょ」
「あぁ!? あんだって!?」
「アハハハ! 親方、この2人はこれでもワームの討伐にも参加してたんだ。ハルは親方の弟子がやらかした後始末もしたんだ」
「なんだと! 兄さんマジかよ!? 兄さん、うちの馬鹿弟子共はこんなちびっ子にまで世話んなったのか!?」
親方さん……マジうるさい。声がデカイ。
「親方、親方! 座ってもらって下さい。お茶入れましたから」
「あぁ!? おお、座ってくれ!」
ジャーノがお茶を出してくれた。やっと落ち着いて話せそうだ。
「んで、なんだって!? このちびっ子が使う剣てか!?」
「ああ。ワシの曽孫でハルだ。猫獣人がカエデだ。2人とも、双剣がいいらしい」
「なんだと!? 双剣だって!? こんなに小さいのにか!?」
「おっしゃん、双剣はかっちょいい」
「ガハハハ! カッコいいか!?」
「ん」
「そうか! そうか! ワシが飛びっきりの剣を打ってやらぁ!」
「ん、頼んら」
「よし!」
ハル、おっさんじゃなくて親方な。親方が徐に立って、店に並べてあった短剣を2本持ってきた。
「これを振ってみな!」
「カエデ」
「はいな、リヒト様」
先ずはカエデが短剣を手に取る。
「うわ、イオス兄さんの短剣よりずっと軽い」
「そうなのか?」
「うん、イオス兄さん。超軽いで」
「短剣はな、大人だと懐に入れてる奴もいるんだ。だから、ワシが作る短剣は軽くしてある。どうだ? 軽く振ってみな?」
「うん」
カエデが両手に短剣を持ち、軽く斬りつける様に振ってみる。
「もう少し長さがあってもいけそうか?」
「うん、長い方がいいわ」
「よし! じゃあ、こっちの剣振ってみな」
親方がまた別の剣を持ってきた。カエデがまた振ってみる。
「いい感じや。これ位の長さの方がいいわ」
「重さはどうだ?」
「うん、いけるで」
「手首で回してみな?」
「うん、こうか?」
「どうだ? 重くないか?」
「んー、もうちょい軽い方がいいかなぁ? けど、直ぐに慣れるしなぁ……」
「カエデだったか?」
「うん」
「カエデの歳はいくつだ?」
「自分は10才や」
「よし、じゃあこの剣位の重さにしておけ。10歳だと、直ぐにでっかくなるからなぁ。頼んなくなるぞ?」
「そうなんや。じゃあこれ位でいいわ」
「魔法を流すのか?」
「自分は魔法使われへんねん」
「カエデ、将来的に使う事を考えて作ってもらう方がいいですよ」
「え? ルシカ兄さん、そう? けど、自分よう使わんで」
「大丈夫です。剣に付与する位ならすぐに出来る様になります。私が教えますよ。親方、魔法付与も考慮してもらえますか?」
「おう! 分かったぞ! じゃあ、次はちびっ子だ」
「ちびっ子じゃねー。はりゅら」
「あぁ? あんだって?」
「アハハハ! 親方、ハルっていうんだ。ワシの曽孫だ」
「曽孫なのかよ! ちびっ子の歳はいくつだ?」
「3しゃいら」
ハルがプクプクの短い指を3本立てた。