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108ー坑道の魔物

 部屋に戻って皆でルシカとカエデが作ったオヤツを食べながらティータイムだ。


「かえれ、こりぇちゅくったのか?」

「ハルちゃん、そうやで。ルシカ兄さんに教わりながらな。美味しいやろ?」

「ん、めちゃ美味ら!」


 カエデは、ハルがお昼寝中にルシカから教わりながらロールケーキを作っていた。生クリームたっぷり。ハルの好きなフルーツたっぷりのロールケーキだ。


「自分、スィーツのレパートリーないからな。色々教わってるねん」

「かえれ、えりゃい!」

「アハハハ。ハルは食べ物に関してはテンション違うよな」

「りひと、当ちゃり前。食い物は大事」

「ハルちゃん、可愛いなぁ。ほっぺに生クリームついてるでー」


 カエデがハルのほっぺを拭く。


「でだ、ドワーフの2人が話していた魔鉱石の鉱脈に出る魔物だがな、我々が討伐する事になった。ヒューマン族の冒険者やドワーフでは無理だからな」

「長老、もうだいたいは分かっているんだろ?」

「リヒト、まあだいたいはな。でだな、毒の煙幕を吐くらしい」

「毒? なんか最近、毒とかばっかだな」

「リヒト様、毒は気をつけないと」

「ルシカの言う通りだな。で、皆に毒や状態異常の無効化を付与した魔石を配る」


 長老は小さなペンダントトップになった魔石を配った。


「ステータスタグにつける魔石だ。カエデはギルドタグか?」

「うん。一緒にチェーンへ通しといたらいいんやな」

「そうだ」


 皆、自分のタグのチェーンに通す。ハルはミーレにつけてもらっている。


「この魔石が毒やすべての状態異常を無効化してくれる。先ずは毒の煙幕で仕掛けてくるらしい。それから尻尾らしきもので叩き飛ばされるそうだ」

「長老……それって……」

「リヒト、分かったか?」

「ワームだよな? 坑道だからロックワームか? でも、もしかして巨大化しているのか? でないと、飛ばされてしまう程ではない筈だ」

「そうだ。多分だが、栄養豊富な土や鉱石を食べて天敵もいないからデカくなったんだろうな。だから、油断は禁物だぞ」

「分かった」


 ハルがキョトンとしている。カエデも理解できていない様だ。


「じーちゃん、わーむってなんら?」

「まあ、超デカイミミズとでも言うか? いや、イモムシか。先端にデカイ口があって鋭い牙を持ち、茶色い皮膚に覆われた緑色の四つ目が光る巨大なイモムシだ。伸縮自在な体を持つが、下腹部が弱い。 湿地によくいるワーム、砂地に出るサンドワーム。此処は坑道に出るからロックワームと見て良いだろう。さっきも言ったように毒の煙幕を吐いてくる。視界と動きを奪っておいて、尻尾を叩きつける。2m程のだったら大森林の湿地にも時々いるんだ。さほど手こずる魔物ではないのだが、どれだけ大きくなっているかだ」

「げ……イモムシ、みみじゅ」

「なんだ? ハル、苦手か?」

「くりゃげとかイモムシとかみみじゅとか、ウネウネしてんのばっからな」

「アハハハ、そうだな。だが、坑道にはモグラ系の魔物も出る。大きな鋭い爪を持ち、引っ掻き攻撃をしてくる。地中から突然飛び出てきたりもするから要注意だ。特にカエデ」

「え、自分?」

「カエデは魔物討伐が初めてだろう? 気を引き締めてな。無理だと思ったら直ぐに下がるんだぞ」

「分かった!」

「カエデ、俺の短剣使え」

「イオス兄さん、ありがとう!」

「長老、いつ討伐にでるんだ?」

「それなんだがな。明日にでもだ。1日も早く討伐してほしいそうだ」

「じゃあ、明日行きますか?」

「ルシカ、そうだな。面倒事はさっさと片付けてしまいたいしな」

「えー、おりぇ作ってもりゃった剣持って行きたかった」

「アハハハ、ハル試し斬りはまた次だな」

「ん」


 ハルさん、ヤル気だ。


 翌日、朝からしっかり食べて準備万端、魔物を討伐する為に出発した。


「おはようございます」


 宿の下で、ロマーティとシオーレが待っていた。


「坑道までご案内致します」

「なんだ、ロマーティ。案内だけか? 討伐してくれていいんだぞ」

「私達だけで討伐できるならやってますよ。リヒト様は人が悪いですね」

「そんな事ないだろう? ロマーティだってやろうと思えば出来るだろうよ」

「リヒト様、私はそういうのが苦手だから文官になったのですよ。 無茶言わないで下さい。エルフ族最強の1人であるリヒト様と一緒にしないで下さい」

「アハハハ。苦手なだけで、出来るだろう?」

「まあ、必死になれば……でも、リヒト様だと楽勝でしょう?」

「そんな事はないさ。毒の煙幕は厄介だ」

「ですね。で、多分ですがかなり大きくなっている様ですから気をつけて下さい」

「ああ。分かっている」


 ロマーティとシオーレに案内されて坑道へ向かう。


「長老、ハルくんとカエデちゃんも一緒に入るのですか?」

「ロマーティ、ちびっ子だからと舐めてはいかん」

「え……!?」

「ハルは強いぞ。カエデも勉強中だから実戦を経験させようと思ってな」

「ハルくんは長老の?」

「ああ、シオーレ。ワシの可愛い曽孫だ」

「あのフィーリス殿下にパンチをしたと有名な?」

「げ……」

「アハハハ、そうだな! ハル、有名人だな!」

「じーちゃん、ありぇは仕方ないんら」

「まあ、フィーリス殿下ですからね。ハルくん、災難でしたね」

「ん、分かってくりぇりゅか?」

「はい。殿下はいつもあんな感じですから」

「しょうなんら。れも今は仲良しら」

「仲良しですか? それは凄いですね」

「しょっか?」

「はい。殿下はとても優秀であらせられるのですが、なんせ性格がアレですから」

「ん……らな」


 よく分かっているらしい。


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